サステナビリティ・ウィーク2009実行委員長
国際担当理事・副学長 本堂 武夫 |
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今年で3年目を迎える「北海道大学サステナビリティ・ウィーク」は,包括する学問分野と課題の多様さにおいて,他に類を見ないユニークな社会貢献・国際交流週間へと成長し,本学を代表する行事となりました。
ウィークは11月1日(日)に始まり,18日(水)までの約2週の間に28の企画が集中的に開催されました。当ウィーク前後に開催したプレ企画とポスト企画を合わせると,企画総数は33に及びます。今年の特徴は「多面的なアプローチ」と「具体的な課題の解決策の提示」そして「連携の深化」の3つでした。
ウィーク中に扱った課題は,気候・環境変動を筆頭に,技術革新,自然保護,健康,教育,人権と幅広く,それらの形態は国際シンポジウム,研究ポスターコンテスト,ディベート大会,市民向けの公開講座,展示,映画,カフェ,フェアトレードなど,テーマならびに手法両方で,多面的なアプローチが試みられました。このような手法を通じて,各企画では,持続可能な社会づくりに係わる具体的な課題が取り上げられて,最新の研究成果や活動成果にもとづく,解決への道筋が提示されました。
それぞれの企画を支えたパートナーは,海外の協定大学をはじめ持続可能な社会づくりに熱心な国内外の大学,さらにはWHO,国連大学といった国際機関,学術会議や各種学会といった学術コミュニティー,NPO,そして文部科学省や環境省,国土交通省といった政府関係機関など,国内外のあらゆるセクターに広がりました。総勢6,500人もの参加者と協力者に支えられて,今年のウィークを終了することができました。
今回は特に,協定校との連携を深めるため,2009年4月にすべての協定校の学長へ招待状を出したところ,結果的に16ヶ国28大学から参加があり,各校のサステナビリティというテーマへの関心の高さが伺われました。中でも,アジア工科大学(タイ),オウル大学(フィンランド),パランカラヤ大学(インドネシア),トリノ工科大学(イタリア),デラサル大学(フィリピン),ジュネーブ大学(スイス),アラスカ大学(アメリカ)とは,ジョイント・シンポジウムの開催に至りました。これに加え,ポートランド州立大学の学長には,オープニングシンポジウムにて「サステナビリティ実現に向けた取り組みにおける都市大学の役割」と題して基調講演をいただきました。他にも,ナイジェリア大学から学長が,パリ工業物理化学高等専門大学,北京大学,トリノ工科大学から副学長が当ウィーク期間中の行事に参加するために来訪しました。これを期に,将来に向けて「サステナビリティ」に係る連携のさらなる深化を図るべく意見を交わしました。
また昨年の反省から,学生の参加促進に力を入れ,オープニングシンポジウム開催日(11月2日)に,「第1回北海道大学サステナビリティ学生研究ポスターコンテスト」を開催しました。このコンテストには,初めての試みにもかかわらず72件の参加があり,持続可能な社会づくりに関連する課題に取り組む学生が多数いることを改めて実感しました。これら力作は学内外の審査員によって審査され,「第1回北海道大学サステナビリティ研究ポスター賞」を選出し,その夜に授賞式を執り行いました。また,「北大元気プロジェクト」に採択された学生企画の中から5団体が,サステナビリティ・ウィークに参加するなど,昨年と比較して学生の参加は確実に増える結果となりました。
期間中に実施した参加者アンケートを拝見しますと,当ウィークが北海道大学の特徴的な行事として認められつつあること,そしてさらなる発展が期待されていることを読み取ることができます。来年のサステナビリティ・ウィーク2010は,10月25日(月)にオープニングを開催し,約2週間の日程で開催する予定です。今年の開催を通じて明らかになった運営上の問題点を解決しつつ,より多くの協力者と参加者を得て,具体的な課題解決に向けた議論と行動を醸成する場を提供したいと考えております。 |
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*企画数・・・・・・・・・・・・・33
課題別企画数・・・・・気候・環境変動 19企画
・・・・・知的革命・技術革新・社会変革 16企画
・・・・・自然史・生物多様性・自然保護 13企画
・・・・・食糧・水・衛生・健康 12企画
・・・・・教育・人材育成・啓発 19企画
・・・・・人権・文化・平和 8企画
*参加者数・・・・・・・・・・・・・・8,440人
*大学間交流協定校からの参加 16ヶ国28大学(2009年11月1日現在24ヶ国76機関と同協定を締結している)
*ウェブサイト訪問者数 25,776人(2009年4月1日〜12月9日) |
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サステナビリティ・ウィーク2009オープニングシンポジウム
北海道大学「持続可能な開発」国際シンポジウム
〜持続可能なグローバル社会に向けた5課題解決への提言〜 |
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期 日:11月2日(月) 場 所:学術交流会館 |
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サステナビリティ・ウィーク2009のスタートを飾る行事として,11月2日(月)に本学学術交流会館において “北海道大学「持続可能な開発」国際シンポジウム〜持続可能なグローバル社会に向けた5課題解決への提言〜”を開催いたしました。
冒頭のオープニング・セレモニーでは,佐伯総長からサステナビリティ・ウィークのこれまでの経緯の紹介がありました。さらに,本学はサステナビリティ・ウィーク2009を通じて本学は,気候変動や感染症の拡大,水資源の枯渇といった地球規模の課題の解決に向けて,研究と教育,情報発信そして連携をこれまで以上に加速させるとの話がありました。その後の来賓挨拶では,はじめに文部科学省木曽功国際統括官から,今回の提言が持続可能な社会の構築に寄与することを文部科学省として大いに期待している旨が述べられました。次に札幌市の上田文雄市長から,札幌から持続可能な社会の実現に向けた取り組みを進めて行くことは大きな意義がある旨述べられました。
続いて行われた基調講演では,古くからの協定校であるポートランド州立大学からヴィム・ヴィヴェル学長をお招きして,「サステナビリティ実現に向けた取り組みにおける都市大学の役割」題したご講演をいただきました。講演では,サステナビリティの実現に向けたポートランド州立大学と地域社会,企業,公共団体との連携・協働事業について,「経済」「環境」「社会」という「3つのボトムライン」からのアプローチ法を紹介し,自らの経験を元に意見が述べられました。
今年は北海道大学「持続可能な開発」国際戦略本部設置5年目にあたる節目の年となることから,セレモニーに引き続き行われたオープニングシンポジウムでは,当国際戦略本部がこれまで集中的に取り組んできた5領域について,本学教員や国内外の研究者のみならず,漁業関係者,酪農家,新聞記者といった多様なステークホルダーが,以下の6つをテーマに,課題解決に向けた提言を行いました。また,これらの提言に対し,環境省の小林正明大臣官房審議官からは,環境政策の立案において,大学からの提言は重要であるとのコメントがありました。 |
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〈北海道大学からの提言〉 |
・人獣共通感染症対策の基盤はグローバルサーベイランスにある
−鳥,ブタ,そしてパンデミックインフルエンザを例に−
・水の国際開発援助に対する日本の役割
・東アジアの環境経済協力により世界のグリーンセンターを実現しよう
・食料とエネルギーの自給による日本農業の自立〜北海道モデルの提言〜
・オホーツク海の未来可能性に向けた国際コンソーシアム構築
・持続可能な社会づくりを担う高等教育機関のイニシアチブ |
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会場の様子 |
ポートランド州立大学ヴィム・ヴィウェル
学長の基調講演 |
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ポスターコンテストの様子 |
総長と記念撮影する受賞グループ |
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また,学生が今取り組んでいる研究を「持続可能な社会づくりへの貢献」という観点で見つめ直すよう推奨し,人類共通の課題解決に挑む逸材の輩出を目的として,本学としては初めて全学的なポスターコンテストを開催しました。全学から72枚のポスター参加があり,会場となった学術交流会館の1階ホールは参加者のプレゼンテーションで熱い熱気に包まれました。コンテストでは,審査員の投票よって「第1回北海道大学サステナビリティ研究ポスター賞」が選ばれました。
閉会の挨拶では,本堂武夫実行委員長が,今後も人類共通の課題に対し積極的に解決策を提示していく場を作っていくと述べて,シンポジウムは閉会いたしました。
次回のサステナビリティ・ウィークは,平成22年10月25日(月)から開催する予定です。 |
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【第1回北海道大学サステナビリティ研究ポスター賞受賞者一覧】 |
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1) |
実学探求分野 |
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最優秀賞: |
今榮 博司(農学院 博士3年) |
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優秀賞: |
大竹 裕子(医学研究科 修士2年) |
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優秀賞: |
陰 泳o(環境科学院 博士2年) |
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2) |
ブレイク・スルー研究 気候・環境変動分野 |
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最優秀賞: |
クリエン プリシラ(環境科学院 博士3年) |
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優秀賞: |
小菅 千絵(環境科学院 修士2年) |
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優秀賞: |
柏原 夕希子(環境科学院 博士3年) |
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3) |
ブレイク・スルー研究 知的革命・技術革新・社会変革分野 |
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最優秀賞: |
吉田 勝利(公共政策大学院2年),本山 千尋(公共政策大学院1年), |
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重松 平八郎(公共政策大学院1年),大辻 智彦(公共政策大学院2年) |
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(以上4名1チームで受賞) |
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優秀賞: |
オレンシオ ぺドクリス ミラレス(環境科学院 修士1年) |
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優秀賞: |
内田 有哉(国際広報メディア・観光学院 博士2年), |
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ダニー ヌー(情報科学研究科 博士2年) |
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(以上2名1チームで受賞) |
