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先端生命科学研究院 西村紳一郎教授に北海道新聞文化賞

 先端生命科学研究院 西村紳一郎教授に,北海道新聞社より北海道新聞文化賞が授与されました。
 この賞は,昭和22年以来北海道の発展,振興に尽くした人々の栄誉を讃える賞であり,今回は第62回目にあたります。同氏の「複合糖質の化学研究と次世代創薬への応用」が,新薬開発への応用,実用化に向けての創薬研究に寄与したことが高く評価され,今回の受賞に至りました。
 同氏は,昭和34年に渡島管内木古内町で生まれ,北海道大学大学院理学研究科博士課程を修了後,成蹊大工学部助手を経て,平成4年に北海道大学理学部高分子学科講師,平成5年に理学研究科教授,米国ジョンズホプキンス大客員教授(平成6年まで),平成18年に大学院先端生命科学研究院の教授に就任しました。
 同氏は,本学理学部在学以来,一貫して糖鎖研究に取り組んできました。糖鎖は,ブドウ糖などの単糖が複雑に連なった高分子で,細胞膜や,血液中に大量に存在します。癌などの病気や老化によって構造が変化するため,近年は疾患診断マーカーとしての役割などが期待されています。同氏は,糖鎖研究に必要な2つの独創的な方法論([1]糖鎖自動合成法,[2]糖鎖解析法)を確立することにより複合糖質の新たな研究分野を開拓しました。平成6年,米国滞在中に論文発表した酵素反応と水溶性高分子担体の利用を基本原理とした世界初の「糖鎖自動合成法」により,1000種類を超える大規模な癌関連糖ペプチドライブラリーの構築に成功しています。また,糖鎖のみが,タンパク質,脂質,遺伝子と異なり,ヘミアセタール構造を有していることに注目し,ヒドラジド基やアミノオキシ基を有する合成高分子樹脂等により化学選択的に糖鎖のみを捕捉できることを平成14年に発見しております。この技術は「Glycoblotting(グライコブロッティング法)」として大規模糖鎖構造解析を可能とする世界標準の革新的技術に進化しつつあります。
 今回の受賞を契機として,今後さらに,生物の分子進化や細胞分化のメカニズム解明といった基礎研究はもとより,肝細胞癌,腎癌,前立腺癌,リウマチ,糖尿病等の新規な疾患バイオマーカー探索に向けた展開が期待されます。
表彰状を受ける西村教授 受賞のスピーチをする西村教授
表彰状を受ける西村教授 受賞のスピーチをする西村教授
(生命科学院・先端生命科学研究院)

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