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.学術分野における功績について |
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1) |
水環境工学・都市水工学の揺藍期から発展・成熟の過程に至るまで,この分野の教育・研究の先達として,また世界・アジア・日本のリーダーとして,我が国の環境工学の発展をリードし,日本の環境科学・行政・産業界に多くの指導的人材を送り出した。 |
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2) |
都市における上下水道の先駆的研究者として,環境容量・都市水代謝システムという新概念を提案して都市の持続的な発展の方向性を1970年代の早い時期から示し,水環境の制御のための工学的手段としての各種水処理プロセスを,水質マトリックスに基づいて総合的機能評価・設計する画期的研究を行った。 |
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3) |
1970年代に,丹保・渡辺のGCT値理論といわれる,20世紀から現在に至るまで世界の主力浄水処理法である急速濾過システムの基幹部分の理論設計法を世界で最初に確立した。 |
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4) |
1960年代の粘土系コロイド,フミン質コロイドの凝集機構の解明から始まる一連の研究により,フロック集塊のフラクタルな性質を示すフロック密度関数とフロックの強度関数を世界で初めて提案し,現在もこの理論上で,国内外の多くの研究が行われている。 |
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5) |
平成13年〜平成14年,第89代土木学会長として,「人口減少下の日本社会の基盤整備」に関わる多くの提言を行い,近代の次に来る時代に向かうための提言を続けている。 |
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6) |
1947年に設立された国際水道協会(International Water Association:
IWSA)と1965年に発足し国際水質協会(International Water Quality Association:
IAWQ)となった世界最古のふたつの水学会の発展的統合をはかり,世界72ケ国・地域の機関と4,500人の個人会員を持つ国際水研究組織 International
Water Association(IWA)の設立に尽力した。平成13年からは第2代会長を務め,2001年のベルリン会議,2003年のメルボルン会議を成功に導き,世界最大の水学会創設と発展の責任者として尽力した。 |
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7) |
昭和50年からOTCA(引き続きJICAの発足)の下で,日本最初の海外技術教育使節団長としてインドネシア水道技術教育へ参加,昭和54年よりアジア工科大学(AIT)の環境工学科支援,昭和58年より中国西安建築科技大学,同済大学で文革直後からの中国若手教員・技術者の指導,昭和50年代からの国内におけるJICA水道技術コースの設立等,アジアの水技術教育の最前線で長期にわたり活動した。
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2 |
.学長としての功績について
(北海道大学総長として) |
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1) |
構内環境整備:北海道大学40年来の懸案であった北18条道路のアンダーパス化(エルムトンネル)を実現させる,南・北キャンパスの一体化に主導的な役割を果たし,一体化された後の北キャンパスにおける「研究ビレッジ構想」「エコキャンパスの創成」「北海道大学キャンパス・マスタープラン96」の策定とそれに基づく構内整備に大きく貢献した。構内のサクシュ琴似川の復元,大野池の整備,平成ポプラ並木など構内の自然の回復と環境整備に尽力した。 |
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2) |
産学連携の推進:地域社会や産業界の要請等に積極的に対応し,先端科学技術共同研究センター及び全国で初めて国立大学構内に第3セクターである「北海道産学官協働センター」を北キャンパスに設置し,北海道内各大学等からの研究成果を実際の経済・産業活動に有効利用するためのパイプラインとなる「北海道TLO」の設立運営に尽力した。 |
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3) |
大学院重点化の推進:平成12年度に完成した北海道大学の大学院重点化に大きく貢献した。また,大学院重点化後における研究科の垣根を越えた共通授業の実施並びに学部教育におけるコアカリキュラム導入による全学共通の教養教育,シラバスの電子化の計画と実施を主導した。 |
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4) |
学内施設の充実:北大のフィールドサイエンスの伝統を発展させ,全国に「フィールド科学研究センターを創設する文部科学省の検討」会の責任者を務め,その第一号として,北海道大学の北方生物圏フィールド科学センターを発足させた。北大が長らく懸案としてきた学内共同教育研究施設としての「総合博物館」を理学部本館を転用して創設した。さらに,全国共同利用施設として「低温科学研究所」の改組,学内共同利用施設として「情報メディア教育研究総合センター」,免疫科学研究所と医学部附属癌研究施設との統合により「遺伝子病制御研究所」,独立研究科として「国際広報メディア研究科」の設置等に尽力した。大学院地球環境科学研究科,薬学部,低温科学研究所,高等教育機能開発総合センター,獣医学部,工学部等の大型改修・校舎工事及び文系学部の総合研究棟の施設整備に尽力した。 |
