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北海道大学病院 浅香病院長が平成20年度高松宮妃癌研究基金学術賞を受賞

 臨床試験の研究組織であるジャパン・ガスト・スタディ・グループの代表を務める北海道大学病院の浅香正博病院長が,「ヘリコバクター・ピロリ菌の除菌による2次胃がんの予防に関する研究」により,平成20年度高松宮妃癌研究基金学術賞を受賞されました。
 高松宮妃癌研究基金は,「癌撲滅」を発意された高松宮妃殿下が,同級生とともに組織された「なでしこ会」の15年にわたる募金活動で得た資金を基本金として,昭和43年に発足した基金で,優れた癌研究に対して助成活動を行っています。

これまでに受賞された本学関係者〜
  昭和51年度:(故)牧野佐二郎名誉教授「癌の細胞遺伝学的研究」
 
昭和63年度(創立20周年記念特別賞): 大塚榮子名誉教授(受賞時:薬学部教授)「c-Ha-rasがん遺伝子産物,p21タンパク質の3次構造の決定」
 
平成17年度: 鎌滝哲也名誉教授(受賞時:薬学研究科教授)「シトクロムP450の化学発癌における役割とその発現制御」

(総務部広報課)

 

略 歴 等
昭和47年   北海道大学医学部卒業
平成6年   北海道大学医学部内科学第三講座教授
平成8年   ジャパン・ガスト・スタディ・グループ設立,代表就任
平成19年   北海道大学病院長
平成20年   日本ヘリコバクター学会理事長
功 績 等
 浅香病院長はわが国のヘリコバクター・ピロリの年代別感染率を初めて明らかにするとともに,本菌の感染と胃粘膜萎縮との関わりを,次いで本菌と胃がん,特に早期がんとの関わりを明らかにしています。平成8年にはヘリコバクター・ピロリと胃がんの関係を調べるために,全国の若手,中堅の意欲的な消化器疾患の専門家に呼びかけてジャパン・ガスト・スタディ・グループ(JAPANGAST Study Group)という研究組織を形成して自ら代表に就任しました。平成8年から平成12年にかけ,文部省の科学研究費がん重点研究"ヘリコバクター・ピロリと胃がんの発生"班の班長としてヘリコバクター・ピロリと胃がんの関わりを疫学的観点から明らかにしました。また,日本ヘリコバクター学会ではガイドライン作成委員会の委員長を務めてわが国最初のヘリコバクター・ピロリの診療に関するガイドラインを作り,現在は同学会の理事長として活躍しています。
 多くの疫学的研究および実験動物を用いた研究からヘリコバクター・ピロリ感染と胃がんの関わりはほぼ解明されていましたが,ヒトのヘリコバクター・ピロリの除菌による胃がん発生の予防効果については科学的に十分な研究が行われていませんでした。そこで,浅香病院長らは症例数が比較的少なく,短い観察期間でも結論が得られるように,胃がん発生リスクが最も高い内視鏡手術後の早期胃がん患者を対象とすることにしました。ジャパン・ガスト・スタディ・グループによる3年間の検討・解析の結果,除菌群では非除菌群に比べて2次胃がんの発生率が約1/3に低下していることがわかりました。この結果は平成20年8月にLancetという英国の専門雑誌に報告され,国内外のメディアから大きな反響を呼びました。
 この研究により,ヘリコバクター・ピロリ除菌により2次胃がんの発生が抑制されることが確認され,除菌による胃がん予防への応用の道を切り開いた点で意義が大きいと考えられます。
(北海道大学病院)

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