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4) |
ブレイク・スルー研究 自然史・生物多様性・自然保護分野 |
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最優秀賞: |
森 照貴(環境科学院 博士3年) |
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優秀賞: |
梶原 瑠美子(環境科学院 博士3年), |
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関口 郁恵(環境科学院 修士1年),石丸 夏海(環境科学院 博士2年) |
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(以上3名1チームで受賞) |
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5) |
ブレイク・スルー研究 食糧・水・衛生・健康分野 |
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最優秀賞: |
梶原 瑠美子(環境科学院 博士3年),関口 郁恵(環境科学院 修士1年), |
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石丸 夏海(環境科学院 博士2年) |
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(以上3名1チームで受賞) |
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優秀賞: |
三原 義広(環境科学院 博士1年) |
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6) |
ブレイク・スルー研究 教育・人材育成・啓発分野 |
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最優秀賞: |
吉田 勝利(公共政策大学院2年),本山 千尋(公共政策大学院1年), |
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重松 平八郎(公共政策大学院1年),大辻 智彦(公共政策大学院2年) |
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(以上4名1チームで受賞) |
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優秀賞: |
オレンシオ ぺドクリス ミラレス(環境科学院 修士1年) |
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優秀賞: |
三原 義広(環境科学院 博士1年) |
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7) |
ブレイク・スルー研究 人権・文化・平和分野 |
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最優秀賞: |
吉田 勝利(公共政策大学院2年),本山 千尋(公共政策大学院1年), |
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重松 平八郎(公共政策大学院1年),大辻 智彦(公共政策大学院2年) |
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(以上4名1チームで受賞) |
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優秀賞: |
小菅 千絵(環境科学院 修士2年) |
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8) |
グッド・コミュニケーション分野 |
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最優秀賞: |
朱 琳(国際広報メディア・観光学院 修士1年) |
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優秀賞: |
グン グン ヒダヤット(農学院 博士2年) |
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9) |
魅力あるポスター分野 |
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最優秀賞: |
松村 洋子(農学院 博士1年) |
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優秀賞: |
内田 有哉(国際広報メディア・観光学院 博士2年), |
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ダニー ヌー(工学研究科 博士2年) |
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(以上2名1チームで受賞) |
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優秀賞: |
朱 琳(国際広報メディア・観光学院 修士1年) |
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2009年アジア太平洋信号処理連合学会アニュアルサミット・国際会議 |
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期 日:10月4日(日)〜10月7日(水)
場 所:学術交流会館(10月4日),札幌コンベンションセンター(10月5日〜7日)
代表者:情報科学研究科 教授 宮永 喜一 |
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アジア太平洋信号処理連合学会(APSIPA)は,信号処理論及び情報処理・通信に関する学問,技術の調査,研究及び知識の交換を行い,これにより学問,技術及び関連事業の振興に寄与することを目的として2009年4月に設立された学会です。事業として信号処理論及び情報処理・通信に関する講演会,討論会及び見学会等の開催,学術の調査研究,学問,技術の奨励及び普及事業,専門図書及び雑誌の刊行等を行う予定です。
10月4日(日)から開催したAPSIPA ASC 2009は,APSIPA学会が主催する最初の国際会議であり,信号処理,情報処理技術,情報通信の最先端技術の報告とそれらに関する研究討論を行いました。これらのテーマは,今日の電気通信における技術開発,製品開発,社会・産業基盤の構築において必要不可欠なものであり,特に我が国の電気通信に係わる研究・技術者に対する研究発表の機会を提供し,技術調査や研究交流の場としてもその役割を果たしました。
17カ国から約260名の参加者登録のあった会議であり,「信号処理・情報処理・情報通信」の分野における,多くの著名な研究者が集まり,研究成果を発表しました。2つのプレナリー・キーノート・スピーチ,6つのチュートリアルセッション,3つのパネルセッション,20の一般オーラルセッション,10のポスターセッションを,4日間で実施しており,最先端研究開発に関する有益な討論が実施されました。 |
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パネルセッションの様子 |
ポスターセッションの様子 |
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第9回物理探査学会国際シンポジウム |
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期 日:10月12日(月・祝)〜10月14日(水)
場 所:学術交流会館
代表者:理学研究院附属地震火山研究観測センター 教授 茂木 透 |
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各種計測手法を利用して地下のイメージングを行う物理探査技術は,天然資源開発,社会基盤整備,環境,自然災害などの分野で重要な役割を果たしており,持続可能な社会構築のための基幹技術としての重要性が増しています。
10月12日(月・祝)から開催した第9回物理探査学会国際シンポジウムでは,探査技術によって得られた結果をどのように解釈するか,また,持続可能な開発という社会的課題にどのように貢献するかというテーマに重点を置き,我が国の研究開発成果の海外への情報発信,海外学会関係者,技術者との情報交換の場を提供する目的で開催されました。
シンポジウムでは,外国人69名を含む193名の参加者があり,海外からの招待者1名を含む3名の著名な研究者による基調講演及び国内外からの134件の一般講演が行われました。さらに,地球を探る先端技術を知ろう−持続可能な開発のために−というテーマで,海外参加者による各国の取り組みについて17件のポスター展示や海外学会や企業による10件の技術展示が行われました。これらの学術的活動を通して,我が国の研究開発成果の海外への発信,海外専門家との知識,技術の情報交換が行われ,物理探査技術の将来へ発展や持続可能な開発への貢献について,飛躍的な進歩が図られることが期待されます。
今回は,特に国際シンポジウムでは青少年の育成と社会の啓蒙への取り組みとして「見て,ふれて,考える−美しい私たちの住みか地球」と題してフィールド巡検や市民向け展示を行いました。国際シンポジウム開始前日の10月11日(日)に,札幌近郊の小学校高学年・中学生23名及びその親18名が参加して現地見学会を有珠火山及び昭和新山で開催しました。さらに,シンポジウム初日も祝日であったので,社会における物理探査関連技術に対する理解を深めるため基調講演や諸展示を市民にも公開し研究者との交流を図りました。これらにより,持続可能な社会実現のための基幹技術としての物理探査技術が市民にも広く理解され,次世代にも継承されることが期待されます。 |
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現地見学会の様子 |
賑わうポスター発表会場 |
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学生提言「グリーン・ニューディール」第6回ディベート大会 |
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期 日:10月24日(土)
場 所:人文・社会科学総合教育研究棟
代表者:経済学研究科 准教授 橋本 努 |
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今年で第6回目を迎えた経済学部主催ディベート大会は,テーマを新たに「グリーン・ニューディール〜北海道への提言〜」とし,初めてサステナビリティ・ウィークに参加しました。出場チームも毎年増え続け,今年は13チームがエントリーしました。残念ながら新型インフルエンザの影響で,出場を断念するチーム,メンバーに欠員が生じるチームなどアクシデントもありましたが,それぞれのチームは自分たちが考えた提言を,知力をつくして繰り広げました。
試合は,最初に各チーム10分ずつのプレゼンテーションを行い,その後20分にわたって互いに質疑応答し,論戦を展開しました。いずれのチームも今年のテーマにそって,「北海道はいかにして環境政策を進めるべきか」について独自の提案を示しました。
当日は判定係や司会役を教員や院生,ディベート大会を経験した学部生等に務めてもらいました。接戦も多く,判定協議が長引くこともたびたびでした。また,今年からこの協議の時間をオーディエンスからの質問の時間に充て,本番とはまた別の切り口で,多くの質問が出場チームに寄せられました。
優勝チームは経済学部宇田ゼミからのチームUNO。準優勝は法学部・歯学部・工学部の混成チームWOSでした。
