部局ニュース

2010年ノーベル化学賞受賞 根岸英一触媒化学研究センター
特別招へい教授来道

●12月23日(木)記念講演会・祝賀会
 触媒化学研究センターは,根岸英一触媒化学研究センター特別招へい教授(米国パデュー大学特別待遇教授)が2010年ノーベル化学賞を受賞したことを記念し,講演会及び祝賀会を開催しました。
 記念講演会は市内の道新ホールにおいて,触媒化学研究センターの職員・学生及びセンターに縁のある学内外の研究者等300名余りが集まり行われました。講演に先立ち,吉田邦夫財団法人総合工学振興会理事長及び檜山爲次郎中央大学研究開発機構教授から来賓の挨拶をいただきました。

 
挨拶する吉田理事長 挨拶する檜山教授
挨拶する吉田理事長 挨拶する檜山教授
 
 講演のタイトルは,「ノーベル賞を受賞して−Magical Power of d−Block Transition Metals−」。講演要旨は次のとおりです。
 「2000−2010の10年間で触媒を対象とする研究で9人(3人×3回)の研究者がノーベル化学賞を受賞している。これは,ノーベル財団がこの分野を重要と認めている証拠である。
 私はC−C結合のクロスカップリング反応において中心的触媒としてTransition Metal(遷移金属)パラジウム(Pd)を使う。ヘック先生は水素(H)を使い,鈴木先生はホウ素(B)を使う。クロスカップリングによる有機合成は,道半ばを過ぎたところで,まだまだこれから発展すると考えている。
 我々有機合成化学者は,何でも有機合成で作りたい,さらに目標物を高効率に高収率で作りたいと考える。化学合成において不要物を産まない触媒は有効である。私の使うパラジウムも数百万回などすぐ回る。効率の高い触媒である。そこで,触媒を使うと,Efficiently(効率的),Selectively(選択的),Economically(経済的) ,Safely(安全)である。すなわち,YES(ES)→『Green Chemistry』である。
 元素周期表は10〜12ある有機元素を除くとほとんどが金属であり,その半分がTransition Metals(遷移金属)である。私は,有機合成反応において全ての元素を考慮したらどうかと考える。有害なものを除くと70位であり,そこから得られる2元の組合せは約5,000組もある。『Two is Better than One!』である。私は,大学院生の時にこの組合せを全てレゴゲームのようにカップリングできないか考え始めた。
 
講演する根岸特別招へい教授
講演する根岸特別招へい教授
 
 今日強調したいのは,d-Block Transition Metalsが我々人類にとって有用であるということである。Transition Metals(遷移金属:チタン(Ti),銅(Cu),ニッケル(Ni),クロム(Cr),鉄(Fe)等)は近年までは主に材料として使われていたが,材料として使うのは化学的に古い使い方であり,触媒として使うのが有用である。今世紀の化学としても認められている。クロスカップリング反応も触媒がなければ生じないのである。」
 
講演する根岸特別招へい教授
講演する根岸特別招へい教授
 
 引き続き,会場をJRタワーホテル日航札幌に移し,講演会同様触媒化学研究センターの職員・学生及びセンターに縁のある学内外の研究者等200名余りが集まり記念祝賀会が盛大に行われました。
 根岸英一先生ご夫妻入場後,福岡淳触媒化学研究センター長の挨拶,佐伯浩北海道大学総長,川上伸昭科学技術振興機構理事,谷田部俊明帝人株式会社取締役常務執行役員CTOから祝辞があり,根岸英一先生の受賞挨拶の後,岡田尚武北海道大学理事・副学長の乾杯発声で祝宴が始まりました。
 宴会が始まると根岸先生の前には列ができ,先生は料理に手を付けるのが難しいほどの人気でした。お話をされる方,購入した根岸先生の本にサインを求める方,一緒に写真に収まる方等,ノーベル化学賞受賞者を前に皆緊張気味でした。
 宴会中ほどには,根岸先生の来日に支援をいただいた日本航空から藤田克己北海道地区支配人・札幌支店長に,翌日の市民講演会を共催する北海道新聞社から遠藤雅之取締役編集局長にスピーチをいただきました。
 
挨拶する福岡センター長 祝辞を述べる佐伯総長
挨拶する福岡センター長 祝辞を述べる佐伯総長
祝辞を述べる川上理事
祝辞を述べる川上理事
 
 今回の祝賀会には触媒化学研究センターのOBにも声を掛け,多数のOB・OGが参加されました。
 
スピーチする藤田克己支配人 スピーチする遠藤雅之局長 根岸先生と歓談する金岡祐一元センター長
スピーチする藤田克己支配人 スピーチする遠藤雅之局長 根岸先生と歓談する金岡祐一元センター長
 
