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名誉教授 諸住高氏は,平成20年12月15日病気療養中のところ,群馬県の邑楽町の自宅にて逝去されました。ここに生前の先生のご業績を偲び,謹んで哀悼の意を表します。
先生は大正15年8月31日に北海道に生まれ,昭和23年3月北海道大学工学部応用化学科を卒業され,北海道農産化学工業株式会社勤務を経て,昭和24年9月に北海道大学工学部に採用されました。昭和25年12月同助手,昭和32年7月同講師,昭和33年5月同助教授,昭和39年12月同教授に昇任され,平成2年3月31日に停年により退官され,同年4月に北海道大学名誉教授の称号が授与されました。退職後は,平成9年3月まで,北海道自動車短期大学教授を勤められました。
この間,先生は本学において長年にわたって工業物理化学と原子炉材料学の教育と研究指導を行われ,また,昭和42年の本学工学部原子工学科の開設に尽力されるとともに,同学科の学生の教育にも力を尽され,専門分野における研究を通じて多数の研究者,技術者の養成に努力されました。さらに,秋田大学,室蘭工業大学,北見工業大学の非常勤講師として,本学部以外の学生に対しても,広く化学並びに原子力工学に関する教育に尽力されました。一方,北海道自動車短期大学においては,同大学の学生に対して,化学及び材料科学に関する教育並びに研究を指導されました。
先生は,研究面においては,金属材料の腐食化学と防食工学,原子炉の水化学,原子炉燃料・材料の物理化学に関する広範な研究に従事され,金属材料の腐食化学と防食工学に関しては,塗装鋼板の交流及び直流特性を測定する塗膜の性能評価の標準的試験法の開発と確立,核燃料被覆材として用いられるジルコニウム合金の不動態皮膜の安定性と核燃料脱被覆用硝酸への溶解性,アルミニウムカソードスケール発生機構と防止法,ステンレス鋼に対する原子炉化学除染剤の腐食性,高ニッケル合金の溶融塩による腐食など,広範な研究を手がけられました。これらのうち,原子炉冷却系の水化学とクラッド対策に関する研究では,原子炉冷却系の放射能汚染のキー物質となるマグネタイトに注目され,これが酸化,水素化及びフェライト化することによってガンマ酸化鉄及びニッケルフェライトなど一連の錆物質に変換するという錆物質変換の新しいスキームの提案を行われました。また,米国オークリッジ国立研究所において共同開発された電気化学による水溶液内pH制御法を鉄鋼,アルミニウムなどの金属材料の腐食速度の測定と溶出した金属イオンの加水分解の研究に応用されるとともに,この方法を塩化物イオン,鉄イオン,セリウムイオン,ヨウ化物イオンなどの電解質イオン濃度の制御に拡張応用され,各種の均一及び不均一溶液内反応の平衡と速度の測定に適用するという斬新な方法を開発され,ウランとトリウムの溶液化学と種々の固体物質の化学反応性についての貴重な知見を得られて,新しい学問分野を開拓されました。さらにコッククロフト・ワルトン型加速装置を用いたチタン,ジルコニウム等の水素吸蔵挙動の研究,45メガ電子ボルト電子線加速装置を用いたウランなどの放射化分析,メスバウアー分光法による鉄鋼材料の酸化反応の速度の測定と反応中間体における鉄の存在状態の研究を行われ,その成果を水素貯蔵合金の開発と性能向上の研究へ拡張されました。これらの業績は,材料保全による原子力の安全性と信頼性の向上,材料科学研究への放射線及び電気化学研究方法の応用に関連する学問分野の新生面を拓いたものであります。
また,教育研究の傍ら,図書館委員会委員等多数の委員会委員を務められ,本学の発展に貢献されるとともに,学外においては,日本原子力学会理事及び北海道支部長,腐食防食協会理事等多数の要職を歴任され,学術の発展に大きく貢献されました。また,文部省学術審議会専門委員,北海道地方労働基準審議会委員,泊発電所環境保全監視協議会委員,札幌市公害対策審議会委員等多数の国及び地方行政機関の委員として,学識経験に基づく意見を進言され,行政の推進に寄与されるとともに,国民及び道民の福祉の増進に多大な貢献をされました。
以上のように,先生は学生の教育,学術研究上の諸活動に加え,大学運営,さらに学会,産業界,国および地域社会に対する貢献など,その功績は誠に顕著でありました。
諸住先生のこのようなご業績に対し,平成19年春の叙勲で瑞宝中綬章が授与されました。ここに謹んで先生のご冥福を心よりお祈り申し上げます。
(工学研究科・工学部)
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