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工学系教育研究センター「海外インターンシップ体験報告会」を開催

海外インターンシップ体験報告会の様子
海外インターンシップ体験報告会の様子
 10月16日(火),工学系教育研究センターにおいて「海外インターンシップ体験報告会」を開催しました。
 工学系教育研究センター(CEED)では,創造的・実践的人材育成を支援する教育プログラムを開発しており,海外への長期インターンシップは,基礎学術と産業社会の関係,広範囲な技術分野への対応性,国際的な場での活動能力,リーダーシップやコミュニケーション能力の重要性を学ばせる中核となる教育事業として位置付けられています。今年度は,14カ国に25名(12月末現在)を派遣しました。受入先は,企業8件,大学11件,公的研究機関6件です。インターンシップ内容は,実験,解析・計算,ソフト作成,調査,試作・評価など多岐にわたっています。
 以下に報告会の内容の一部と,教育効果に関する成果の一端を紹介します。

事例1:日系自動車部品メーカー米国工場で1ヶ月間インターンシップ
 この学生は,生産ラインで鋼板溶接部の溶接不良解析を行い,その要因を分析して対策を考案し,大幅な不良低減に成功した。このインターンシップにおいては,指導教員が「専門外かつ海外の生産現場でのプロジェクト」を課したもので,その結果,大きな自信をつけて帰国することができた。

事例2:チェコのInstitute of Chemical Technologyの電気化学・腐食の研究グループで交流インピーダンス法による鉄鋼材料表面の熱酸化物皮膜の特性の計測・評価に2ヶ月間従事
 この学生は,実験法やデータ解析ソフトの使用法をマスターすることからスタートし,1ヶ月後にはデータを取得し,最終的にはインヒビター(腐食低減添加剤)の効果の実験まで進展し,満足できる成果を得た。同人は寮の2人部屋にスロバキア人学生と同居し,バスと地下鉄で通勤したこと,IAESTE* 学生委員会のサポートや国際パーティでの異文化交流,チェコやオーストリアへの見聞旅行などを通じて,日本文化や歴史等に関しての再認識の必要性や英語コミュニケーション能力の必要性を痛感した。

事例3:オマーンの自動車ディーラー及び修理工場で2ヶ月間就労体験
 この学生は,35〜45℃の過酷な作業環境の中でエンジンや動力系,エアコンや電装部品の故障や不具合の修理を行った。この研修にはヨーロッパや中東を中心に10カ国から18名が参加しており,同人は,就労と毎週の「国際討論会」から世界の情勢と日本の立場を認識し,また自ら賃上げ交渉ができるほど英語力が著しく向上した。この経験を通じて機械技術者としての自覚と,「世界中どこでも生きていける」という自信を得ることができた。

 CEEDでは国内と海外のインターンシップ派遣を行っており,インターンシップ参加者は成長が顕著ですが,特に海外インターンシップ参加者の成長は際立っています。英語能力の向上はもとより,積極性,リーダーシップ,社会性等が向上します。何よりも,他言語を用いて異文化の中で生活し,就業した経験が彼らの大きな自信につながっています。これらの活動体験は,12月3日(月)の北海道新聞朝刊でも大きく報道されました。
 帰国後に,博士論文や修士論文を英語で執筆する学生や,自らリーダーとして留学生や卒業生と交流する組織を立ち上げた学生もいます。今年度,インターンシップ参加者によって海外国際インターンシップ学生委員会が組織されました。学生委員は,海外から受入れたインターンシップ研修生と自ら交流を図っています。このような学生の意欲と種々の能力の向上は,大学での研究活動や国際活動の活性化につながり,研究室における数ヶ月のブランクを補って余りあります。
 以上のことから,インターンシップは,大学での講義や研究活動では得られない種々の資質を向上させる極めて有効な教育手法であり,学生が得られるメリットも大きいと言えます。また,就業体験や海外体験を持つ優秀な学生を育成することは,大学にとっては評価を高め,産業界にとっては優秀な卒業生を確保できるという大きなメリットがあります。インターンシップ教育を通じての産学連携や国際連携が,研究上の連携につながることも期待できます。
 今後更に海外インターンシップ派遣数を増やすため,CEEDでは海外での受入機関の開拓に着手しています。その一例として,EPSON Canadaへの派遣ルートを確立しました。これは当地に留学していた本学経済学部4年生が橋渡し役を務めたものです。このように,CEEDでは他学部との連携も視野に入れてインターンシップ派遣の機会開拓と国際交流の輪を広げる活動を行っています。
 CEED が開発している海外インターンシップ教育事業が北海道大学全体で活用され,広がることを願い,更に内容の充実に努めます。
* the International Association for the Exchange of Students for Technical Experienceの略。世界約80余ヶ国に委員会を持ち,各国委員会との連携で国際インターンシップの促進に貢献している。
海外インターンシップの様子(事例2:寮にて) 海外インターンシップの様子(事例3:自動車修理工場での実習)
海外インターンシップの様子
(事例2:寮にて)
海外インターンシップの様子
(事例3:自動車修理工場での実習)
(工学研究科・情報科学研究科・工学部)

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