2006年度スラブ研究センター冬期国際シンポジウム行われる |
12月13日(水)から15日(金)まで,スラブ研究センター冬期国際シンポジウム「帝国を超えて:ユーラシア文化のコンテクストにおけるロシアのイメージ」が,センター大会議室で行われました。このシンポジウムは,21世紀COEプログラム「スラブ・ユーラシア学の構築」(代表:家田修)が主催し,科学研究費補助金基盤研究A「スラブ・ユーラシアにおける東西文化の対話と対抗のパラダイム」(代表:望月哲男)が支援する形で行われたものです。
シンポジウムの趣旨は,ユーラシア大国ロシアの文化的なアイデンティティは何かという伝統的な問題を,ソ連解体後15年を経た今日の目から再検討しようというものでした。国家の自己イメージと対他イメージというデリケートな問題を総合的に分析するという試みで,参加者の専門分野も文学,歴史,地理,美術,教育,思想,音楽,文化学,ディアスポラやジェンダー研究など,きわめて多岐にわたりました。
第1セッションでは,ポストソ連の文芸がロシア・イメージを誇張的に再生産している現象が検討されました。第2・3セッションでは,コーカサス,ポーランド,ユダヤなどをキー概念として,オリエンタリズムやポストコロニアリズムの観点からのロシア近代史が概観されました。第4セッションでは心象地理の方法によるロシアやユーラシアのイメージが検討されました。第5セッションではドイツ,バルト,バルカンといった関係の深い外国におけるロシアとロシア人のイメージが検討されました。第6セッションではヴィジュアルな表現分野における20世紀ロシアのイメージが,第7セッションでは文芸・教育のジャンルにおけるロシア・イメージの形成と受容の問題が,それぞれ検討されました。また,ソ連文化のアイデンティティ形成における映画の役割の消長を物語るフィルム上演も行われました。
ロシア,ラトヴィア,ポーランド,ドイツ,イギリス,アメリカの6カ国11人の外国人研究者と12人の国内研究者による議論は充実したもので,問題の文化論的な重要性を確認させるとともに,さまざまな研究分野を取り込んだ国際的な共同研究の必要性を再認識させるものでした。ユーラシアの社会文化の推移の中で,従来自明のもののように用いられてきた「ロシア文化」「ロシア人」といった概念が改めて反省的検討の対象となり,われわれの学問自体のアイデンティティが問われています。国際シンポジウムはそうした足場の揺らぎ自体が,実は積極的に取り組むべき学問のテーマであることを自覚させてくれるものでした。 |
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12月15日会場風景 |
12月14日会場風景,後方の通訳も大活躍 |
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(スラブ研究センター) |
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