名誉教授 小幡 守氏は平成21年10月21日午前3時56分,79歳で逝去されました。ここに生前のご功績を偲び,謹んで哀悼の意を表します。
同氏は,昭和5年6月28日に北海道夕張市に生まれ,昭和28年3月北海道大学工学部建築工学科を卒業,引き続き同大学大学院工学研究科に進学,同30年3月同研究科建築工学専攻修士課程を修了,同33年3月同博士課程を単位取得退学された後,同年4月北海道大学工学部助手に採用され,同年9月同博士課程を修了されました。その後,昭和35年10月北海道大学工学部講師,同36年7月同助教授に昇任されました。昭和45年4月室蘭工業大学建築工学科教授に昇任され,構造力学講座を担当された後,同54年10月北海道大学工学部教授に配置換となり,建築工学科建築構造学第一講座を担当され,また,昭和54年10月から平成5年3月まで,北海道大学大学院環境科学研究科の教授を併任され,建築構造学を通じて環境工学分野の発展にも寄与されました。平成6年3月31日に北海道大学を停年により退職され,同年4月北海道大学名誉教授の称号を授与されました。退職後は,同年4月から北海学園大学工学部教授として招かれ,平成12年3月に退職されるまでの6年の間,引き続き建築構造学の研究・教育の発展に尽力されました。
同氏が大学院修士・博士課程において行った「矩形ラーメンの温度応力に関する研究」により昭和33年9月工学博士(北海道大学)の学位が授与され,引き続き,実測において認められた建物基礎部の移動を考慮した計算法を提案するなど,学位論文を発展させて行った温度応力に関する研究は日本建築学会鉄筋コンクリート構造計算規準解説にとり上げられ,また実際の設計(北海道大学工学部本館)にも応用されました。その後も同氏は,折板・シェル・大スパントラス構造の応力解析,鉄筋コンクリート造タワーの設計・解析,そして昭和43年十勝沖地震によって被害を受けた建物をモデルとした,床変形を考慮した建物の振動解析等に従事されました。また,置換トラス法により骨組み及びひび割れが生じた梁の2次元応力解析に関する研究を早くから始められ,この研究は,有限要素法による独立フーチング基礎の3次元解析及び鉄筋コンクリート造梁及び壁の2次元弾塑性解析に引き継がれ,現在に至っています。これらの研究の中で,独立フーチング基礎に関する研究においては,杭支持の場合についての実験結果と解析結果をひび割れ発生後の領域に渡って精力的に比較検討され,この結果に基づき,日本建築学会鉄筋コンクリート造構造計算規準の独立フーチング基礎の設計法は改訂されることとなり,この業績により昭和59年に日本建築学会賞(論文)が授与されました。前述の床変形を考慮した建物の振動解析の他,溶接時の残留応力解析,柱梁接合部の変形を考慮した骨組の解析法,上部構造の剛性を考慮した軟弱地盤の圧密沈下計算法の開発等の研究は幾人もの後進に引き継がれ,それぞれが多くの学位論文等として実を結びました。このように同氏は建築構造学の研究に長年従事し多くの優れた業績を挙げられました。
北海道大学在職中は,百年記念館運営協議会協議員,大学院制度委員会委員長,人事制度特別委員会委員,液体窒素供給運営委員会委員,教養部教官会議学部代表教官などを務められ,本学の発展や学制整備に貢献されました。
学外にあっては,日本建築センター高層評定委員,北海道建築士審査会委員及び同会長代理,二級・木造建築士試験委員,建築設備士試験委員,北海道特定開発行為審査会委員及び同会長,建築工事の計画届にかかわる審査委員,きたえーる設計コンペ委員,建築技術教育普及センター北海道支部長,北海道建築指導センター評議員など数多くの委員や長を歴任し,建築の専門家の立場から国や地域の建築行政に大きな貢献を果たされました。また,日本建築学会評議員,日本建築学会北海道支部長,日本建築学会理事,日本建築学会構造本委員会委員,日本コンクリート工学協会理事などの要職を歴任され,それぞれの学協会の発展に貢献したのみならず,我が国の学術・技術の全般にわたる発展に寄与されました。
以上のように同氏は,研究者として建築構造学分野で優れた研究成果を挙げられたに留まらず,教育者および指導者として学生の教育や大学運営に力を尽くされ,さらに全国および北海道における建築行政の円滑な執行,多くの学協会の運営・発展に尽くされました。
ここに謹んで先生の御冥福を心よりお祈り申し上げます。
(工学研究科・工学部)
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