訃報

名誉教授 石川いしかわ つね 氏(享年90歳)

名誉教授 石川  恒(いしかわ つね)氏(享年90歳)

 名誉教授 石川 恒 氏は,平成19年11月3日に御逝去されました。ここに先生の生前の御略歴を紹介してご功績を偲び,謹んでご哀悼の意を表します。先生は,大正7年4月11日に生まれ,昭和17年に北海道帝国大学農学部畜産第二部を卒業した後,約3年間兵役に就かれました。その後,昭和21年10月より神奈川県立平塚農業高等学校教諭および三菱製薬株式会社研究員を経て,昭和24年6月北里研究所に転身され,同副部長を務められ,昭和29年6月より北海道大学獣医学部助教授に就任,同31年4月獣医学部家畜臨床繁殖学講座担当教授に昇任されました。以来,20数年に亘り担当講座および獣医学部における教育研究活動に尽力されました。本学退官後は,酪農学園大学嘱託教授に就任し,家畜繁殖学教室等の講義や研究指導を担当されました。
 先生は,本学在職時に学部および大学院の講義に推計学を取り入れ,獣医学領域の新しい研究手段を発展させ,学外研究者および臨床家に対しても獣医師会での活動を通して,推計学に基づいた研究および臨床活動の重要性を説き,その普及に努力されました。この点は,「推計学分析のされていない論文は随筆である」との,先生のお言葉に良く表されているものと考えられます。
 研究業績としては,北里研究所では乾燥痘苗に関する研究を行い,昭和30年12月に学位を授与されました。本学教官就任後は,雄畜不妊性疾患,特に精巣における精子形成機能の異常に関する調査研究に従事し,不妊症の多くが雄畜の造精機能異常によるものであることを明らかにしました。さらに,その成果を獣医師会および家畜人工授精技術研修会等を通じて普及し,わが国における牛の改良および増殖に貢献されました。昭和40年以降は,同講座助手の千葉敏郎先生(現岐阜大学名誉教授)とともに北海道の産業として重要な地位にあったミンク産業からの要請に応え,ミンクの繁殖に関する研究に取り組み,人工授精や精巣での精子形成に関する基礎研究に従事されました。
 先生は,これらの教育分野および社会貢献におけるご業績・功績に対し,平成18年秋に瑞宝中綬賞を授与され,講座卒業生一同による祝賀会で元気なお姿を見せて下さったばかりでした。ここに謹んで先生のご冥福をお祈り申し上げます。

(獣医学研究科・獣医学部)


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