北方生物圏フィールド科学センターは,8月6日(月)から10日(金)までの4泊5日の日程で「野外シンポジウム2007〜森をしらべる〜」を中川・天塩研究林で開催しました。野外シンポジウムは,北海道の広大な森林や河川,湿原や草原を巡りながら,若い研究者たちによる研究の成果を聞き,その地で実際に行われている調査研究の一端を体験しながら,森の中で今何がどこまで解明されたのか,そしてこれから何を明らかにする必要があるかについて考える場です。10回目となる今回も,全国各地から森林研究に興味を持つ大学生24名が集まり,教員や大学院生などから森林研究の最新の成果や研究の進め方について説明を受けました。
一日のプログラムは,日中に実際の研究現場で行うフィールド調査体験と,夕食後に屋内で行う研究内容の詳しい解説や質疑応答を中心としたポスターセッションの2本立てになっています。5つのテーマ別に用意された11のセッションの他,夜のセッションや早朝の自由参加プログラムなど盛りだくさんの内容で,参加者は目を輝かせながら一生懸命作業に取り組んでいました。
野外でのセッションでは特に,森林の林床に広がるササの多さや,電気ショッカーで大きなサクラマスが浮かび上がってきた瞬間などが強く印象に残ったようです。
夕食後のポスターセッションでは,時間を惜しむように活発な質疑応答が繰り返され,研究の楽しさや難しさ,普段はめったに聞くことのできない苦労話や試行錯誤の裏話などを直に聞く良い機会となりました。中には,研究者の熱意に押され5時間も熱心に議論を交わしたり,進路や恋愛の悩みまで相談する姿も見られ,毎日夜遅くまで話し声が続きました。
研究者のセッション終了後に行われた参加学生による模擬セッションでは,研究者になったつもりで研究テーマを考え,実験結果までを予想して発表しました。参加学生の中でふくらんだ「森林研究」への思いが伝わるユニークで楽しい発表会となりました。
最終日の朝は「未来の地球へ」と題して,風倒木を利用して炭素換算量を印字した木の輪切り「環境通貨」を作り,地球環境と森林生態系の関係を考える記念として持ち帰りました。
参加した学生たちは,「自然の仕組みはやっぱり面白い」「自分も調査をするようになったら,自然への負荷を最小限に抑えた調査を心がけたい」「発表者の目がキラキラして情熱が伝わった」「このメンバーともっと話をしていたい」「フラックス研究はすごくて今後の成果が楽しみ」「川の中は楽しかった」など,様々な思いを抱いて「野外シンポジウム2007」が終了しました。
セッションテーマ一覧
1.地球環境と生態系
*森はどのくらい二酸化炭素を吸っているの?
*森林伐採は渓流水に影響するのか?
2.渓流の生き物たち
*小さな渓流の複雑な世界
*河に留まるか、海に行くか
−サクラマスの二つの生き方−
3.生態系のつながり
*敵も時には味方なり
−喰う者と喰われる者の不思議な関係−
*ササはどんな役割を果たしているか
4.撹乱と森林の応答
*『良い伐採』とはなんだろう?
*台風が森にくると…
5.悠久の大地をめぐる
*雲の上の楽園
−小さな山地湿原探訪−
*森の百年先は予測できるか!?
*森から海へ:母なる大地か?
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