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第8回脳科学研究教育センター・シンポジウム「グリアの生理と
病態」を開催

 12月3日(金)に,第8回脳科学研究教育センター・シンポジウム「グリアの生理と病態」(世話人代表:薬学研究院 南雅文 教授)が医学部学友会館「フラテ」ホールで開催されました。
 北海道大学脳科学研究教育センターは,文部科学省「萌芽・融合研究開発プログラム」の予算措置を受け,文理融合型研究教育拠点として平成15年に設置され,本学の12部局に所属する25名を超える基幹教員を中心に融合的脳科学研究を推進するとともに,部局横断型のバーチャル専攻科「発達脳科学専攻」において,修士および博士課程大学院生への系統的な脳科学教育プログラムを提供しています。
 本年で8回目を迎えたセンター・シンポジウムは,毎年テーマを決め,発達脳科学専攻の大学院生の教育に資するとともに,学内外に脳科学研究の最前線を示す機会となっています。本年度のシンポジウムは,総長室事業推進経費「脳科学を基礎とする副専攻型全学教育プログラムの開発」の支援を受け,グリア研究の第一線で活躍する学外の研究者3名を招き,センター基幹教員2名を交えて,脳内グリア細胞の機能について,生理機能から病態における役割までを視野に入れたプログラムを企画しました。
 当日は,センター長の本間研一特任教授の挨拶に続き,先ずはグリア細胞のうち,アストロサイトと呼ばれる細胞種について,本学医学研究科の渡辺雅彦教授によるシナプスの発達と維持における役割に関する講演があり,次に,九州大学農学研究院の古屋茂樹教授により,脳内L−セリンの供給源としてのアストロサイトの重要性についてセリン合成酵素のノックアウトマウスを用いた研究成果が発表されました。ヒトにおいても新生児小頭症と精神発達遅滞,痙攣発作などの重篤な神経発達障害を呈す遺伝性セリン合成不全疾患が報告されており,脳内L-セリン合成に中心的な役割を果たすアストロサイトの研究の進展が疾患治療に役立つことが期待されます。続いて,ミクログリアと呼ばれるグリア細胞について,山梨大学医学工学総合研究部の小泉修一教授により,ミクログリアによる死細胞・異物の貪食の調節におけるプリン受容体(ATPなどのヌクレオチドの受容体)の重要性とプリン受容体発現調節に関わるミクログリア−アストロサイト相互作用機構についての最新の研究成果が報告されました。次に,大阪市立大学医学研究科の木山博資教授により,傷害された神経細胞とミクログリアの相互作用の様子が形態的に示されるとともに,その病態生理学的意義について示唆に富む講演がなされ,最後に,本学薬学研究院の南雅文教授より,神経細胞傷害時におけるアストロサイトおよびミクログリアの活性化に関与する細胞内情報伝達系についての発表が行われました。
 いずれの講演でもグリア細胞の生理的・病態生理的役割に関する最新の研究成果が示され,脳科学研究教育センター教員や発達脳科学専攻の大学院生等の参加の下,活発な質疑応答がなされ,盛会のうちに終了しました。

 
本間研一センター長の挨拶 講演する渡辺雅彦教授
本間研一センター長の挨拶 講演する渡辺雅彦教授
講演する古屋茂樹教授 木山博資教授の講演での質疑応答
講演する古屋茂樹教授 木山博資教授の講演での質疑応答
 
(脳科学研究教育センター)
 

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