本行事は学部生と院生が一緒に作り上げる行事であり,他学部からの出場も定着してきています。本行事を通じて,学部生・院生両者ともコミュニティー能力・プレゼンテーション能力を研く良い機会となり,また,今回のテーマは今最も思考し精査し提起すべきトピックと捉えています。来年もまたこれまで同様,学生たちに思考を喚起させる行事にしていきたいと考えています。 |
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プレゼンテーションを行う出場チーム |
出場チームとオーディエンスでの質疑応答の様子 |
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CLARK THEATER 2009 |
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期 日:10月30日(金)〜11月3日(火・祝)
場 所:クラーク会館
代表者:工学部3年,北大映画館プロジェクト実行委員会2009副実行委員長 劉 宏輝 |
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皆様のご声援の下,今年も無事にCLARK THEATERのフィナーレを迎えることができました。この場をお借りして今一度ご来場いただいたお客様,ご支援いただいた関係者各位に感謝の意を表したいと思います。誠にありがとうございました。今年のCLARK THEATERは10月30日(金)からサステナビリティ・ウィーク2009への学生企画としての参加に始まり,オープニングでの『つみきのいえ』上映,世界有数のアウトドア映画祭であるバンフ・マウンテンフィルム・フェスティバルの特集プログラム上映や特別企画「不都合な真実の先へ」に表れているように,映画館としての「環境問題」というテーマへのアプローチを実現できたのではないかと考えています。
特に北海道大学「持続可能な低炭素社会」プロジェクトチームと環境省北海道地方環境事務所との共催で行った「不都合な真実の先へ」には多くのお客様にご来場いただき,映画『不都合な真実』の鑑賞と併せて興味深いゲストの方々のそれぞれのお話に耳を傾けていらっしゃいました。そして更に嬉しいことに,連動して環境省主催で行った「地球温暖化政策セミナー」にも大勢のお客様に参加していただき,このイベントを企画した当初の目標通り,地球温暖化という問題に対して,映像という比較的入りやすい入口からのアプローチで一般の方と一緒にまずは「考える」ことから始めるイベントを作り上げることができたと思います。
今後も北大映画館プロジェクト実行委員会は,様々な切り口で教育機関としての大学に常設映画館が存在することの可能性を私たちの活動を通して訴えていければと思います。 |
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トークセッションの様子 |
多くの観客が詰めかけた会場 |
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北大映画館×北大低炭素PT×環境省地球温暖化政策セミナー |
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期 日:11月1日(日)
場 所:学術交流会館
代表者:環境省北海道地方環境事務所 環境対策課課長補佐 安田 將人 |
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環境省北海道地方環境事務所では,北海道大学低炭素プロジェクトチーム,北大映画館プロジェクト実行委員会2009の共催を得て,11月1日(日)に「地球温暖化政策セミナー」を開催しました。本セミナーの開催に先立ち,北大映画館プロジェクト実行委員会2009による映画「不都合な真実」の上映とトークセッションが行われ,セミナーの参加者の多くは映画を鑑賞し,地球温暖化問題についての問題意識を持った上での参加となりました。
セミナーではまず,環境省北海道地方環境事務所の竹安一統括環境保全企画官からの挨拶の後,環境省環境保健部環境リスク評価室長の塚本直也氏からIPCC(気候変動に関する政府間パネル)第4次報告の内容についての講演がありました。講演では,気候システムの温暖化には疑う余地がないこと,20世紀半ば以降の世界平均気温の上昇はその大部分が人間活動による温室効果ガスの増加によってもたらされた可能性が非常に高いこと,地球温暖化の影響は既に現れていることなどが紹介されました。
続いて北海道大学公共政策大学院特任教授の深見正仁氏から,国内外の地球温暖化対策に関する政策の動向について紹介がありました。その後は約80名の参加者との質疑応答を行い,活発な意見交換が行われました。質疑応答では塚本氏,深見氏に加えて北海道大学大学院地球環境科学研究院特任准教授の藤井賢彦氏も回答者として加わり,参加者からは「森林が豊かな北海道の強みを生かすために環境省と林野庁が協力して森林吸収源の認証やカーボン・オフセットの取組を進めるべき」,「来年度以降の自動車税制はどうなるのか」などの質問・意見が出されました。セミナーに先立って行われた「不都合な真実」の上映とも相俟って,地球温暖化問題について考える機会を参加者に提供することができました。環境省北海道地方環境事務所では,今後も地球温暖化問題を始めとした環境問題の市民の方々の理解を深めるために,様々な取組を進めていきます。 |
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ポスター |
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北大から世界へ!〜国際キャリアパスの入り口へ〜 |
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期 日:11月2日(月)
場 所:学術交流会館
代表者:国際交流室 室長 本堂 武夫 |
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国際交流室及び留学交流課は,11月2日(月)に協定大学のプロモーショナル・イベントを初めて開催しました。
本行事は,サステナビリティ・ウィークヘの参加を機に来日した協定大学の学長・教員等に自身の大学を本学学生にアピールする機会を提供する目的で企画したものです。
参加大学は,アメリカ・ポートランド州立大学,同・テキサス大学健康科学センター,フランス・パリ工業物理化学高等専門大学,イタリア・トリノ工科大学,中国・浙江大学,ナイジェリア・エボニ州立大学,同・ナイジェリア大学の7大学でした。
当日は,各大学がサスティナブル・ディベロプメント(SD)についてどのような教育を行い,学生が授業や授業外でSDにどのように関わっているかをそれぞれの大学より発表していただきました。
協定大学の教員等を説明者に招いての留学説明会は過去に数回実施したことがありますが,今回のように7大学が一同に会する企画は初めてでした。会場には,留学生を含め80名程の学生が詰めかけ,熱心に説明に聞き入っていました。
イベント終了後に参加学生に実施したアンケートでは評価が高く,また参加大学教員達も自身の大学を直接学生達にアピールし,学生の反応を肌で感じられたことに非常に満足感を覚えたようです。
国際交流室及び留学交流課は,学生の皆さんに留学をより身近なものと感じてもらうため,今後も様々な形で情報提供に努める所存です。メール(ryugaku@academic.hokudai.ac.jp)での留学相談も受けつけていますので,留学希望の学生にご紹介いただければ幸いです。 |
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ポートランド州立大学学長からの大学紹介 |
協定大学留学生からの説明 |
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第4回 結〜yuiプレゼンツ フェアトレードフェア
講演会「東ティモールとフェアトレード:公正な社会への一歩」 |
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フ ェ ア 期 日:11月2日(月)〜11月14日(土) 場 所:北海道大学生活協同組合 生協会館店
講演会 期 日:11月10日(火) 場 所:人文・社会科学総合教育研究棟
代表者:教育学部3年,国際協力学生団体「結〜yui」プロジェクトリーダー 小林 里菜 |
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フェアトレードフェア
今回で4回目の開催となった北海道大学生活協同組合と共催のフェアトレードフェア。商品については季節を意識した商品を多く仕入れ,冬季限定のチョコレートにも力を入れました。
また,今年の夏にフィリピンスタディーツアーを開催し,その際自分たちで直接仕入れてきた商品も販売。これまで以上に「顔の見える」商品展開に努めました。商品販売を行った特設ブースでは,「フェアトレードの仕組み」や「結〜yui」についてのパネルも設置。「最も身近な国際協力」とも言われるフェアトレードや,学生という立場で国際協力に関する活動を行う私たちの団体の活動をより多くの人に知ってもらおうと企画しました。4回目の開催であることや,売上,お客様との交流から,徐々に「フェアトレード」を理解してくれる人が増えていると感じられるようになってきました。これからも,1人でも多くの方に「買い物」という日常の行動が世界と身近につながっているということを実感していただけるようこの活動を継続していきたいと考えています。
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 | 北大生協会館店での
フェアトレードフェア |
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講演会「東ティモールとフェアトレード:公正な社会への一歩」
商品販売やパネル展示だけではわからない部分,もう一歩踏み込んでフェアトレードや国際協力について知る機会を提供したい,という思いで昨年に引き続き2回目となった講演会。今回は,ほっかいどうピーストレードから越田清和氏をお招きして開催しました。実際に東ティモールコーヒーを用いたフェアトレードを立ち上げ,現在も運営している最前線のお話で,運営スタッフにとっても勉強になる会となりました。しかし,広報活動や開催日時の設定など諸々の事情によって満足のいく集客はできませんでした。今後は,今回の反省を生かしながらフェアトレードフェア同様講演会の開催も定着させていきたいと考えています。 |
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講演会の様子 |
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ジョイントシンポジウム「都市化と健康〜2010年世界保健デーに向けて〜」 |
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期 日:11月3日(火・祝)
場 所:学術交流会館
代表者:医学研究科 教授 玉城 英彦 |
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世界保健機関は2010年4月7日の世界保健デーのテーマを「都市化と健康」と定め,世界各地において関連活動を開始しています。世界の人口の半分は都市部に集中し,2050年にはこれが7割に増えると予想されています。このように,人々の健康に関わる課題において,都市化の視点は不可欠です。
11月3日(火)に開催した今回の企画は,この「都市化と健康」に対する課題意識の啓発と来たる世界保健デーへの参画の推進を期して,医学研究科・国際保健医学分野が,世界保健機関神戸センター及び本学大学間協定校であるジュネーブ大学(スイス),デラサル大学(フィリピン)との連携により,国際シンポジウムを実施したものです。
シンポジウムは,前半の招待講演並びに,後半の会議参加者を交えたグループ討論及び,それに基づく全体討論の2パートにより構成されました。
前半では,WHO神戸センター,東京医科歯科大学,北海道大学からの講演により,都市化と健康の課題と2010年世界保健デーについての趣旨紹介や活動啓発が行われました。
