名誉教授 池上二良氏は,7月15日,満91歳をもってご逝去されました。
池上先生は,大正9年5月15日長野県に生まれ,昭和19年9月東京帝国大学文学部言語学科を卒業,同大学院に入学後,昭和20年7月同大学文学部副手,同年10月同大学大学院特別研究生,同26年4月群馬大学学芸学部助教授を経て,同39年4月北海道大学文学部教授に就任し,言語学講座を担当されました。昭和59年4月2日停年により退官,同年4月北海道大学名誉教授の称号を授与されました。本学退官後は同年4月札幌大学女子短期大学部教授となり,平成3年3月停年により退職しました。
この間,昭和51年から同59年までの8年間にわたり,北海道大学文学部附属北方文化研究施設長を併任し,同施設の管理運営に尽力するとともに,同52年には同施設斜里分室の設置に力をそそぎ,北方民族文化研究の発展の基礎を築きました。また,昭和52年4月から同55年1月までの約3年間にわたり,北海道大学評議員を併任し,大学の管理運営にも貢献されました。
研究面にあっては,北東アジア諸言語の調査研究に従事し,なかでも入念な文献研究とフィールド調査を基礎としてツングース諸語の研究を大きく前進させました。特に文献資料による満州語音韻研究,及びサハリン(樺太)のウイルタ語の音韻論・形態論に関する先駆的かつ精緻な分析と記述により,ツングース語研究者として国際的な評価を得ました。また,ツングース諸語の比較研究を推進し,他のアルタイ諸語や日本語およびアイヌ語を含む北東アジア諸言語との関係についても数々の重要な知見をもたらしました。こうした永年にわたる国際的な研究活動に対し,平成14年に常置国際アルタイ学会(Permanent International Altaisitic Conference)から金メダルを授与されました。これは当該分野において国際的にきわめて権威ある賞です。
一方,20年にわたる北海道大学文学部及び同大学大学院文学研究科における教育活動を通して,多数の研究者や教育関係者を育てています。また学会活動においても,日本言語学会評議員・特別顧問,北海道方言研究会顧問など長く指導的な立場を務め,その薫陶を受けた者は全国に及んでいます。
永年にわたるご指導に感謝し,謹んでご冥福をお祈り申し上げます。
(文学研究科・文学部)
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