部局ニュース

総合博物館でパラタクソノミスト養成講座を開催

 パラタクソノミスト養成講座は,平成16年より,学術標本やサンプルを正しく同定し,整理する能力を有し,環境調査・教育において必要とされる人材である「準分類学者(パラタクソノミスト)を養成することを目的に開催しており,昨年度の後半からは北海道教育GP「博物館を舞台とした体験型全人教育の推進」のもとで開催してきました。11月から12月にかけては下記の日程で,植物(初級:コケ植物),木製品(初級),鉱物(初級),鉱物(中級),鉱床(中級),鉱物(上級)の6講座が開催されました。

 
植物パラタクソノミスト養成講座(初級:コケ植物)
 11月6日(土)に,斜里町立知床博物館の内田暁友氏を講師に招き,総合博物館で開催されました。今年も昨年に引き続き,定員の3倍近くの応募があり,厳正な選考を経て,12名が参加しました。
 はじめにコケ植物とはどのような分類群かについて,コケ植物の生活史・世代交代についての説明を受けました。次に,コケ植物にはセン類,タイ類,ツノゴケ類(北海道では稀)の3種類があることが紹介され,その後,午後からの実習のため,実体顕微鏡のセッティングとピンセットの先を研いで尖らせる作業を行いました。
 午後からは,光学顕微鏡で観察をスムーズに行うためのケーラー照明によるセッティングを行い,その後,実体顕微鏡を使ってタイ類のゼニゴケ,ジャゴケを観察し,表面の様子や無性芽を確認しました。次に,専門的な図鑑に載っている検索表(Key)を使って,スギゴケの観察と同定を行い,未発達の胞子体(胞子を含む凾ニその出口にある剋普C凾包む帽)を観察し,葉の横断切片を作成する作業を行いました。続いて,雌雄同株のツボゴケを観察し,胞子体の基部に雌器官の造卵器と雄器官の造精器の両方があることを確認しました。最後に,イボミズゴケを観察し,ミズゴケの体の作りの説明,スギゴケと比べて薄くて柔らかい葉の横断切片を作りました。また,野外でコケ植物を採集する時に使う道具や採集袋の使い方等についての講義も受けました。
 
コケの同定に取り組む参加者
コケの同定に取り組む参加者
 
木製品パラタクソノミスト養成講座(初級)
 11月13日(土)に,埋蔵文化財調査室の守屋豊人氏,農学研究院の佐野雄三氏,渡邊陽子氏が講師を務め,総合博物館で開催され,市民や学生ら13名が参加しました。
 まず,木製品の観察を行い,その後,守屋講師による講義が行われ,木製品とはどのようなものかについて,木材の構造についての説明を受けました。次に,実際に木材を手にとり,木材面を見ながら,それらの木製品が樹木のどの部分が使われているものなのかを読み取る方法を学びました。
 午後からは,まず,佐野講師による講義があり,木製品にはどのような種類の木が用いられているのかを解明する樹種識別の方法についての説明を受けました。そして,顕微鏡で観察して樹種識別をするためのプレパラートの作り方を佐野講師が実演の後,その作成に取り組み,作成したプレパラートを光学顕微鏡で観察し,樹種識別を行いました。最後に,守屋講師より遺跡出土の木製品に見られる樹種の選択利用についての講義があり,講義後,今日のまとめとして2回目の木製品の観察を行いました。
 
プレパラート作成を実演する佐野講師と参加者
プレパラート作成を実演する佐野講師と参加者
 
鉱物パラタクソノミスト養成講座(初級)
 11月13日(土)と14日(日)に,理学研究院の三浦裕行氏が講師を務め,総合博物館で開催されました。今年は,定員の3倍近くの応募があったため,急遽,2日間に分けて開講することになり,1日目9名,2日目10名の計19名が参加しました。
 午前の講義では,本講座の目的である鉱物鑑定に向けて,実験上の諸注意,鉱物の分類,各実験器具の使い方などについて,鉱物の定義や分類などについて説明がありました。また,実際に鉱物標本を用いながら,鉱物鑑定の手がかりである,色,光沢,硬度(硬さ),比重等の判別方法,測定方法などについても説明を受けました。
 午後からは,午前の講義で説明を受けたノウハウをもとに,2つのグループに分かれて,さまざまな薬品や実験器具を用いて用意された20種類の鉱物標本の鑑定にそれぞれ取り組みました。
 
講義を行う三浦講師
講義を行う三浦講師
 
鉱物パラタクソノミスト養成講座(中級)
 11月27日(土)に,初級に引き続き,理学研究院の三浦裕行氏が講師を務め,総合博物館で開催され,市民ら4名が参加しました。
 午前の講義では,本講座のテーマである「X線を使って未知の鉱物を調べよう」のX線とはいったい何であるのか,どのように発生させるのか,そして,どのようにX線を使えば鉱物を同定することができるのかについて,具体例をあげながらの説明を受け,さらに,練習問題を用いて理解を深めました。
 午後からは,受講生が持参した石(鉱物)を用いて,実際に粉末X線回析装置で測定する実習を行いました。測定結果を各自電卓を用いて数値処理を行い,様々な鉱物のX線データが掲載されているサーチマニュアルのデータと見比べて,鉱物同定を行いました。
 
実習に取り組む参加者
実習に取り組む参加者
 
鉱床パラタクソノミスト養成講座(中級)
 12月11日(土)と12日(日)に,当館の松枝大治氏と鳥本准司氏が講師を務め,総合博物館で開催されました。定員を越える応募がありましたが,応募者全員に参加いただき,学生や市民ら14名を迎え開催することになりました。
 1日目の午前には,講義が行われ,松枝講師から,鉱床学の基礎知識,鉱床の分類,特徴及び成因などの説明がされました。午後からは,まず,松枝講師の案内で,博物館に展示してある鉱床・鉱石に関する展示を見学し,その後,休憩をはさんで,鉱石標本の観察を実習室で行いました。
 2日目は,鳥本講師が,反射(鉱石)顕微鏡の原理や構造,使用方法,及び代表的な鉱物について顕微鏡下での特徴や同定方法について説明しました。午後からは,実際に顕微鏡下での鉱石の観察を2人1組で行い,その後2班に分かれて,顕微鏡下での鉱石鉱物の同定,及び肉眼での鉱床タイプの分類・鉱物の同定のテストを行いました。
 
鉱物標本について解説する松枝講師と参加者
鉱物標本について解説する松枝講師と参加者
 
鉱物パラタクソノミスト養成講座(上級)
 12月18日(土)に,初級,中級に引き続き,理学研究院の三浦裕行氏が講師を務め,総合博物館および理学部で開催され,市民ら2名が参加しました。
 博物館に集合後,理学部に移動し,すぐに,受講者が持参した試料のXRD(X線回析)測定を開始しました。粉末状の試料についてはそのまま測定を行い,塊状の試料については,まず,タガネなどで特定部分を取り出し,得られた破片を粉末にする作業を行い,測定を行いました。午前は,5つの試料を測定しました。
 午後も,引き続きXRD測定を行いました。午後からは,TAに代わり,参加者自らが測定装置を操り,同定作業に挑戦しました。6つの試料を測定し,各試料のおおよその鉱物相を明らかにすることができました。
 
鉱物試料のX線回析に取り組む参加者
鉱物試料のX線回析に取り組む参加者
 
 2月には,鉱床(上級),化石(初級),岩石(上級)の各講座の開講が予定されています。
 
(総合博物館)
 

前のページへ 目次へ 次のページへ