後半のグループ討論では,1)都市に住む市民の健康問題,2)2010年世界保健デーに実施してほしいイベントの2点について議論し,全体討議において各グループリーダーからの発表が行われましたが,「都市化と健康」の具体的な課題として,「うつ」や自殺などの精神的な問題や,公害や交通事故などの環境問題,そして健康を維持するためのコストが主たる課題であることが,各グループからの意見として示されました。また,これに対する世界保健デーとしての活動提案についても,「都市環境」での市民の幸福の希求,運動不足の解消や,エコカーの普及など,多岐にわたる都市の健康問題に対する取り組みのありようが活発に提案されました。
このように本会議は,都市の健康を担う主役は市民という観点から,複雑多岐なこの課題に対する取り組み方を参加者もより積極的に考えられるよう企図して運営を行いました。この成果は来たる2010年世界保健デーへ向けた活動,更には持続可能な社会の実現の一助となるよう今後展開していきたいと考えています。 |
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グループ討論の様子 |
参加者一同 |
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国連大学グローバル・セミナー北海道最終記念セッション
持続可能な社会の担い手となるために
−2015年までに国際社会が達成すべきミレニアム開発目標の現状を知る− |
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期 日:11月3日(火・祝)
場 所:学術交流会館
代表者:「持続可能な開発」国際戦略本部 |
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11月3日(火・祝)に,国連大学グローバル・セミナー北海道最終記念セッションを,学術交流会館において開催しました。
このセミナーは,国連大学が主催するもので,国連の役割や人類が直面している地球規模の問題について,学生や社会人に関心と問題意識を持ってもらうため,全国各地で実施されていますが,北海道セッションは,第9回となる今年をもって終了します。その最終記念セッションを,本学との共催で札幌キャンパスにて開催しました。全国から定員を超える応募があり,本学学生21人を含む48人の学生が参加しました。
サステナビリティ・ウィーク2009期間中に開催することとなったため,セッションテーマは「持続可能な社会の担い手となるために〜2015年までに国際社会が達成すべきミレニアム開発目標の現状を知る〜」と設定されました。
ミレニアム開発目標 (MDGs)とは,21世紀の国際社会が喫緊に取り組むべき人類の目標として,国際連合が2000年に掲げたもので,2015年までに達成すべき8つの目標と18のターゲットが定められています。このセミナーでは,MDGs 達成は持続可能な社会の実現に向けた試金石であるとの認識の下,この達成に向けて尽力している方々を講師にお迎えしました。
午前中は2つの基調講演を行いました。はじめに,「サステナビリティを目指す国連大学の取り組み」と題して国連大学副学長の武内和彦氏から,次に「ミレニアム開発目標:21世紀の人間開発の実現に向けて」と題して,国連開発計画東京事務所の西郡俊哉氏からお話いただきました。
午後には,以下のような6つの分科会に分かれ,それぞれの担当講師と活発な質疑応答を行いました。
1.貧困と飢餓の削減…NGO「動く→動かす」事務局長 稲場雅紀氏
2.初等・中等教育と男女平等…JICA企画役小泉高子氏
3.保健・医療…(財)ジョイセフ アドボカシー・グループ チーフ矢口真琴氏
4.水・衛生…NPO法人日本水フォーラム ディレクター 井上智夫氏
5.環境…JICA調査役 波多野誠氏
6.グローバル・パートナーシップ…国連開発計画東京事務所 西郡俊哉氏
アンケートからは,多くの参加者がMDGsの最前線で活躍する人との質疑応答を通じて新しい発見をしたことや,今後の研究や生活に大きな刺激を受けたことが窺われました。また,MDGsについてもっとよく知りたい,分科会の時間をもっと長く取って欲しかった,このような現場の声を聴くセミナーを再び開催して欲しいなどの意見が多く寄せられました。
講師の方々からは,参加者の積極性に目を見張ったこと,1つの分科会を8人と少人数にしたことや,多様な学部・大学院の学生を一つの分科会に入れて多様な議論の場を創出したことを高く評価していただきました。さらに,自らの活動について学生とじっくりと話し合うことのできるこのような機会をまた開催して欲しいとの要望が寄せられました。 |
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議論に盛り上がりを見せた分科会 |
グローバル・セミナー集合写真 |
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第2回センチネル・アース国際シンポジウム
−市民向け講座,衛星データ・衛星画像データの高度利用研究− |
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期 日:11月3日(火・祝)〜11月5日(木)
場 所:学術交流会館
代表者:情報科学研究科 教授 本間 利久 |
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シンポジウム参加者数は,国内121名,海外28名(10ヶ国)の総計149名でした。
11月3日(火)の市民向け講座では,「地球温暖化と北極異変」と「宇宙から見る地球−人工衛星の利用−」について,動画を交えた最新データを基に一般参加者に分かりやすい講演を行いました。アンケートの結果,参加者の80%以上が本企画に満足と回答していました。
11月4日(水)の全体セッションでは情報科学研究科のJAXA連携講座の教育研究活動の紹介がされた後,リモートセンシングの応用として熱帯サイクロトロンのダイナミックスに関する洞察と新発見についての講演が行われました。陸域観測技術衛星(ALOS)とその応用(災害,図化と農業)セッションでは,ALOSのミッション紹介,アジアにおける技術移転のためのALOS利用,地理学への応用,ALOSの農業観測と災害モニタリングへの応用,北海道における地理情報システム(GIS)による農業と環境情報の共有と開示に関する講演が行われました。地球環境変動観測ミッション(GCOM)とその応用(海洋と大気)のセッションでは,GCOMのミッション紹介,漁業・水産文化への社会的応用,海洋表面のベクトル風の観測,アジア地域の大気汚染の観測に関する講演が行われました。
11月5日(木)のGCOMとその応用(陸域と極圏)では,北極分水嶺の水資源の貯蔵変化,地球規模の土壌水分のモニタリング,陸域植生変化,海氷変化の早期発見に関する講演が行われました。最後のセンチネルアジア(アジアの原野火災)セッションでは,セッションの目的とセンチネルアジアの概要紹介,火災危険度指数,火災検知アルゴリズムの開発,火災延焼予測とリスク解析,火災ホットスポット情報伝達,先進的な火災の制御と消火に関する講演が行われました。
地球環境の変化の観測において,人工衛星によるリモートセンシング技術の重要性が認識されたと同時にと今後の新しい利用拡大と一般市民への普及の重要性の共通認識が深まりました。そのため,第3回センチネル・アース国際シンポジウムを開催し,リモートセンシングとGISの統合を目指したより緊密な国際連携のネットワーク形成の実現をはかることとしました。 |
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シンポジウム会場 |
講演会の様子 |
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実験展示:統合科学が解明する「洞爺湖・有珠火山地域の過去と未来」 |
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期 日:11月4日(水)〜11月13日(金)
場 所:総合博物館
代表者:総合博物館 館長 馬渡 駿介 |
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「サステナビリティ・ウィーク2009」は,人類社会の持続可能性を北海道大学が研究・教育で支えようとの意図が元になっています。
しかし,人類社会の持続を考える前に北海道大学の持続可能性を考える必要があります。星の数ほどある日本の大学が研究・教育の質でしのぎを削っている中,ノーベル賞を狙える東京大学,京都大学に対抗し,「お取りつぶし大学リスト」に載らないために本学が取り得る策は「統合科学」である,と考えた北海道大学内外の有志は「北海道大学統合科学コンソーシアム」を作りました。研究者の個人プレイでノーベル賞を狙う戦略ではなく,研究者をたくさん集め,異分野の研究を統合することで他大学と差別化を図れます。様々な研究をある方向で統合すると,新しい研究の切り口,埋もれていた成果,思いがけない応用,将来の方向等々が見えてきます。本学が「研究者の寄せ集め場」であることを脱し,そのような「統合の場」として機能すれば,社会の持続を支える者としての北海道大学の持続性が保証されます。
11月4日(水)から開催した本企画は,「北大統合科学」をパッケージとして展開するための最初の試みとして,「洞爺湖・有珠火山地域の過去と未来」をテーマに,様々な分野の研究を展示し,その統合を考えるものです。11月8日(日)と13日(金)にポスター展示会と講演会を開催しました。参加者はそれほど多くはありませんでしたが,これまで顔を合わせたことのない異分野の研究者,学生,一般人がコーヒーカップ片手にフリートークを行い,学問統合から何が見えてくるかを議論しました。講演会は2回とも時間オーバーするほど議論が盛り上がる興味深いものでした。手前味噌ながら「統合科学」としての各学問の接点が何となく見えてきたような気がしました。
今後は別のテーマで「北大統合科学」を盛り上げて行くつもりです。 |
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講演会の様子 |
学生・大学院生のポスター発表の様子 |
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国際シンポジウム「持続可能な低炭素社会を目指して」
〜グリーン・ニューディールとグローバルチェンジ〜 |
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期 日:11月4日(水)〜11月5日(木)
場 所:学術交流会館
代表者:公共政策大学院 教授 深見 正仁 |
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11月4日(水)は,世界のグリーン・ニューディール政策について日中韓欧米と国連環境計画の経済学者を招いて講演及びパネル・ディスカッションを行うとともに,6名の本学協定校の大学教授等を招いて各国の低炭素社会に向けた環境・経済政策についてご講演をいただきました。世界各国における低炭素社会に向けた取組が具体的事例を挙げながら明らかにされ,大変意義深いシンポジウムとなりました。
公共政策大学院においては,今後とも,参加各国の研究者と連携を取りながら,グリーン・ニューディール政策を中心として低炭素社会づくり政策に関する調査研究を継続することとしています。
5日(木)は,地球環境変動(グローバルチェンジ)について,1)気候変動が生態系に及ぼす影響とフィードバック,2)陸海における生物・化学システム,3)グローバルチェンジにおける食料資源,及び4)水資源の4つのセッションを順次開いて,8名の海外研究者,10名の日本研究者による講演,討論を行いました。その他,学生等のポスターセッションを実施し,自然科学から社会系への問いかけも含んだ学際的なシンポジウムとなりました。地球環境科学研究院を中心とする本シンポジウム実施グループは,緊急課題を解明するためのキーメカニズムを公表し,国内外の参加研究者と連携を取りながら,地球環境変動の科学的究明と対策技術の確立を図っていくこととしています。 |
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ミランダ・シュロアズ ベルリン自由大学・
環境政策研究所長による基調講演 |
馬中 中国人民大学環境学院院長による
基調講演 |
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国際シンポジウム「気候変動による地域固有システムへの影響」 |
