訃報

名誉教授  ばやし はる  氏(享年89歳)

名誉教授 小林 晴夫(こばやし はるお) 氏

 名誉教授 小林晴夫氏は平成21年6月29日午前9時44分,敗血症のため満88歳でご逝去されました。ここに生前のご功績を偲び,謹んで哀悼の意を表します。
 同氏は,大正10年2月23日,東京都神田に生まれ,昭和19年9月北海道帝国大学工学部燃料工学科を卒業され,昭和22年4月同大大学院後期中退,同時に工学部理学第二講座に講師として勤務されました。昭和23年2月同助教授となり,昭和30年7月から昭和31年10月までアメリカ・マサチューセッツ工科大学,C.ワグナー教授の下へ客員研究員として出張されました。帰国後の昭和35年4月教授に昇任し,同氏が中心となって新設された合成化学工学科化学反応工学講座を担当され,爾来23年に亘り反応工学,とくに触媒化学及び触媒反応装置工学の研究・教育に従事されました。また,昭和42年10月から12月まで中華民国成功大学客員教授を務められました。
 昭和58年4月,ご停年1年前に室蘭工業大学学長に就任され,任期満了の平成3年3月まで3期8年間にわたり学長を務められたのち,平成3年4月室蘭工業大学名誉教授になられました。この間,昭和58年4月には北海道大学名誉教授の称号を授与されております。平成4年4月からは,北海道武蔵女子短期大学学長に就任され6年間務められたのち,平成10年3月,半世紀以上に及ぶ大学での研究・教育並びに管理運営の職から退かれました。
 同氏は研究面において,固体触媒反応の解析的研究方法の開発及び化学反応装置の開拓的研究を推進し多大の成果をあげられました。固体触媒反応関連の研究では,「気固接触反応の速度論的研究」,「過渡応答法の開発及び過渡応答法による気固接触反応の解析的研究」並びに「触媒の調製と設計に関する研究」を,また,化学反応装置に関する研究では,流動層反応装置の「一般化モデルの確立」及び「層内の気泡及び粒子の挙動」に関する理論的及び実験的研究,並びに「石炭の燃焼及びガス化に関する研究」を進められました。これら一連の独創的な研究に対して,昭和58年日本化学会賞が授与されました。また,産学共同を通じた地域の発展,活性化に対する多大な貢献により平成4年度北海道科学技術賞を受賞されました。
 北海道大学在職中は工学部評議員(昭和56年6月〜昭和58年3月)をはじめ,工学部施設委員長,汎用シミュレーター施設運営委員長,国際交流委員会委員などを歴任され,本学並びに本学工学部の管理運営に尽力されました。昭和58年4月,室蘭工業大学長に就任されてからは,同大学の教育研究組織の見直し,同大学工学部(第一部,第二部)及び大学院工学研究科修士課程の改組再編を行うとともに,同研究科博士前期・後期課程の設置に尽力されました。さらには,海外の大学と学術交流協定を締結し,研究者及び留学生の交流を振興するなど国際交流を推進し,大学の国際化に務める一方,学術振興・国際交流基金を設立し,学術交流の質的充実に尽力されました。平成4年4月からは北海道武蔵女子短期大学長に就任され,同大学の管理運営及び人間性豊かな学生の育成に力を注がれました。
 学会活動においては,日本化学会北海道支部長,触媒学会北海道地区代表及び触媒学会長などを歴任され,昭和60年に触媒学会名誉会員に選出されました。また,化学工学会においては,研究・教育部門委員会常任委員及び研究委員会委員長などを務められ,平成5年には,同会名誉会員に選出されました。さらに,国際交流活動においても,APCChE(アジア太平洋化学工学連合)実行委員や国際触媒会議実行委員などとして活躍される一方,欧米や中国における国際会議において広く活躍し,反応工学の分野の発展に大きく貢献されました。
 一方,大学外においては,学術審議会専門委員,国立大学協会第2常置委員会委員,図書館特別委員会委員及び学術情報特別委員会委員長などを歴任され,我が国の高等教育の運営に深く関わっておられました。また,北海道科学技術審議会委員,北海道先端技術推進会議委員,北海道テクノポリス検討協議会委員などを務められ,地域の発展に多大な貢献をされ,室蘭市公益功労者,室蘭市産業経済功労者としての表彰も受けられました。
 以上のように同氏は,化学反応工学の教育・指導・研究を通して,北海道大学及び同大学工学部等の運営に寄与し,我が国の化学工学,触媒化学界の重鎮として卓越した業績をあげ,我が国及び世界の関連領域の研究進展に多大な貢献をなし,平成9年4月29日には勲二等旭日重光章を受章されました。 ここに謹んで先生の御冥福を心よりお祈り申し上げます。

(工学研究科・工学部)


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