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平成19年度科学研究費補助金特定領域研究(新規の研究領域)の交付決定
−大型科研費新規採択−

 このたび,文部科学省から平成19年度科学研究費補助金特定領域研究(新規の研究領域)の交付決定の通知がありました。
 交付決定件数は領域代表1件を含む10件,決定金額は約153,600千円です。
 なお,今回大型科研費で新規採択となった研究代表者は次のとおりです。

【特定領域研究(領域代表者)】
○電子科学研究所・教授・三澤弘明
 領域課題名:光−分子強結合反応場の創成
 研究課題名:金属ナノ構造を用いた光局在場の創製と光化学反応への応用

研究期間
 平成19年度〜22年度
平成19年度決定金額
 直接経費44,700千円
(総括班 9,100千円含む)

 従来の光化学の研究では,光と分子の相互作用を大きくすることは限界に近づいており,極めて少ない光子によって高効率に分子を励起するプロセスを実現することは難しいとされています。これをブレークスルーし,高効率励起プロセスを実現させるためには,光と分子を積極的に強く相互作用させる新しい反応場を開拓することが必要不可欠です。
 本特定領域研究においては,光子を捕捉・局在化させる機能を有するナノ・マイクロ構造を設計・構築して「光−分子強結合反応場」を創出するとともに,本反応場において新たに出現する光子と分子/物質系の極めて強いエネルギー・空間選択的な相互作用に関する学理の探求とその応用技術への展開を目的とします。
 これまでの研究により金属ナノコロイドや人工構造物としての金属ナノ構造,およびフォトニック結晶など(図1)を用いることによって,任意の微小空間へ光子を束縛し,閉じ込めることが可能となりつつあります。高密度に光子が凝縮された空間においては,分子の多光子励起や禁制遷移など通常の反応場では非常に起こりにくい励起プロセスが分子サイズレベルの超高空間分解能をもって進行することが期待されます。
 本研究では,光−分子強結合反応場の高次機能性構造構築(図2)と反応場の根幹的支配原理の探求(図3)を通じて,全く新しい新光化学反応を開拓します(図4)。
 光子一つ一つの有するエネルギーや情報を極限的な効率にて自在に変換する場を高度に集積化して構築すれば,高い励起効率に加えて,高選択的な光反応を必要とする光エネルギー変換,光センシング,光情報通信,などの科学技術に対して全く新しいブレークスルーをもたらすことが期待されます。

図1 光子を捕捉・局在化させるナノ・マイクロ構造
図1 光子を捕捉・局在化させるナノ・マイクロ構造
図3 単一金属ナノ構造におけるプラズモン波動関数のイメージング
図3 単一金属ナノ構造におけるプラズモン波動関数のイメージング
図2 トップダウン・ボトムアップ手法を融合させて構築した立体的周期ナノ構造
図2 トップダウン・ボトムアップ手法を融合させて構築した立体的周期ナノ構造
図4 局所光電場による非線形光重合反応
図4 局所光電場による非線形光重合反応
 
(学術国際部研究協力課)

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