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期 日:11月6日(金)
場 所:学術交流会館
代表者:地球環境科学研究院 准教授,グローバルCOE“統合フィールド環境科学の教育研究拠点形成”拠点リーダー 山中 康裕 |
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本シンポジウムでは,地球温暖化に代表される地球規模の気候変動によって世界各地で生じる様々な環境の変化について議論することを目的とし,特にIPCC第4次報告書以降に得られた最新の知見を発表しました。
ここで扱う「地域固有の環境システム」は,地球温暖化の影響,生態系変化の程度,雪氷圏の変化,地球化学循環の変化,現地の人間活動の介入度などそれぞれの地域によって大きく異なっているため,地域スケールの影響評価が必要です。このような理由から,環境改善のための対策や適応策は,各地域に特化した提案が必要となります。
発表は,グローバルCOEプログラムで対象とする海外3地域(ロシア,モンゴル,インドネシア)からの招聘研究者と,学内の研究者,及び国内外からの招待講演による構成としました。ロシアからは永久凍土と密接に関係する北方林の重要性が指摘され,モンゴルからは草原劣化の定量化や周氷河地形の変化についての報告がありました。インドネシアからは人間による開発後の深刻な泥炭地火災とそれによるメタン放出について報告がありました。
また,地球規模の気候と,各地域の関係を明確にするため,全球気候モデルの研究者による報告があり,地域気候を調べる上での問題点や課題が示されました。
総合討論では,上記のような広い専門分野間の連携,モデリングや観測など異なる研究手法,異なる研究対象領域を総合的に捉えるための議論が行われました。IPCC第4次報告時点では気候予測のモデルで表現されていない現象(永久凍土の変化や泥炭地からのメタン放出)についてのコメントがあり,気候モデルでの表現方法についてのアイディアが示されました。さらに,「各地域での政策決定に有用な気候予測とはどうあるべきか」という,気候変動への適応と持続可能な社会実現へ向けた議論が行われました。 |
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会場での議論 |
学生によるポスター発表の様子 |
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第2回 セラミド研究会 学術集会 |
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期 日:11月6日(金)
場 所:学術交流会館
代表者:先端生命科学研究院 特任教授 五十嵐 靖之 |
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11月6日(金),札幌Bio−S(文部科学省知的クラスター創成事業)との共催で第2回セラミド研究会学術集会が海外から2名の学者を含む6名の招待講演者,19名の一般講演者による口頭発表を中心として開催され全国から100余名が参加しました。
海外からの招待講演はシンガポールデュークNUS医学大学院のScott Summers先生による「糖尿病と心疾患におけるセラミドの役割」,米国カルフォニア大学のYoshikazu Uchida先生による「皮膚に特徴的なセラミド分子種」で,それぞれ世界の最先端の研究が紹介され参加者に感銘を与えました。
また,帯広畜産大学の木下幹朗先生による「植物・酵母由来のスフィンゴ脂質の食品機能性」,本学医学研究科の秋山真志先生の「セラミドは皮膚バリアの要」,大阪大学の石井優先生の「S1Pによる骨形成制御」,高砂香料工業(株)の石田賢哉先生による「光学活性セラミドの開発と機能特性」などの招待講演,更には産業技術総合研究所の田坂恭嗣先生によるランチョンセミナー「遺伝子組換え植物による動物型スフィンゴ糖脂質の生産」など,スフィンゴ脂質,セラミドを巡って注目を集めている新しい研究が次々に紹介されました。一般講演にも多数の優れた発表があり,9時半から18時までぎっしり詰まった学術会議となり,懇親会にも多数参加があり,懇親を深めました。
近年,機能性食品による健康増進,セラミドの皮膚機能亢進やがん予防などの生理機能に関心が高まってきていますが,今回の学術集会はそうした関心に対してサイエンスベースのエビデンスに基づく発展を目指すもので,参加した多くの企業研究者にもその方向を示す会となりました。今後もその更なる発展を目指して,学術集会,国際食品素材/添加物展・会議(ifia)での取り組み,ホームページを通じた広報活動等を継続して展開していくことが決められました。 |
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熱気に包まれた会場の様子 |
Summers先生(シンガポール デューク
NUS医学大学院)による講演 |
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国際シンポジウム「明日の海と食を守る水産海洋サステナビリティ学」 |
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期 日:11月7日(土)
場 所:水産科学研究院マリンサイエンス創成研究棟
代表者:水産科学研究院 教授 帰山 雅秀,教授 斎藤 誠一 |
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11月7日(土),本国際シンポジウムは,地球上約29億人の人類が食料として利用している水産資源とその生産母体である海洋生態系を将来ともに世代間衡平性に基づき確実なものとする「明日の海と食を守る」ために,また国際的な協調性に向けた環太平洋の研究教育ネットワークを構築する目的のために開催されました。参加者は我が国を含め7カ国(カナダ,アメリカ合衆国,中国,韓国,インドネシア,フィリピン及び日本)の研究者,行政担当者,市民及び学生の延べ123名に及びました。主な内容と成果は次のとおりです。
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1. |
招待講演:
ウッシ・サミラ(UBC)「水産食料と海洋生態系の保全のための空間生物経済学」
張昌翼(釜慶大学)「生態系ベースの漁業評価と予測」
ウィリアム・スモーカー(UAF)「アラスカさけ漁業における持続可能性」
譚洪新(上海海洋大学)「中国における水産養殖の現状と最近の進歩」 |
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2. |
北海道大学水産科学研究院の教員による講演:
桜井泰憲「次世代への海洋生態系保全と水産食料安全保障−知床世界自然遺産地域の水産生態系アプローチと順応的管理に関する事例研究」
吉水 守「サケ孵化放流事業における稚魚の健康管理と安全なサケ生産」
帰山雅秀「海洋生態系保全と水産食料安全保障のための持続可能性」 |
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3. |
パネルディスカッション コーディネイター:齊藤誠一(北海道大学水産科学研究院)
袁 春紅(北海道大学)「プランクトン食魚類ハクレンの養殖と生産−中国における内水面漁業の持続可能な発展のために」
エドパリナ・リザリータ(UNU)「フィリピンにおける水産養殖インパクト軽減のための管理選択肢」
ラディアータ・I・ニョオーマン(北海道大学)「持続可能な養殖業のための空間情報システムアプローチ」
石村学志 (北海道大学)「気候変動に影響される多国間共有水産資源管理の直面する問題,そして,持続的管理に向けた挑戦−自暴自棄なPacific sardine資源管理ゲーム分析と政策提言」 |
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今後の展開として,次世代のために食と海を守るためには順応的管理と予防原則に基づく生態系アプローチ型リスク管理が最も重要であり,海洋生態系の環境収容力をよく理解し,食と海洋生態系を守るための新たな生態学的水産海洋学へのパラダイムシフト,食育等の教育改善を提言しました。 |
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パネルディスカッションの様子 |
講演者・主催者一同 |
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地球交響曲−ガイアシンフォニー−第五番上映会 & 龍村仁監督特別講演会 |
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期 日:11月7日(土)
場 所:クラーク会館
代表者:環境科学院 修士2年 新井 秀典 |
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11月7日(土)に開催した本企画では龍村仁監督作品「地球交響曲−ガイアシンフォニー−第五番」の上映会と,龍村監督による特別講演会を実施しました。「地球交響曲−ガイアシンフォニー」は科学・スポーツ・音楽など様々な分野で活躍している人々にスポットを当て,地球や自然,環境をテーマに彼らの生き方,考え方を捉えたドキュメンタリーシリーズです。その中でも今回上映した「第五番」は“全ての存在は繋がっている”ということをコンセプトに制作された作品です。本作品には織物作家の石垣昭子さん,哲学者であり,音楽家でもあるアーヴィン・ラズロー氏が出演され,自然に寄り添いながら生きること,混沌とした現代を前向きに生きることを見る者に投げかけています。他にも元宇宙飛行士のラッセル・シュワイカート,14世ダライ・ラマ法王らも出演しており,健やかな生命,豊かな世界の誕生に伴う痛み,苦しみの意味について説いています。
龍村仁監督による講演会では,地球交響曲を撮り始めてからの経緯や,現在編集中である「第七番」の制作エピソード,「第五番」の制作時の苦難などをお話しいただきました。
本企画は「北大元気プロジェクト」に採択されたため,無料で一般公開することができました。さらに,サステナビリティ・ウィーク2009のプログラムの1つとさせていただいたことによる大々的な告知により,当日は学内外問わず400名あまりの方々にご来場いただき,盛況の内に無事終えることができました。
地球環境やその持続性を考えたり,世界に散在する諸問題を解決するためには人の考え方や心の変革によって創造されるひとりひとりの“生き方”が大切だと私達は考えます。学術拠点である北海道大学において,サステナビリティ・ウィークの1企画として「人の心を育てる」企画が実現できたことはとても大きな意味を持っているはずです。これからも「頭と心のバランス」の取れた優れた人材育成を目指す北海道大学としてあって欲しい,サステナビリティ・ウィークもそうあって欲しいと願っています。私達はこれからも地球交響曲を通じてたくさんの方々が穏やかな気持ちを共有する時間・空間づくりを続けていきます。また来年もサステナビリティ・ウィークでご一緒できますことを楽しみにしています。 |
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国際シンポジウム「オホーツク海の環境保全に向けた日中露の取り組みにむけて」 |
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期 日:11月7日(土)〜11月8日(日)
場 所:学術交流会館
代表者:低温科学研究所 環オホーツク観測研究センター 教授 江淵 直人 |
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11月7日(土)から開催した本シンポジウムでは,アムール川流域とオホーツク海は物質循環と生態系連環によってひとつのつながりを持っているとの認識に基づいて,オホーツク海とアムール川流域の環境問題の現状を学問的に討議し,現在生じている種々の問題に対して日中露の研究者が国境を越えて情報共有や学問的基礎に則った討議を行うための恒常的な多国間ネットワークである「アムール・オホーツクコンソーシアム」の設立を試みました。