 祝賀会は,大盛況の中,大澤雅俊触媒化学研究センター教授の締めの乾杯により幕を閉じました。
 
●12月24日(金)札幌西高校で講演会/道新ホールで市民講演会
 翌24日(金)は,北海道庁に高橋はるみ知事を表敬訪問した後,道立札幌西高等学校で講演会を行いました。同校には,国際生物学オリンピック日本代表候補者が在学している関係で講演を行うことになりました。
 札幌西高校には,在校生,父兄及び北海道教育委員会の関係者約1,000名が集まり,根岸先生の講演を熱心に聞いていました。
 高橋保触媒化学研究センター教授の講演者紹介の後,「夢と幸せを求めて」と題して講演が行われました。根岸先生は時折ノーベル化学賞のメダル(本物)を見せながら,どんなことでも好きな事を見つけて努力すること,目標を達成するためには階段を上るように努力する事が大切であることを,自分のノーベル賞受賞までの過程を例にあげながら話をされました。
 
講演する根岸特別招へい教授 札幌西高校生と対談する根岸先生
講演する根岸特別招へい教授 札幌西高校生と対談する根岸先生
 
 講演終了後,在校生との対談が行われ,生徒から「研究者になりたいが,自分の専門とすること以外に高めておく事はあるか」「研究をくじけそうになって辞めようと思った事はあるか」等の質問が出され,根岸先生から「研究のために高校時代に習う事全てが基礎になるので高校時代が重要であること,研究は好きでやっているのでくじけそうになった事はない」等丁寧に回答がありました。
 講演会及び対談は,到着が遅れたため若干短い時間で行われましたが,大盛況の中終了し,拍手で見送られ,同校を出発しました。

 引き続き,今度は道新ホールに会場を移し,ノーベル化学賞受賞後日本で初めての市民向け講演会を北海道新聞社と共催で行いました。
 同講演会は,北海道新聞に掲載された申込み定員550名の案内広告に対し,わずか数日で1,000名を越える市民から申込みがあり,当日はプラチナチケットを手に入れた札幌市民が会場に所狭しと集まりました。
 当日の司会はFM北海道の中田美知子さん,講演者紹介は触媒化学研究センターの高橋教授が行い,タイトル「夢と幸せを求めて」で講演が行われました。
 講演は,人が幸せを掴むためには条件が4つある事を,根岸先生の人生経験を交えながらお話しされました。(講演要旨は平成23年1月10日付け北海道新聞に詳しく掲載)
 講演終了後,司会の中田美知子氏との対談が予め参加者から集められた質問を基に行われ,根岸先生からエピソードを交え回答がなされました。
 対談終了後,北海道新聞社の単独取材,その後,共同記者会見,宿泊先のホテルに戻ってNHKの取材を受ける等,忙しい1日でした。
 
講演者を紹介する高橋教授 講演する根岸特別招へい教授 中田氏と対談する根岸先生
講演者を紹介する高橋教授 講演する根岸特別招へい教授 中田氏と対談する根岸先生
 
●12月25日(土)立命館慶祥高校で講演会
 来道最終日の25日(土)は,立命館慶祥高等学校を訪問して講演を行いました。
 同校では,生徒が新聞スクラップ等で作成した壁新聞が根岸先生を出迎え,会場となった体育館には1,800名を越える生徒,父兄が参集していました。
 根岸先生は大きな拍手に迎えられ入場し,同校でもノーベル化学賞の本物のメダルを時折見せながら,ノーベル化学賞受賞のためのステップを例にあげながら,順追って努力する事の大切さを話されました。
 講演後,同校化学部との対談も企画され,根岸先生,生徒とも楽しそうに化学談義に花を咲かせていました。
 
メダルを見せながら講演する根岸先生 化学部の生徒と対談する根岸先生
メダルを見せながら講演する根岸先生 化学部の生徒と対談する根岸先生
根岸先生の講演を聞く生徒等 先生を迎えた壁新聞
根岸先生の講演を聞く生徒等 先生を迎えた壁新聞
 
 この後,根岸先生は新千歳空港に向い,北海道での短い3日間を終え離道されました。
 根岸先生は,ノーベル化学賞受賞決定後,かなり過密なスケジュールでお疲れにも関わらず,いやな顔一つせず,講演にも取材にも応えておられました。今回対応したスタッフとして感謝の気持ちで一杯です。
 根岸英一先生ありがとうございました。
 先生の益々の活躍と健康を祈念します。
 
 
(触媒化学研究センター)
 

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