2007年度スラブ研究センター冬期国際シンポジウム開かれる |
12月5日(水)から7日(金)まで,スラブ研究センター冬期国際シンポジウム「アジア・ロシア:地域的・国際的文脈の中の帝国権力」が,センター大会議室で開かれました。これは,21世紀COEプログラム「スラブ・ユーラシア学の構築」(代表:家田修教授)が主催したものです。また,このシンポジウムの内容はスラブ研究センターが来年度申請予定の新学術領域研究「ユーラシア地域大国の比較研究」に関連しているため,本学重点配分経費の一部も利用しました。
過去10年あまり,ロシア帝国の東方支配に関する研究は世界的に隆盛を見せ,ロシアの多民族性・多宗教性,内政と外政の関係,ロシア人と非ロシア人の相互認識などについて,豊かな成果が出されてきました。21世紀の世界秩序を考える上で「帝国」は一つのキーワードとなっていますが,異なる宗教・文化を持つ人々の共存や,強大な権力のもとでのマイノリティの生存戦略といった今日的な問題を考えるためにも,ロシア帝国の歴史はさまざまな思考材料を提供してくれます。
今回のシンポジウムでは,「比較帝国論」,「ロシアの拡大と東方政策の変容」,「アジア・ロシアにおける帝国地理と行政」,「ロシア帝国とムスリム・ネットワーク:競争か協力か」,「北東アジアでのロシアの戦略と策略」,「ロシア統治下の中央アジア社会の変化」,「民族運動・革命運動の場としてのアジア・ロシア」という7つのセッションを設け,ロシア帝国期の中央アジア,シベリア,ヴォルガ・ウラルの歴史を多角的に議論しました。話題は清朝を含む東アジアや,イランとオスマン帝国を含む西アジアにも広がり,スラブ研究センターが21世紀COE及び今後のプロジェクトの主軸としている比較研究・跨境的研究の方向性を明確に打ち出しました。
報告者は19人で,国籍別では日本7名,ロシア5名,米国4名,カザフスタン2名,ドイツ1名でした。あわせて開催された第5回次世代国際ワークショップでも,フランス,日本,韓国からの研究者が報告しました。また特別企画として,アクルベク・カマルディノフ駐日カザフスタン大使の講演も行われました。
参加者総数は90名弱で,現状分析をテーマとするシンポジウムに比べると少なめでしたが,歴史家同士の密度の高い議論が展開できました。外国人報告者には近年のロシア帝国史研究をリードしてきた研究者が多く含まれ,他方日本人報告者は中央ユーラシア研究の若手を中心とする構成でしたが,多言語史料を駆使した日本の研究水準の高さに,外国人研究者からも賞賛の声が寄せられました。
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第6セッションでの報告 |
議論に熱心に聞き入る参加者たち |
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(スラブ研究センター) |
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