7月5日(木)の午後1時から午後4時15分まで,人文・社会科学総合教育研究棟W103教室において,経済学研究科・経済学部,地域経済経営ネットワーク研究センターの主催による第9回プレゼン・ディベート大会に向けたセミナー「原発は是か非か!?−エネルギー政策と北海道経済−」を開催しました。セミナー講師として,工学研究院の奈良林直教授と近久武美教授,法学研究科の鈴木一人教授(講演順)を迎えました。
奈良林教授は,「福島の教訓と人類の永続的な発展のための原子力の活用」という題目で講演を行い,原子力安全規制が形骸化したため福島第1原子力発電所事故の被害は甚大なものになったが,内外の他の原子力発電所と同等の安全対策が取られていれば防げたものであり,エネルギー資源の将来,地球温暖化問題,再生可能エネルギーのコストを考えると,より安全性を向上させたうえで原子力発電も利用するべきであるという内容でした。
近久教授からは,「中長期的エネルギーインフラ形成と経済振興」という題目で,再生可能エネルギーを中長期的なエネルギー源の主力とする可能性について説明があり,また,そのため短期的にはある程度コスト高になってもその導入を支援していくことが,長期的には環境にとっても経済にとっても有益であろうと話しました。
鈴木教授は「原発を動かすリスクと動かさないリスク」と題して,事故の前後で地元,その他の国民,政府のそれぞれでリスクに対する意識が大きく異なってきたことを,時点,立場ごとのリスク認識の中身についてわかりやすく説明しました。しかし最終的にどちらのリスクを選択するかは,価値判断の問題なので,理性的に民主的な議論を行って決断する政治的手続きの形成が重要との指摘がありました。
講演後は,3名の講師及びコーディネータを務めた地域経済経営ネットワーク研究センターの町野和夫センター長による,セミナーテーマに関する包括的なパネルディスカッションが行われ,安全規制の在り方,長期的なエネルギー源構成などについての議論を行い,またディベートに際してのアドバイスがありました。10月27日(土)に開催される経済学部主催・第9回プレゼン・ディベート大会では,本セミナーの内容を活用した大きな成果が期待されます。
最後に本セミナーに参加していただいた皆様にも,この場を借りてお礼申し上げます。