役員便り

教育・入試等担当副学長 山口 佳三

研究戦略と産学連携

研究,産学官連携,知的財産,安全担当理事

上田 一郎 (うえだ いちろう)

 大学の役割は,教育と研究を通じて社会に貢献することです。研究のテーマは多様であり,その領域も目まぐるしく移り変わっていきます。大学には,先端的研究および将来世界をリードする研究を推進するとともに,中・長期的な視野で個々の教員の研究体制を支援することが望まれます。支援の中には,多様な研究活動に伴う安全の確保も含まれます。また,支援だけではなく,最新の研究成果を社会に還元する仕組みを整備する必要もあります。
 本学の具体的な研究戦略は,総長室のひとつである「研究戦略室」において計られます。その主たるものとして,“重点研究領域の選定”,“先端研究や融合研究の支援”,“若手研究者や国際共同研究支援”などがあり,これらの策定を中期目標に沿って行ないます。研究戦略室は,創成研究機構,産学連携本部,安全衛生本部と連携をとりながら,研究を支援しています。以下では,これらの機構と本部について紹介します。

創成研究機構

 平成21年4月に設置された創成研究機構は,学内の20の研究所と研究センター等を構成組織として連携機能の充実を図り,その研究活動と運営状況について大学運営の観点から評価を行っています。
 また,機構内に設置された研究部では,部局を超えて研究者が参加するプロジェクトの運営を支援し,また物理的に場所も提供しています。例えば,戦略重点プロジェクト研究部門やプロジェクト研究部門は,主に外部資金による大型プロジェクトの運営にあたっています。また大学としても,特定研究部門において先端・融合研究や実用化研究を公募し,全体で4件採択して支援しています。
 共用機器管理センターでは,全学の研究機器について共同利用体制・運営の整備拡充を図っています。有機化合物の構造解析に関わる分野で,大型分析機器を用いて委託分析を行っていた「機器分析センター」と,創成研究機構,触媒化学研究センター並びに電子科学研究所附属ナノテクノロジー研究センターが所有する研究機器を,「オープンファシリティ」として学内外の研究者の利用に供していた機能を統合した組織です。

産学連携本部

 本学は教育と研究に加えて,産学連携や公開講座による社会への知の還元を,積極的に取り組んでいます。研究が基礎であれ応用であれ,その成果が知財として保護の対象となりうるかを判断する必要がありますが,産学連携本部はこの知財保護の手助けをします。
 なぜ,知財保護をするのでしょうか?その先には,研究成果の実用化があります。研究成果は,研究者個人の好奇心から生まれたものかもしれませんが,実用化するためには,様々な観点からその可能性を伸ばしていかなければなりません。企業が参画することもありますし,はじめに成果を生んだ研究者の分野に加え,実用化に必要な異分野の研究者が関わる必要も出てきます。それに応じて,共同研究契約の締結をするほか,大学のプロジェクト参加への役割も明確にしておかなければなりません。このような支援も産学連携本部の仕事です。

安全衛生本部

 多様な研究活動に伴う安全の確保は,大学において重要な課題です。平成16年4月,国立大学法人化に伴って,教職員は人事院規則により管理される国家公務員から国立大学法人の構成員に変わるとともに,安全衛生管理等については労働安全衛生法が適用され,関連の法令も含めて遵守することが求められるようになりました。これに伴い,全学に関連法令を周知,教育,管理徹底するため安全衛生本部を立ち上げました。

終わりに

 本学は,人文・社会・自然科学のほぼ全ての領域を網羅しています。質・層ともに充実した最先端の基礎研究から応用研究まで,今後も総合大学の強みを発揮し,世界をリードすべく特色ある研究を推進して参ります。
目次へ 次のページへ