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総合博物館でパラタクソノミスト養成講座を開催

 総合博物館では,平成16年より,「準分類学者(パラタクソノミスト養成講座)」を開講しています。各講座修了者には「準分類学修了証」を発行しており,大学生・大学院生の教養教育の場として,博物館ボランティアや環境調査会社職員のスキルアップの場として,そして,学芸員・教員・自然観察指導員のリカレント教育の場として,利用されています。今年度の後期には,計15講座の開催を予定しており,10月から11月にかけては下記の日程で,岩石・鉱物野外採集会,植物(中級:イネ科植物),石器(上級)の3講座が開催されました。

 
1.岩石・鉱物パラタクソノミスト野外採集会
 10月9日(土),10日(日)の1泊2日の日程で,当館の松枝大治教授が案内役となり,森町濁川地熱発電所,鹿部間歇泉,恵山(自然硫黄),銭亀沢鉱山(銅鉱物,水晶他),知内(砂金),上ノ国鉱山(マンガン鉱物他),勝山(重晶石)において野外採集会が開催され,学生や市民ら38名が参加しました。
 1日目は天気に恵まれ,最初に訪れた森町の濁川地熱発電所では,松枝教授の解説のもと,北海道唯一の地熱発電所を堪能し,鹿部間歇泉では,地下26mの深さから湧き上がる間歇泉を観察し,足湯も楽しみました。続いて訪れた恵山では,白色から黄色の硫黄と,活火山の溶岩を観察,採集し,銭亀沢鉱山では,日が暮れ始め,暗くなりつつある中,銅鉱物の採集を行いました。
 2日目はあまり天候がよくなかったものの,最初の目的地である知内川では,砂金取りに挑戦しました。参加者の1/3程度の人が,砂金を採取することができました。続いて訪れた上ノ国鉱山では,濃紅銀鉱,閃亜鉛鉱,方鉛鉱,菱マンガン鉱,重晶石などの鉱石を採集し,最後に訪れた勝山鉱山では,重晶石の結晶がたくさんついた岩石を求め,母岩付きの結晶を採集する人や,大きな結晶を求めて土を掘る人など様々でしたが,最終的には,それぞれが納得のいくものが採集できました。盛りだくさんの内容で,過密なスケジュールではありましたが,多くの知識と様々な岩石・鉱物を持ち帰ることができ,充実した2日間となりました。
 
野外採集会において知内川で砂金採集に取り組む参加者ら
野外採集会において知内川で砂金採集に
取り組む参加者ら
 
2.植物パラタクソノミスト養成講座(中級:イネ科植物)
 10月30日(土)に,桜美林大学の木場英久准教授を講師に招き,総合博物館で開催されました。今年は,定員の2倍以上の応募があり,厳正な選考を経て,10名が参加しました。
 午前の講義では実物の植物を見ながらイネ科属植物の基礎的な構造の解説が行われ,イネ科植物を学ぶ上で,障害となっている「用語が難しい」という壁を取り除き,イチゴツナギ亜科やイネ亜科の小穂を解剖し,ルーペや実体顕微鏡で観察し,属や亜科の解説が行われました。
 午後からは引き続きイネ科の小穂の構造の変遷をキビ亜科などを用いて観察・解説が行われました。今回の講座で,用語の理解が深まり,多様な種があるイネ科の魅力について知ることが出来ました。
 
講義を行う木場講師
講義を行う木場講師
 
3.石器パラタクソノミスト養成講座(上級)
 11月3日(水)に,埋蔵文化財調査室の高倉純助教が講師を務め,総合博物館で開催され,市民や学生ら5名が参加しました。
 午前の講義では,フランスの後期旧石器時代の遺跡や資料を用いて,石器の出土位置や接合関係から,旧石器時代の社会のあり方や文化の継承の過程が読み取れることを学びました。次に,皮をなめすのに用いられていたとされる「掻器」を観察し,実測図を作成する実習を行いました。考古学において重要な役割を担う実測図の書き方を基礎から学び,午前は前面の実測図の作成に取り組みました。
 午後も,引き続き「掻器」を観察し,実測図を作成する実習を行い,裏面図と断面図の作成に取り組みました。また,1点1点の石器を観察し,図に表すことで,原石から廃棄に至るまでの「石器のライフヒストリー」の全容を明らかにすることができることも学びました。その後,実験使用痕分析についての講義を受け,石器を実際に製作し,実験的に使用痕をつける実習を行いました。最後に,実体顕微鏡や顕微鏡を用いて,「掻器」や剥片についた微小剥離痕や線状痕,光沢面などの使用痕を観察しました。
 
実測図の作成に取り組む参加者ら
実測図の作成に取り組む参加者ら
 
 12月には,鉱床(中級),鉱物(上級)の各講座の開講が予定されています。
 
(総合博物館)
 

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