北の息吹  (27)

チシマクモマグサ (Saxifraga merkii var. merkii

シラネアオイ
2008.07.20 大雪山北海岳
 個人的にはもっとも好きな高山植物の一つで,日本では北海道にしか分布しない。全体のサイズに比べて大きな花を,ほどよい密度で付けるのが好ましい。厚みのある葉は全縁で縁に毛が生えているが,白馬岳にある変種のクモマグサ(var. idsuroei)では葉に切れ込み がある。寒冷な環境下では全縁だった葉が温暖化に伴って切れ込みが入る傾向は他にも知られており,ヒマラヤの環境史を復元するのにも利用されているという。母種の和名にチシマという形容詞が付き,そこから分かれた変種の方には形容詞がないというのは,学名の概念からいうと変な感じがするが,記載された歴史を反映しているのであろう。
理事・副学長 岡田 尚武

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