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5) |
創基120周年記念〜125周年記念事業を計画,新しい世紀への展開を図る5カ年計画を困難な経済情勢のもとで新理念のもと大学をあげての努力で実行し成功に導いた。
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(放送大学長として) |
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1) |
平成15年10月,放送大学学園が特殊法人から特別な学校法人へ移行するにあたり,学長たる理事として理事長を十分に補佐し,移行が円滑に実施されるよう尽力した。 |
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2) |
平成16年度に「専攻とカリキュラムのあり方検討ワーキンググループ」を立ち上げ,教育の責任体制の確立を図る領域科目群を設定し,新しい教育理念の下にカリキュラムの体系化を行い,学部・大学院の課程を刷新し,社会や学習者のニーズに応えるとともに,学問領域を明確にした。 |
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3) |
国立大学等との間に単位互換共同研究プロジェクトを計画,平成17年度より実施し,特別聴講学生数の大幅な増加をもたらした。また,平成18年7月に「連携・資格プロジェクト」を設置し,其の第一弾として,看護師学校・養成所との連携協力により,准看護師の看護師への昇格教育を画期的に推進した。これらの結果,学長在任時に80を超える大学等との単位互換協定を新たに締結した。 |
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4) |
ラジオ授業科目についてのインターネット配信実験を行い,平成19年度から全てのラジオ授業科目をインターネット配信するなど,メディア戦略を率先して推進した。 |
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5) |
AAOU(アジア公開大学連合)の常任理事として,ICDE(国際遠隔評議会)の日本代表として,多くの国際会議に出席し,日本の通信教育の国際化,放送大学の国際交流に多大なる貢献を果たした。放送大学の英文名を「The
Open University of Japan 」とし,国際通用性を高めた。
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3 |
.行政協力等における功績について |
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1) |
国立大学協会第7常置委員会委員及び委員長として,現在の教授,准教授,助教からなる教員新システムを国大協総会に提案・了承され,各関係機関に働きかけ,その創設に尽力した。 |
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2) |
大学設置・学校法人審議会会長として,我が国の大学設置行政の大転換期に6年間にわたって大学・学部等の設置に指導的な役割を果たした。とくに法科大学院,専門職大学院,通信制大学院等の新大学院制度の発足にあたり,最初の制度運用と許認可の責任者を務め,新システムを小委員長として直接審議し新展開の中心を務めた。 |
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3) |
大学基準協会会長,大学評価・学位授与機構 国立大学法人教育研究評価委員会委員長,大学機関別認証評価準備委員会委員等として,わが国の大学評価の創生期から実施全般の責任者として,国,公,私立大学評価の中枢を担って新しい大学の発展に尽くした。 |
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4) |
「国際的な大学の質保証に関する調査研究準備委員会」委員長(平成15年度),G8エビアン・サミットにおいて「持続可能な開発のための科学技術」についての行動計画が合意されたことに伴い,地球観測分野の専門家で構成された「地球観測国際戦略策定検討会」座長(平成15年度),「大学への早期入学(飛び入学)及び高等学校・大学の接続に関する協議会」座長(平成17年度),21世紀COEプログラム委員,特色ある大学教育支援プログラム実施委員会副委員長,「専修学校の振興に関する検討会議」座長など文部科学省の教育行政に大きく貢献した。 |
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5) |
内閣府の「地球温暖化研究」,「自然共生型流域圏・都市再生技術研究」等の重点的研究開発を推進する「総合科学技術会議」専門委員(平成13年度)として,「自然と共生した都市・流域圏研究」座長を務め,環境イニシアティブの展開を牽引した。 |
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6) |
国土交通省の「国土審議会」委員および,「社会資本技術開発会議」委員(平成13年度)を務め,国土審議会北海道分科会長として北海道開発の基本方針を策定する責任者を務めている。さらに,首都圏整備部会長として,首都圏のさまざまな発展に尽力した。 |
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7) |
北海道総合開発委員会委員長,北海道功労賞受賞者推薦委員会委員長,北海道科学技術審議会会長,札幌市公害対策審議会会長,札幌市環境審議会会長等を務め,地方の教育行政・地域社会及び学術研究等の発展に多大な寄与をした。 |