合計33件の研究成果が日本,中国,ロシア及びフィンランドの研究者から報告されました。その結果,オホーツク海においては,温暖化によると思われる海氷減少が海洋の鉛直循環を弱化させ,これが北太平洋中層水の昇温と溶存酸素濃度の減少を引き起こしていることが明らかとなりました。アムール川流域の湿地を起源とする溶存鉄は,この中層水循環によってオホーツク海のみならず,遠く親潮域まで輸送され,その海域の基礎生産を支えていることが明らかとなりましたが,中層水循環の弱化は,将来,鉄輸送量の減少を引き起こし,親潮域の基礎生産に影響を与える可能性があります。
一方,20世紀後半から21世紀にかけて進行するアムール川流域の湿原の干拓化は下流域へ輸送される鉄の減少を引き起こしている事実が示されました。
また,進展する工業化や油田の開発により,アムール川では深刻な汚染が進行しつつあることが示されました。オホーツク海では,油田事故による水質汚染に対し大きな危惧があるものの,現在の水質の汚染度は,環境基準値以下です。
アムール川流域で生じている急速な陸面被覆状態の変化は,グローバル経済の下で生じる複雑な駆動力によって引き起こされています。それゆえ,この問題を解決するには,一国のみならず,アムール川流域とオホーツク海を共有する多国間の不断の協力が必要となります。本シンポジウムの全参加者は,アムール川流域とオホーツク海地域の持続可能な発展とその環境保全を最重要課題であるとの認識を共有し,その保全に向けた学術研究者による情報交換を主たる目的とするネットワーク「アムール・オホーツクコンソーシアム」を設立するための共同声明に賛同し,全員の総意をもって採択しました。 |
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白熱した議論 |
参加者一同 |
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実験展示:Let’s サイエンス!! |
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期 日:11月8日(日)
場 所:水産科学院講義棟
代表者:水産科学院 修士2年 小倉 優一郎 |
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11月8日(日)に開催した今回の実験展示では,「人工イクラを作ろう!」と題した実験を行いました。海藻から抽出したアルギン酸ナトリウムが溶けた溶液に,カルシウムイオンが溶けた色水を滴下すると,アルギン酸ナトリウムとカルシウムイオンが化学反応を起こし,膜を形成します。この性質を利用し,水産学部の大学祭に来ていただいた方々と共に様々な色の人工イクラを作りました。
主な対象は小学生でしたが,保護者の方や,年配の方にも非常に好評で,訪問者が絶えることはありませんでした。単に実験だけを行うのではなく,かみ砕いた表現で子供達に実験の原理を丁寧に教えることができました。また相手に合わせて説明のレベルを柔軟に変化させることができたこと,発表者全員がそういった知識を共有できていたことなどは評価に値すると考えられます。できた人工イクラはファルコンチューブに入れて各自持って帰っていただきました。これも今回の実験が好評であった理由の一つであると考えられます。
今後は,引き続き「科学の面白さ」を多くの人々に伝えるための活動を行っていく予定であり,実験の種類も徐々に増やしていこうと考えています。将来的には函館の公共施設などで大々的に実験を行い,多くの人々に科学の面白さを伝えていきたいと考えています。 |
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大人も子供も興味津々 |
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科学っておもしろい! |
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国際シンポジウム「低温科学のフロンティア」 |
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期 日:11月9日(月)〜11月10日(火)
場 所:低温科学研究所
代表者:低温科学研究所 所長 香内 晃 |
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低温科学研究所国際シンポジウム「低温科学のフロンティア」(ILTS International Symposium, “Frontier of Low Temperature Science”)は,低温科学研究所のテーマである「寒冷圏及び低温条件下における科学現象の基礎と応用」に関して,国内外の研究者を招待し,所内研究者ともに,研究の現状と今後の展望について話し合うことを目的として11月9日(月)〜10日(火)の2日間,低温科学研究所講堂において開催されました。
香内低温科学研究所所長が “Towards a new era in low temperature science”と題して,本年3月に部局間協力協定を締結したアルフレッド・ウェゲナー極域海洋研究所(ドイツ)を代表して Frank Wilhelms 教授が “How can ice science satisfy the public attention in a warmer world?” と題して,基調講演を行いました。
また,「水・物質循環」,「雪氷新領域」,「生物環境」,「環オホーツク圏」の4つの講演セッション及びポスターセッションを企画し,招待講演20件,ポスター発表30件が行われ,活発な議論が展開されました。2日間で延べ178名の参加者があり,その内訳は,学内151名(うち所内138名,所外13名),学外27名(うち国内15名,海外12名)で,米国,ドイツ,中国,韓国からの参加がありました。 |
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参加者一同 |
ポスター発表の様子 |
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産学官セミナー「地理空間情報が拓く未来」 |
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期 日:11月12日(木)
場 所:学術交流会館
代表者:水産科学研究院 教授 斎藤 誠一 |
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新しいデジタル地図として『地理空間情報』が日本全国で整えられつつあり,『地理情報システム(GIS)』や『衛星測位』の技術とともに活用することで,新しい社会を築こうとする動きが活発になっています。そこで11月12日(木)に開催した本セミナーでは,企業,大学,官庁における地理空間情報の活用について解説しました。また,この他に空間情報の一例として,1階ホールの床に1976年と2006年における札幌市の空中写真(5m×3m,縮尺1/3,000程度)を配置し,来場者には,その上を自由に歩いて見てもらう企画を実施しました。
2階大講堂で行った講演では,まず基調講演として小白井亮一氏(国土地理院北海道地方測量部長)から「最新の測量技術と防災」という演題で,国土地理院の最近の取り組みについて紹介いただきました。
次に,6人の演者がそれぞれの専門分野から地理空間情報の活用について説明を行いました。まず橋本雄一氏(北海道大学大学院文学研究科准教授)が「積雪寒冷地における生活環境整備のための地理空間情報活用」について,次に金子正美氏(酪農学園大学環境システム学部教授)が「農業におけるGISの活用事例」について,3番目に高田雅之氏(北海道環境科学研究センター)が「地理空間情報が拓く環境問題への新たなアプローチ」について解説を行いました。続いて赤渕明寛氏(潟qューネス 代表取締役)が「自治体における統合型GISと地域情報の発信」について,本宮康年氏(北海道地図葛Z術部開発担当部長)が「空間ソリューション事業と景相地図」について企業の立場から地理空間情報の利用を説明しました。最後に,齊藤誠一氏(北海道大学大学院水産科学研究院教授)が「持続可能な漁業及び増養殖業活動支援のためのユビキタスな情報サービスに関する研究開発」について発表しました。これらの発表は,いずれも各分野における活用の最先端を,わかりやすく解説したものであり,地理空間情報の高度活用社会構築に向けての啓蒙活動になったのではないかと思われます。 |
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札幌市の空中写真の上を歩く来場者 |
水産科学研究院 齊藤教授による講演 |
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国際シンポジウム「持続的アジア社会構築に向けた日中の総合的大学間協力」 |
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期 日:11月12日(木)
場 所:学術交流会館
代表者:サステイナビリティ学教育研究センター 教授 田中 教幸 |
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去る11月12日(木)に,北海道大学学術交流会館第1会議室にて,国際シンポジウム「持続的アジア社会構築に向けた日中の総合的大学間協力」と題し,日本と中国の大学間の協力関係のあり方に焦点を当てたシンポジウムを開催しました。本シンポジウムは日本語及び中国語による同時通訳によって提供され,当日は中国からの留学生などが参加者の3分の1ほどを占めました。
冒頭,招待講演者2名による基調講演が行われました。まず,招待講演者の北京大学副学長張国有教授による,中国における二酸化炭素排出と,自然再生エネルギーを中心とした二酸化炭素排出の効率的な削減を図る取り組みの現状が紹介されました。続いて,北海道大学の吉田文和教授より,中国では違法な廃棄物処理によって非常に安価に資源リサイクルが行われてきた状況が紹介され,日本がそれに依存してきたことを指摘し,両国の関係が資源リサイクルに関わる人々を脅威にさらしている現状が指摘されました。
続いて,一般講演として,中国が文化交流のために各国に設置している孔子学院の取り組みが紹介されました。日本で最初に孔子学院が開設された立命館大学から,孔子学院長の周 生教授が参加され,孔子学院の概要と共に,文化交流や中国語教育などの文化的な取り組みが中心である現状が報告されました。
第3部のパネルディスカッションでは,北海道大学北京事務所野沢俊敬教授と札幌大学孔子学院院長張偉雄教授から,両国において若い学生による互いの国への関心低下が懸念される旨の警鐘が鳴らされました。この指摘を受け,単にメディアを介した情報だけでは相互理解を深めるには不十分であり,何より重要なのは現地に行って自分で直接情報を取得することであるといった意見が挙げられました。そして,現在は文化的な交流が中心となっている孔子学院の事業ですが,今後は持続可能な社会の構築に向けた取り組みなど,研究者による専門分野における交流の可能性についても相互に関係を深めていく必要があるという将来の交流の展望に関する示唆を得て,今回のシンポジウムを閉会しました。 |
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パネルディスカッションの様子 |
会場の様子 |
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シンポジウム「アジア・アフリカ開発援助と北海道大学」 |
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期 日:11月13日(金)
場 所:学術交流会館
代表者:サステイナビリティ学教育研究センター 教授 田中 教幸 |
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去る11月13日(金)に,北海道大学学術交流会館第1会議室にて,シンポジウム「アジア・アフリカ開発援助と北海道大学」と題し,国際協力機構(JICA)を介したアジア及びアフリカ諸国との協力関係のあり方に焦点を当てたシンポジウムを開催しました。本シンポジウムは,JICAによる全面的な協力を得て行われました。英語によって提供されたにも関わらず,参加者の半数以上が学外からの参加であり,アジア・アフリカ諸国に対するJICAの取り組みへの関心の高さが窺われました。
