訃報

名誉教授 なか世古せこ きみ 氏 (享年72歳)

名誉教授 中世古 公男(なかせこ きみお)氏 (享年72歳)

 名誉教授中世古公男氏は平成20年3月11日午後7時45分,胃癌のため72歳でご逝去されました。ここに生前のご功績を偲び,謹んで哀悼の意を表します。
 同氏は,昭和11年2月17日,大阪市で生まれ,昭和35年3月に北海道大学農学部農学科を卒業し,同大学院農学研究科に進学されました。昭和39年11月北海道大学大学院農学研究科博士課程(農学専攻)を中途退学され,北海道大学農学部助手に採用されました。昭和62年4月北海道大学農学部助教授に昇任された後,平成元年4月教授に昇任され,農学科食用作物学講座を担任されました。学部・大学院改組により,平成4年4月生物資源科学科作物学講座担任,平成9年4月生物資源生産学専攻作物生産生物学講座担任となりました。平成11年3月北海道大学を停年退職し,同年4月北海道大学名誉教授の称号を授与されました。
 同氏の研究活動は作物学全般にわたっておりますが,なかでも作物の生産性に密接に関係する乾物生産特性の研究領域では,圃場に栽培したマメ類,ムギ類,トウモロコシおよびバレイショについて,葉の大きさ,形および分枝性の違いに基づく群落内での光分布(群落構造)の観点から研究され,乾物生産を規定する植物体側の要因が,マメ類とバレイショでは群落構造であるのに対し,トウモロコシでは収穫器官の穂の特性,ムギ類では群落最上層に分布する穂および止葉の光合成量であることを究明されました。これらの成果を多収栽培技術として実証し,植物成長調整剤(ウニコナゾール)を利用したダイズ多収栽培技術の開発(実用新案特許)およびバレイショ超多収系統の選抜に成功されました。これらの業績に対して,昭和58年9月に北海道大学から農学博士の学位を「豆類の乾物生産特性に関する研究」で授与され,また平成9年4月には「北海道地方における主要畑作物の乾物生産特性とその規定要因に関する研究」で日本作物学会賞を受賞されました。同氏の指導を受けた者は,教育,研究,行政,実業の幅広い分野で活躍しています。
 北海道大学在職中は,農学部と大学院農学研究科の改組において中心的な役割を果たし,生物資源科学科(平成4年4月発足)と生物資源生産学専攻(平成9年4月発足)の成立に尽力されました。また,農学部付属農場長(平成5年4月〜同9年3月)として本学における運営の枢機に参画し,北海道大学キャンパスマスタープランの作成,および北海道大学付属施設の統合体である北方生物圏フィールド科学センターの設立に尽力されました。
 学外における活動では,北海道農業確立指標検討委員会,道産原料利用促進委員会,原料供給体制整備中央協議会の委員を歴任された後,北海道種苗審議会副会長(平成7年〜同11年),北海道農業・農村振興審議会副会長(平成7年〜同11年)および同会長(平成11年〜同13年)の要職を担当され,北海道農業の振興に努められました。また学会活動として,日本作物学会の編集委員会,シンポジウム委員会,学会賞選考委員会の委員や幹事を歴任された後,昭和62年4月からは評議員となり,シンポジウム委員会委員長(平成3年〜同6年),学会賞選考委員会委員長(平成7年〜同10年)を務められ,平成6年8月に北海道大学農学部で開催された日本作物学会第198回講演会では運営委員長を担当され,わが国における作物学の発展に貢献されました。さらに,平成元年から10年間にわたって日本作物学会北海道支部会長を歴任され,北海道における作物学研究の進展に尽力されました。
 以上のように同氏は,作物学の教育・研究を通して,日本における作物学の重鎮として卓越した業績を挙げ,また教育者として多くの指導者を育成しました。さらに,北海道大学および同農学部等の運営に寄与し,また北海道農業の振興に尽力されました。
 先生のご逝去を偲んで平成20年4月に開催された「中世古先生を語る会」には同窓生や関係者等が日本各地から多数参加し,また北海道知事をはじめ多数の弔電を受けました。
 ここに謹んで先生のご冥福を心よりお祈り申し上げます。

(農学院・農学研究院・農学部)


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