| 学士学位記授与式 |
北海道大学連合同窓会会長
JFE ホールディングス株式会社 相談役 |
數 土 文 夫 |
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学士学位記を授与されました2,573名の皆さんに心から祝意を表します。
我が北海道大学は1876年その源流たる札幌農学校の創立以来,現在まで135年間に総勢121,295名の卒業生を世に送り出してまいりました。それら先輩諸兄,同窓会を代表いたしまして,皆さんにご挨拶させていただきます。
皆さんが学位記授与されました,2011年は日本国が,経済的に,社会的に,国家的に激変の年となる予感がいたします。逆境,困難な年であるかもしれません。世界の中で日本国民,日本国家の真価が問われる年になるのではないかと思われます。
逆境,困難な時に,人生において非常に心すべきことが2つあると思います。一つはいかなるときにおいても,我々は「希望」と「志」を失ってはならないということです。クラーク博士は農学校の第一期生16名の学生との別離に際しまして“Be Ambitious”という有名な言葉を残していかれました。しかしながらクラーク博士は,これとは別に,その教頭在職中に,非常に意味深い言葉を学生に投げ続けておりました。それは札幌農学校の校訓になっている“Be Gentleman”という言葉でありますが,日本の全ての大学はもちろん,その他の大学においても一番短い校訓だろうと思います。クラーク博士はその8か月の在職中に,学生達に“Be Gentleman”と言い続けて教育していました。もちろんクラーク博士は,その16名の学生達を紳士として扱い,自分も紳士であるということを実際に見せて教育に携わっていたのではないかと思われます。この“Be Ambitious”“Be Gentleman”という言葉は,非常にシンプルですが,これから長い人生を歩まれる皆さんに,非常に重要な言葉になるのではないかと思います。
話は変わります。今から2500年前,中国の大思想家 孔子は,後世に残した弟子との著書「論語」の中で,始めから終わりまで一貫して「君子たれ」と云い続けております。「君子とは何か?どうしたら君子になれるのか?」ということを終始述べているのです。「君子」という言葉はすでに日本語になっていますが,英語訳としては「Gentleman」が相当すると思います。孔子は論語の中でいろいろな表現で「君子とは何か?」について述べておりますが,「人は貧乏で地位も権力もない時が肝心だ。逆に富も権力も地位も名誉もある時に,他人に善意を示し,他人に対して気配りをし,そして自らが高い希望を持つことはそんなに難しいことではない。しかし,自分が貧乏で地位も権力もない,即ち逆境,困難な時に「志」を堅持し,自分の周りの人々に配慮することほど難しいことはない。しかしこれができるものこそ「紳士」だ,「君子」だ。」と云っております。
札幌農学校の第二期卒業生たる新渡戸稲造博士は今から111年前,1900年にアメリカ,フィアデルフィアでかの有名な「武士道:The Soul Of Japan」を出版して,その中で「日本人の精神の重要な核心は武士道である」とおっしゃいました。“Be Gentleman”「君子たれ」,また「武士道とは何か?」といいますと,どんな境遇にあっても「志」を忘れずに社会に貢献するということこそ人間の本質だと云っているのだと思います。
皆さんの平均寿命は,おそらく90歳くらいになるだろうと私は予想しています。皆さんの人生は長丁場です。その人生の成功のためには,「逆境,困難,これはあって必然だ」とそう思って,焦ることなくおおらかな気持ちで,本日の学位記授与式後の人生を歩んでください。もちろん,皆さんの前途は洋々たるものであります。その上で,皆さんが今までお世話になりましたご両親,ご家族,社会,国家に対して貢献することを第一に考えていただきたいと思います。
最後に重ねて申し上げます。本学の卒業生,同窓会を代表いたしまして,本日の皆さんの学位記授与,心から祝意を表します。 |
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