はじめに,招待講演者4名による基調講演が行われました。まず,ウガンダ共和国大使Wasswa Biriggwa氏による,ウガンダにおけるエコビレッジの取り組みが紹介されました。続いて,JICAより2名の講演者による基調講演が提供されました。アフリカ部からは押山和範部長がアフリカで通用する人材について情報を提供し,続いて地球環境部の森尚樹次長が,中国の環境教育を対象として人材育成についての講演を行いました。また,インドネシア パランカラヤ大学のAdi Jaya教授には,インドネシアの環境教育の現状と今後の課題について話題を提供していただきました。
第2部では,会場とモンゴル及びインドネシアのJICA現地事務所をテレビ会議システムPolycomを使って接続し,それぞれの国の駐在員にシンポジウムに参加してもらうという,非常に意欲的な試みを行いました。はじめにモンゴルのJICA事務所小貫氏に,モンゴルにおける廃棄物処理の現状についてプレゼンしていただくと共に,現場で必要としている人材について,現地におけるコミュニケーションの重要性を指摘するコメントをいただきました。続いてインドネシア事務所からは,中小企業のアドバイザーである船橋氏によって,確固たる理論と共に独自の視点を持つことの重要性が指摘され,さらに現状を把握した柔軟な対応を可能とするために,様々な国の事例を把握する必要性が提唱されました。
第3部のパネルディスカッションでは,JICAでアジア・アフリカのプロジェクト運営に関わってきた松永氏や,現在JICA/JSTプロジェクトを実施している農学研究院大崎教授や工学研究科船水教授が加わり,北海道大学はアジア・アフリカにおけるJICAプロジェクトへの貢献度が最も大きい大学の一つであることが指摘され,今後もこれらの地域と密接な関係を構築していくことを確認し,今回のシンポジウムを閉幕しました。 |
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Biriggwaウガンダ大使による講演 |
インドネシア現地駐在所との
テレビ会議の様子 |
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シンポジウム「サステナビリティな産学連携を求めて
−イタリアCity Stateトリノの取り組みからのメッセージ−」 |
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期 日:11月13日(金)
場 所:学術交流会館
代表者:産学連携本部 教授 内海 潤 |
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本シンポジウムは基調講演と事例プレゼンテーション,そしてパネルディスカッションの3部構成で実施されました。トリノ工科大学とイタリア大使館から総勢6名のゲストに来ていただき,日本とイタリアでほぼ同数で講演しましたので,内容は国際色豊かになりました。参加者からも多くの質問があり,盛会裏に開催することができました。
内容は,まず岡田産学連携本部長,マンゴーニ公使参事官の挨拶に続き,トリノ工科大学ナルディ副学長「トリノ工科大学における産学連携」の基調講演がありました。同工科大はキャンパス内にグローバル企業であるGM,モトローラ,マイクロソフトなどの誘致したビジネスリサーチセンターがあり,周辺のベンチャー企業にも良い影響を与えているとの説明が印象的でした。
事例プレゼンテーションでは,両大学の連携事例(IT分野)として,カリア教授,山本強教授から,トリノ工科大学のワイヤレス通信技術と北大の全方向デジタル画像収集技術とを融合させた先端ICT(情報通信)分野でプロジェクトが紹介され,札幌市,北海道とトリノ市との地域産業間の連携への期待が述べられました。また,持続可能な開発に向けた取り組みとして,ロンバルディ教授からは,持続可能な開発を評価するメトリクス(評価指数)について,本学の本堂副学長からは「オホーツク海の未来可能性に向けた国際コンソーシアムの構築」を代表例として,地球環境に配慮した持続可能な社会の討議なされました。
パネルディスカッションでは将来的な共通課題として,「高齢社会に向けた連携アプローチ」について,活発な議論がなされました。イタリアも日本と同様に高齢人口国としての時代が間近に迫っており,この問題解決への教育の役割,ICTの役割,研究成果の実用化について,多彩な意見が述べられ,日伊交流のハブとしての北海道への期待が示されました。
(成果)
1.本学とトリノ工科大学の連携協定に基づく活動が積極的に行われており,技術分野(ICT分野)から,地球環境に配慮した持続可能社会,高齢社会などの社会科学分野を含んだ視点へと範囲を広げて議論できたこと。
2.学外からも多くの参加者があり,両校の取り組みについて多くの市民に知っていただけたこと。
(今後の展開)
高齢社会に対応した医用工学分野での両校の共同研究,これを発展させた国境を越えた産学連携の可能性について,検討していきたい。 |
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トリノ工科大学ナルディ副学長による基調講演 |
パネルディスカッションの様子 |
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シンポジウム「石油ピーク後の日本と北海道のあり方を考える」 |
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期 日:11月14日(土)
場 所:クラーク会館
代表者:サステイナビリティ学教育研究センター 教授 田中 教幸 |
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11月14日(土)に開催したこの行事は,サステナビリティ・ウィーク2009のシンポジウムとして行ったものです。「石油ピーク後の日本と北海道のあり方を考える−バイオマスの利活用−」というタイトルで,第1部で基調講演,第2部で専門からの研究成果報告,第3部で北海道内の公設試験機関や市町村の取り組みの紹介,最後に北海道民へのアピールを宣言し,終了しました。雨にもかかわらず問題意識の高い市民が多数参加し,シンポジウムは盛況でした。
基調講演は2名の学識者をお招きし,石井吉徳氏(もったいない学会会長)から「石油ピークは食糧ピーク,そして文明ピーク−日本のプランB−」,そして丹保憲仁氏(北海道開拓記念館館長,元北海道大学総長)からは「21世紀の日本と北海道−持続可能な社会を目指して−」を講演していただきました。石油ピーク後の日本や北海道では,人々はどのように生活様式を変えていかなければならないかなど現実問題としての石油ピーク後の社会作りについて提言がなされました。
続く第2部,第3部では基調講演の話題を受け,研究現場や地域での研究成果や取り組みを報告・紹介しました。研究成果報告は,電力中央研究所研究員とサステイナビリティ学教育研究センターとの合同の研究成果報告を行いました。地域の取り組みについては,道立工業試験場や伊達市,富良野市,足寄町から研究員や担当者が参加し,事例を交えながらの報告がなされました。
シンポジウムに参加した市民らからも活発な質問や意見が出され,バイオマスへの関心の高さが窺えました。
今後の展開として,サステイナビリティ学教育研究センターを核とした調査研究の拠点の強化と関係機関との連携が確認されました。 |
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丹保憲仁氏による基調講演 |
地方自治体による事例報告 |
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市民向け講座「日韓における農業からみた低炭素社会の展望」 |
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期 日:11月14日(土)
場 所:学術交流会館
代表者:農学研究院 院長 上田 一郎 |
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農業が低炭素社会の実現に貢献できることとして,バイオガス生産,バイオエタノール資源,水田の温暖化や物質循環に果たす役割について以下の演題が発表されました。1)バイオガスプラントの日本における現状と展望(北海道大学名誉教授松田從三),2)豚厩肥と食品残渣の嫌気分解によるバイオガス生産(韓京大学教授Chang−Hyun Kim),3)バイオエタノール研究の日本における現状と課題(北方生物圏フィールド科学センター教授山田敏彦),4)水田雑草の環境への多重機能(韓京大学教授Tae−Wan Kim)。
バイオガスについては,日本と韓国のバイオガスプラントによる生産が紹介され,ヨーロッパのそれと比較しながら,それぞれの現状と今後の課題が活発に論議されました。バイオエタノールについては,食糧となる作物ではなく,多年生草類によるセルローズ系バイオマスの重要性について発表がなされ,その中で,ススキやオギの取り組みが紹介されました。水田の多重機能については,温暖化の軽減や水資源の浄化及び蓄積機能等の多くの側面から,その機能を科学的に検証することが重要であると発表されました。最後に本学農学研究院の大崎教授の司会で総合討論を行い,その中で低炭素社会に向けて,日本と韓国が同じ現状認識と課題を抱えており,今後は相互に研究協力を推進する必要があることをあらためて認識しました。 |
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座長の荒木先生(北方生物圏フィールド科学センター)
による挨拶 |
総合討論中の松田先生,山田先生 |
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意見交換会「地球に優しい社会への大学→市民との協働」 |
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期 日:11月14日(土)
場 所:北海道環境サポートセンター(伊藤・加藤ビル4階)
代表者:地球環境科学研究院 准教授,グローバルCOE“統合フィールド環境科学の教育研究拠点形成”拠点リーダー 山中康裕
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北海道大学大学院地球環境科学院では,11月14日(土)に北海道環境サポートセンターにて,「地球に優しい社会への大学→市民との協働」というタイトルで,北海道大学サステナビリティ・ウィーク2009意見交換会を行いました。
本プログラムのテーマは,学びの場作りをテーマに,北海道大学が市民と一緒にできることを考えるものです。土曜日の夜にもかかわらず会場はほぼ満席でした。
プログラムは,北海道大学農学研究院の中村太士教授の挨拶で幕を開けました。
まず最初に話題提供ということで,CoSTEP(北海道大学科学技術コミュニケーター養成ユニット)の渡辺保史特任准教授が「大学で『なにか』をするということ」という題で基調講演を行いました。「自分たちごと」として物事を捉え異質なメンバーとのコミュニケーションの重要性を語ってくれました。
次に,日本データーサービス株式会社の福間博史氏が「大学と企業による人材育成」という題で講演を行いました。建設コンサルタントとして,大学にぶら下がるのではなく積極的にアクションをして様々な人と触れ合うことを提案されました。
そして,GCOE環境教育研究交流室からは,中村一樹,吉村暢彦,根岸淳二郎の3氏が現在の取り組みに関してプレゼンテーションを行いました。大学の内にこもらず,アカデミックにとらわれない,研究を土台とした社会での実践についての重要性について語ってくれました。
第2部は,前半行われた講演を元にして,市民の方と大学側の活発な意見交換が行われました。多くの方々から,大学に対する幅広い意見が飛び出して,活発な議論が展開されました。学生と市民の関わりを重視する意見が多く,意見交流は大変白熱したものとなりました。市民の大学への期待度の高さが窺えます。
最後に,グローバルCOE「統合フィールド環境科学の教育研究拠点形成」の拠点リーダー山中康裕准教授が閉会の挨拶を行いました。
プログラム終了後も,参加者は挨拶を交わして名刺交換を行ったり,感想を述べ合うなど,皆大変熱心な様子でした。
参加してくださった皆様,どうもありがとうございました。 |
