訃報

名誉教授 辻田 時美(つじた ときみ) 氏(享年97歳)

名誉教授 辻田 時美 氏(つじた ときみ)(享年97歳)

 名誉教授辻田時美氏は平成22年12月13日,97歳で逝去されました。ここに生前のご功績を偲び,謹んで哀悼の意を表します。
 同氏は,大正2年9年月28日,長崎県長崎市に生まれ,昭和15年3月東北帝国大学理学部生物学科を卒業し,同21年4月長崎海洋気象台水産気象課長,同25年4月西海区水産研究所遠洋資源部長,同33年4月同研究所沿岸資源部長,同37年4月同研究所海洋部長,同38年4月東北海区水産研究所資源部長,同42年4月北海道大学水産学部教授,同51年4月北海道大学水産学部長,同52年3月31日定年により退職しました。同年4月北海道大学名誉教授の称号を授与されました。
 この間,同氏は,昭和22年長崎海洋気象台の創設に当たり,宇田道隆博士と共に同台の開設に尽力され,水産気象課長として漁業における海象・気象に関する研究並びに指導にあたられました。昭和25年西海区水産研究所に転出され,遠洋資源部,沿岸資源部,海洋部の各部長を歴任され,近海はもちろん東シナ海,黄海における底魚及び浮魚資源に関する海洋生態学的研究に著大な業績を残し,この間有明海連合海区,長崎県連合海区の調整委員,まき網・さば漁業調整協議会特別委員を兼任され,長崎大学非常勤講師として漁況論の講義を担当し,農林省水産講習所非常勤講師として我が国において始めて海洋生態学の講義を開講させるなど,研究活動はもちろん地域産業開発のための議行調整並びに教育の綿にも大いに寄与されました。
 同氏は,海洋における漁業資源研究に関し,生態系の概念を導入し,その斬新な学理と該博な知識に基づいて海洋生態学的な研究を提唱され,我が国における先駆的研究の数々を発表され,昭和31年「プランクトンの異常繁殖とその随伴現象の研究」により東北帝国大学より理学博士の学位を授与されました。
 昭和38年東北海区水産研究所資源部長の要職に就かれ,北西太平洋における漁業資源研究の組織的研究の必要性を訴え,その推進に尽力されました。
 昭和42年北海道大学水産学部教授に就かれ,北洋水産研究施設漁業部門を担当され,同施設長を歴任されました。同学部においては,海洋生態学の理論展開に尽力され,北西太平洋,ベーリング海,オホーツク海の研究の飛躍的な推進に貢献され,我が国における海洋生態学の基礎を確立したことは高く評価されました。昭和51年同学部長に選出され,学部長事務取扱として大学の管理運営に当たられ,学部の充実,発展に寄与されました。特に外国人の学位審査の道を開かれ,自ら主査となり,その第一号を誕生させたことを始め,多くの研究者の教育,養成にご尽力されました。
 学会における活動は,水産海洋研究会長を始め,日本水産学会・日本海洋学会・日本プランクトン学会の各評議員理事を勤められ,日仏海洋学会・日本生態学会・魚類学会等における学会活動にも大いに活躍されました。
 また,北海道総合開発推進委員会・北海道科学技術審議会等の委員を兼務され,産業の発展に関する適切な助言者としても多大の貢献をなされました。
 昭和61年には勲三等瑞宝章を受賞されました。
 以上のように,同氏は長年にわたり大学において教育,研究に携わり,多くの人材を育成するとともに,専門である研究分野でわが国のみならず世界の学術,技術の発展に貢献されました。
 ここに謹んで先生の御冥福を心よりお祈り申し上げます。

(水産科学院・水産科学研究院・水産学部)


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