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北大教育GP主催公開研究会「フィンランドの『教えない教育』」開催

 第3回公開研究会が,第1回,第2回に引き続き,理学院自然史科学専攻/高等教育機能開発総合センターの池田文人准教授を講師に迎え,「フィンランドで先生になるために」と題して,1月23日(土)に総合博物館1階「知の交流」コーナーにおいて開催されました。
 今回は,まず,前回,前々回のおさらいをし,続いて,フィンランドにおける先生の役割について,「先生は何をしているのか」,「どうしたらなれるのか」,「どのような資質を求められているのか」,「教員養成課程ではどのような教育がなされているのか」といった観点から講義していただきました。
 フィンランドの先生は,社会的立場が極めて高く,尊敬される,あこがれの職業であること,医師や弁護士と同じ専門職であり,教育の研究者であることが求められること,生活指導や課外学習は先生の仕事ではなく,教育に専念でき,平均労働時間も日本に比べ少ないこと,など日本とは異なるフィンランドの現状についてお話しいただきました。そして,フィンランドの先生の役割は,情報伝達者や講義者ではなく,知識を自分なりに構成していく方法論を教えることであり,このため,子供たちは一人一人異なってよく,それぞれのメタ知識の獲得を支援しているということを,授業の様子や教科書の内容に触れながらご説明いただきました。また,フィンランドの高校卒業資格試験や大学入試を例にとりながら,先生に求められる資質や能力についてお話しいただいたほか,オウル大学を事例に,研究に基礎を置き,教育実習に重きを置くフィンランドの教員養成課程についても詳しくご説明いただきました。フィンランドの教育は,知識は到達するものではなく,それぞれが作り上げるものであるという知識観のもとで展開されており,先生もまた,その知識観に基づいて教育を展開しており,そうした教育を行うことが求められていることを意識させられる話題提供でした。
 池田先生からの話題提供の後の質疑応答では,現職の教職員からは,フィンランドと日本の先生の仕事量の違いや,フィンランドおける家庭学習,あるいは,フィンランドの教育の良い部分を日本の教育に活かすためには,などについて現場の実情を交えた質問や意見も出されたほか,「小学校1年生からあれだけの教科書をこなせるのはなぜか」や,「なぜ,中学や高校においても能力別に分けることをしないのか」,など多くの意見や質問が寄せられ,研究会らしい活発な議論が展開されました。

 
研究会の様子

研究会の様子

 
(総合博物館)
 

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