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吉村 環境科学GCOEコーディネーターによる
プレゼンテーション |
山中 環境科学GCOE拠点リーダーによる
閉会の挨拶 |
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CCC「世界の子どもをつなぐ教室」報告会
〜カンボジア・インドと日本をつなぐ「青春の手紙」〜 |
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期 日:11月14日(土)〜11月15日(日)
場 所:学術交流会館
代表者:医学研究科 修士2年 大竹裕子 |
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夏季にCCC「世界の子どもをつなぐ教室」が行ったサマーセミナーの報告会を11月14日(土)から行いました。
展示:夏季のサマーセミナーの内容を記載したものを17枚,写真を約50枚会場に展示しました。
報告会:14日は「カンボジア編」15日は「インド編」であり,カンボジア編ではゴミ山で暮らす子どもの様子や,カンボジアの歴史,カンボジアの食べ物などを眼と口を使って体験してもらいました。インド編ではインドの児童労働をしている子供たちの様子を紹介し,実際にインドのマーケットで児童労働の現場を取材した映像などを流し,児童労働リハビリ施設「Bornfree Art school」に暮らす子どもたちを紹介しました。
ワークショップ:カンボジア編ではカンボジアのゴミ山に住む子ども達からの手紙を読み,その内容について話し合い,手紙に対する返事を色紙にまとめました(色紙は現地に届ける予定)。インド編では児童労働をしてきた子供の人生を振り返りながら,自らの人生を振り返り,再認識するというワークショップを行いました。
展示・販売:児童労働リハビリ施設「Bornfree Art school」の子どもたちが作成した作品の展示・販売を行いました。
評価:アンケートにおいてどちらの報告会及びワークショップにおいても,「違う世界があることを知った」「一方向で終わらない理解が出来てよかった」「もっと(そのような国に対し)支援したいと感じた」など国際交流に貢献した事を示す評価が多かったので活動目的はほぼ果たしたと考えますが,一方スタッフの配置・広報活動など改善の余地がある分野もありました。
今後も,今回の反省点を生かし,「世界の子どもをつなぐ教室」の実施を続け,より多くの子どもたちが,自分も,相手も大切な存在であるという気付きが得られる場を作っていければと考えています。また,国内外の子どもが抱える問題についての勉強会を通して,メンバー全体の意識の向上を図りたいと思います。 |
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ポスターの紹介 |
思いを込めた返事を色紙に |
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国際シンポジウム「先住民族と自然資源−持続的資源利用の視点から−」 |
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期 日:11月15日(日)
場 所:学術交流会館
代表者:文学研究科 教授 池田 透 |
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先住民族の知識の中には,環境との長い対話によって培われてきた資源管理に関する多くのヒントが凝縮されており,資源の持続的利用という面で多くの学ぶべき点があります。
本シンポジウムでは,ニュージーランドからDr. Brad Coombes,Mr. Marino Tahi,Mr. Alex Nathan の3氏を招聘し,先住民族マオリの人々による自然資源管理の試み,及びエコツーリズムという自然資源の新たな活用法について話題提供をいただき,また日本の先住民族であるアイヌの人々の知識を活かした資源管理についても実践報告をいただいて,今後の持続的資源利用の在り方を検討しました。
マオリの人々による自然資源管理では,保護地区を設定して自然資源の「保存」を図るという手法に対して,彼らが伝統的手法で自然資源を利用しながら管理を行うという「保全」を重視した手法が彼ら自身の保全活動への積極的参加を促すことにつながり,また政府との協働にも成功しているという実例が示されました。さらには,エコツーリズム及び伝統的文化の紹介も同時に取り入れたエコ・カルチュラルツーリズムの展開についてもその可能性と課題が提起されました。
日本側からは,小野有五氏による北海道のアイヌ・エコツーリズムの展開についての話題に引き続き,貝澤耕一氏による森林管理の試み,早坂雅賀氏による知床アイヌ・エコツーリズムの実践,川上哲氏によるエゾシカ猟に関する報告が行われ,アイヌ文化を基盤とした自然資源管理の可能性が紹介されました。それぞれに先住民族の権利回復に課題を残してはいる現状ではありますが,将来の自然資源の保全について先住民族による積極的な関与の成果と新たな可能性が示唆された有意義なシンポジウムとなったと考えております。多くの参加者の方々からも,先住民族の文化を学ぶことが将来の持続可能な社会の実現のヒントになるという意見をいただきました。
今回のシンポジウム開催によって,ニュージーランドのマオリ民族と日本のアイヌ民族との協働による今後の実践・研究の展開にも道が開けました。今後も情報交換を密に行ってさらに交流を深めるとともに,資源保全問題のみならず,先住民族文化に関する理解・実践・研究の発展を図りたいと考えています。 |
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オークランド大学のDr. Coombesによる講演 |
講演者との記念写真 |
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国際シンポジウム「持続可能な社会の発展と専門職業人の使命」 |
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期 日:11月15日(日)
場 所:学術交流会館
代表者:文学研究科 教授 新田 孝彦 |
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国際シンポジウム「持続可能な社会の発展と専門職業人の使命」は,文学研究科・応用倫理研究教育センター主催の第4回応用倫理国際会議(11月13〜15日)の中核となる行事として開催されました。
シンポジウムでは,提題者としてMichael Davis(マイケル・デイヴィス)博士(イリノイ工科大学教授)とRandall Curren(ランドール・カレン)博士(ロチェスター大学教授)を迎えました。デイヴィス博士の講演は,題名:「Engineers and Sustainability: An Inquiry into the Elusive Distinction between Macro− Micro−, and Meso−Ethics(技術者とサステナビリティ:マクロ・ミクロ・メソ倫理の間にある掴みがたい区別についての探求)」です。この講演でデイヴィス博士は,専門職としての技術者の倫理を職能集団としてのメソレベルの倫理であることを定義づけた上で,サステナビリティの実現は技術専門職倫理の一部であり,また専門職倫理であるからこそ,その実現に向けての活動が技術者の責務であること,また製品や建造物など広く社会に影響を与えるモノを造り出す技術者こそが,持続可能な社会の実現に貢献出来る能力を持ち,その貢献が社会から期待されていることを論じられました。
カレン博士は題名:「Sustainability in the Education of Professionals(専門職教育におけるサステナビリティ)」で講演されました。この講演では,現在のサステナビリティにまつわる問題を提示した上で,専門職の存在理由は社会への貢献にあり,それが社会からの信託に基づいている以上,持続可能な社会を実現していくこともまた専門職倫理の一部であることが論じられました。さらにカレン博士は,サステナビリティ教育はすでに専門職倫理教育の一環として行われているが,これからはより専門職倫理教育と一体化した仕方でなされねばならないと論じておられました。
2人の講演に引き続く質疑応答ではフロアから多くの質問及びコメントを集め,有意義なディスカッションが行われました。すでに4度目の開催となる応用倫理国際会議ですが,今後も国内・海外の応用倫理に関する主要テーマを論じるフォーラムとして,サステナビリティと倫理を研究テーマの基軸に据えつつ継続的に開催していく予定です。次回の第5回国際会議は2010年11月を予定しています。 |
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デイヴィス博士による発表の様子 |
質疑応答の様子 |
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北方圏の環境研究に関する日本−フィンランド共同研究セミナー |
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期 日:11月16日(月)〜11月18日(水)
場 所:学術交流会館
代表者:低温科学研究所 准教授 白澤 邦男 |
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温暖化により急激に変化する北方圏の環境に関して,北海道とフィンランドが連携して取組む最新の研究や若手研究者育成国際プログラムなどを紹介し,共同研究の継続や将来の研究計画の可能性について議論する「北方圏の環境研究に関する日本−フィンランド共同研究セミナー」が,ラップランド大学北極センターが中心になり,平成20年9月3日〜5日にロヴァニエミにて開催されました。
本年度はその継続ですが,特に,若手研究者や大学院レベルでの教育研究交流推進に重点を置きました。11月16日(月)から全体会議形式で3分科会と総合討論に2日半,支笏洞爺国立公園での現地研修と討論会に2日間の日程でした。分科会1: Cryosphere & Boreal Forestsで7題,2: Landscape, Land Use Changesで9題,3: Human−Environment Relationsで12題の発表がありました。分科会1と2は前回のフィンランドでのセミナーで議論された本学とフィンランドの大学(ヘルシンキ大学,オウル大学,ラップランド大学)で進められている共同研究の進捗状況や新たな研究テーマの提案などがあり,今後の継続性や若手研究者,学生の教育研究交流事業,単位互換の可能性などについて議論されました。若手研究者や学生を対象にしたSea−ice field courseのテキストが共同執筆され出版されました。オウル大学は本学と姉妹校,連携大学として締結しており,(学長が訪問予定でしたが急遽取止めになり)学術国際局長と国際交流担当研究所長とが本学本堂副学長を表敬訪問され,若手研究者や大学院学生の教育研究交流について意見交換されました。ラップランド大学の副学長と事務局長も同時に表敬訪問されました。
分科会3は,今までの自然科学系のテーマに「人間と自然環境との関係」を加えた新たな試みでした。本学アイヌ・先住民族研究センター,室蘭工大,ラップランド大学が中心となり,気候変動や人類の活動増加により劇的な影響を受ける北方圏の環境変動をラップランドのサーミや北海道のアイヌ民族の生活を通して,彼らがどのように影響を受け,また彼らが抱えている問題点などを浮き彫りにして熱い議論が交わされました。
総合討論会では,今後の継続性について,先住民族関係では本の共同執筆の計画,来年度のセミナーはオウル大学が企画を担うことなどが話されました。研修旅行では,白老のアイヌ民族博物館の見学,支笏洞爺国立公園で公園管理,維持,問題点などを学びました。フィンランドからの参加者は殆どフィールドサイエンスの研究者であり,特に分科会2の関係者には日本の国立公園の現状を学ぶ良い機会でした。 |
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分科会での討論 |
白老アイヌ民族博物館での研修 |
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