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東日本大震災における本学の主な支援・対応状況

 このたびの東日本大震災に対し,各部局において,主に次のような支援・対応を実施しています。

●工学研究院で教員を福島県での放射線測定業務へ派遣

 東京電力福島第一原子力発電所から半径20キロ圏内の「警戒区域」に住んでいた人たちの一時帰宅が始まり,そのために必要な放射線測定に参加できる専門家について文部科学省から照会があったことを受けて,工学研究院では小崎 完 准教授,山内有二 准教授,西山修輔 助教の3名を5月と6月に延べ11日間派遣しました。
 先生方は田村市や南相馬市など計5箇所で,一時帰宅する方々へ装備する個人線量計の説明や,その記録の収集,警戒区域から戻ってこられた方々の身体,所持品やご自宅から持ち出してきた物品の放射線量を測定する業務にあたりました。

 業務の実際をお聞きしたところ,「警戒区域に立入する住民の方々は防護服を着用して,20人程度が1台のマイクロバスで地区ごとに移動し,2時間滞在していました。測定は全国の大学や研究機関および電気事業連合会(電力各社,原子燃料事業者など)からの派遣者が,測定機器を持ち込んで行いました。住民の方々は長期間にわたり自宅へ貴重品を取りに行くこともままならない不自由な生活を送っておられたはずなのに,非常に落ち着いていた印象があります。高齢の方々までもが防護服着用を強いられ,持ち出し物品を袋一杯にして汗びっしょりになって戻ってこられたことに心が痛みました」と現地の状況を教えていただきました。
 さらに,「測定側のマンパワーや測定会場の大きさなどの要因から,一度に帰宅できる人数が限られているため,希望している全ての方々が一時帰宅できるようになるには,まだまだ時間がかかるのではないか,と危惧しています。皆さんが少しでも早く一時帰宅できるように,できるだけの協力をしたいと考えています」と,今後も引き続き,この業務にあたることに意欲的でした。

 工学研究院では,藤吉亮子 准教授らが事故直後から環境放射線測定を行い,原子力系教員の執筆した事故内容や放射線被ばくの解説などとともにWebで公開してきています。また,今回の教員の派遣以外にも放射線計測機器の貸し出しを行っております。今後も震災の復興支援に積極的に協力していきます。

(工学院・工学研究院・工学部)

●植物園が被害を受けた植物標本の修復作業に協力

 北方生物圏フィールド科学センター耕地圏ステーション植物園は,大津波によって甚大な被害を受けた岩手県陸前高田市立博物館所蔵の植物標本(さく葉(さくよう)標本)の修復作業に協力しています。陸前高田市立博物館の職員は大多数が死亡または行方不明となり,岩手県教育委員会と県内博物館・文化財関係者が陸前高田市職員やボランティアとともに瓦礫撤去・資料搬出,復元作業にあたりました。植物・昆虫標本は盛岡市にある岩手県立博物館に移送されましたが,被害を受けた標本の数が膨大であることから日本全国の博物館等にレスキュー作業の協力要請があり,それに応じた各地の博物館が,海水と泥をかぶった標本の洗浄,修復作業に取り組んでいます。

 植物園では罹災した植物標本200枚を受け入れ,昨年秋に完成した収蔵庫の一角を使ってレスキュー作業を行いました。標本を少しでも良い状態で岩手県,そして陸前高田市にお返しできるよう,標本を丁寧に洗浄し(塩抜き,泥やカビの除去),乾燥させました。また,採集地などの標本情報が損なわれることがないように標本ラベルなどの扱いには細心の注意を払いました。洗浄作業は6月末に終了したため,今後は受け入れた標本の情報データベースをまとめ,標本の本体と併せて岩手県に返送するための作業を行う予定です。

 各地の博物館に収められている標本や資料は,文系・理系の分野に関わらずその地域の貴重な財産です。「文化財の残らない復興は本当の復興ではない」を合い言葉に,全国の施設と情報を交換・共有しながらレスキュー作業を行っています。

1点ずつビニール袋に入れられた標本を取り出す 水につけて塩抜きした標本を金網を使って静かに水から揚げる
1点ずつビニール袋に入れられた
標本を取り出す
水につけて塩抜きした標本を
金網を使って静かに水から揚げる

(北方生物圏フィールド科学センター)


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