訃報

名誉教授 伊達だて つとむ 氏(享年68歳)

名誉教授 伊達 惇(だて つとむ)氏(享年68歳)

 名誉教授 伊達 惇 氏は,平成19年7月31日胃癌のため68歳でご逝去されました。ここに,生前のご功績を偲び,謹んで哀悼の意を表します。
 先生は,昭和13年10月19日東京都台東区に生まれ,昭和38年3月東京大学工学部応用物理学科数理工学専修を卒業し,日本電信電話公社電気通信研究所基礎研究部に研究員として採用され,昭和41年7月東京大学工学部計数工学科助手に採用されました。その後昭和54年11月に同専任講師に昇任,同年同月北海道大学工学部に助教授として着任し,同年に新設された一般教育等情報科学を担当されました。昭和57年7月教授に昇任し,昭和63年4月情報工学科教授として新設の知能情報工学講座を担当されました。平成7年4月には大学院の一部重点化により設置されたシステム情報工学専攻数理情報工学講座の教授(兼務)として知能情報工学分野を担当され,平成9年4月大学院重点化の完成により,大学院工学研究科教授に配置換えになり,引き続き同分野を担当されました。この間,工学研究科情報工学専攻,システム情報工学専攻及び工学部情報工学科の創設及び創設期の運営に携わり,その発展・充実に大きく貢献されました。平成14年3月に本学を定年退官され,同年4月北海道大学名誉教授の称号が授与され,退官後は北海道工業大学総合教育研究部の教授として,教育・研究を続けて来られました。
 教育面では,昭和54年以降,教養部における情報科学の講義を通して多数の学生の指導教育に携わり,学科目情報科学の初代担当者として,情報処理教育センターによる実習教育の仕組みを整備し,その充実に貢献されました。工学研究科においては,情報科学特論,情報システム工学特論,数理情報システム特論,機能情報工学特論,工学部においては,算法通論,数値解析,知能情報工学,離散数学,情報数学,計算数理工学などの講義を担当され,工学研究科及び工学部の学生の教育や研究指導を通じて,多くの技術者や研究者を育成されました。また学外では,北海学園大学を始め,北海道教育大学,北海道情報大学の非常勤講師として,数理情報工学に関する教育に尽力されました。
 研究面では,日本電信電話公社において,電子交換機導入の先駆けとなった半電子交換機DEX-1の中央制御装置における,素子数最適化及び演算の高速化に成果を上げられました。東京大学工学部においては数理音声学の理論及び音声分析の研究,二次変換の研究及び非線形力学系の研究に従事し,不変式系を用いた変換の構造を明らかにし,論文「二次変換の理論とその応用」によって,昭和52年に東京大学より工学博士の学位を授与されました。北海道大学着任後は,数値解析における近似理論,有限集合間の対応付けアルゴリズムの研究を行いました。また知能情報工学講座の新設に伴い,計算機利用者の知的活動と,計算機の原理的あるいは実用的な可能性に関する研究を推進されました。研究内容は広範囲に及び,ファジィ算法に関する理論的研究,情報量基準による学習理論の基礎的研究,連想記憶モデルにおける学習理論の研究,ニューラルネットワークの数理的性質の解明,遺伝的アルゴリズムの拡張と応用,センサ技術のヒューマンインタフェースへの応用,可能性理論における信念修正の理論構築,確率的ネットワークの応用等の諸研究課題を,数理工学的視点から発展させ,理論,応用の両面で研究成果を上げられました。また情報セキュリティへの数理的手法の適用に関する研究を大きく前進させました。
 全学運営においては,学部移行委員会委員長を始めとし,総合科目委員会,教養課程教育協議会,教養部教務委員会,情報処理教育センター運営委員会,教務事務電算化実施準備委員会,その他多くの委員会委員を務め,特に昭和61年の全学移行振分けの電算化にあたって移行振分けのアルゴリズムを開発するなど,全学教育の発展に大きく貢献されました。
 学外においては,情報処理学会,計測自動制御学会,日本ファジィ学会の各北海道支部長,計測自動制御学会理事,日本ファジィ学会理事など学協会委員を歴任し,学術研究の推進発展に大きく貢献されました。平成17年1月には,その功績により日本知能情報ファジィ学会フェローの称号を贈呈されました。また日本工業教育協会の研究会に積極的に参加するなど,教育の改善にも尽力されました。
 国際交流面では,在外研究員として,米国イリノイ大学アーバナ校計算機科学科に長期滞在したのを始め,情報工学や数理工学関係の各種国際会議の開催や運営に携わるなど,学術の国際交流にも多大な貢献をされました。
 以上のように,先生は本学内外において情報工学及び数理工学の教育・研究に尽力し,多くの優れた人材を育成するとともに,学術研究の発展に多大な貢献をされました。
 ここに謹んで先生のご冥福を心よりお祈り申し上げます。

(工学研究科・情報科学研究科・工学部)


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