同窓会との交流

 恵迪寮歌「都ぞ弥生」が誕生してから百年を迎えたことに伴い,6月9日(土),「都ぞ弥生百年記念祭」が開催されました。本行事に加え,「都ぞ弥生」百年記念事業等について,北海道大学恵迪寮同窓会代表幹事の白浜憲一様にご寄稿いただきましたので,次に紹介します。

「都ぞ弥生」百年記念事業と記念祭

〜世紀を架けて 求め続ける 清き国〜

 明治時代の掉尾を飾る明治45(1912)年,北の大地の壮麗な自然の情景に心を奪われた横山芳介君と赤木顕次君の二人の若人が恵迪寮歌「都ぞ弥生」をこの世に生ましめました。彼らの瑞々しい感性と清らかな野心は,今もなお人々の心を掴んで離しません。「都ぞ弥生」は,喜びで心が高なる時,悲しみで心が震える時,苦しみで心が押しつぶされそうな時,過ぎ去りし恵迪寮生活を懐かしみ,明日に向って仲間と肩組み奏でる心の歌であります。しかも,この寮歌は全北大生の愛唱歌であり,式典歌・応援歌であり,全国各地の多くの人々によって親しみ歌われ続けています。
 恵迪寮同窓会は,二世紀目を迎える「都ぞ弥生」が北大の更なる発展に寄与するものと確信し,歌詞に込められた自然の芸術を讃え,燃えたぎる貴とき野心を受け継ぎ,永遠に歌い継がれんことを願い,現恵迪寮及び北海道大学と連携し,「都ぞ弥生」百年を祝うとともに,この歌の原点を知り,百年にわたり歌い継がれている根源を検証し,北海道大学と恵迪寮のFrontier spiritとBe gentleman with lofty ambitionの今日的意義を北海道のみならず,日本全土,全世界に向かって発信する記念事業と記念祭を展開することにしました。

1.5つの百年記念事業の展開

 恵迪寮同窓会は3年前から「都ぞ弥生」誕生百年を記念して5つの事業を企画し,その実行のため協賛金募集などの活動を展開して参りました。「都ぞ弥生」が歌えない学生の急増への懸念から,平成23・24年度入学新入生5,206名に,恵迪寮同窓会OB合唱隊吹込みによる「都ぞ弥生」CDを配布,また,歌詞に登場するサクラ,ニレ,カツラの木を北海道開拓の村「寮舎」前庭,中庭に記念植樹,更に記念祭参加者配布用に「都ぞ弥生」百年記念誌を発行しました。
 5月20日(日)〜6月20(水),北大総合博物館で開催した百年記念展示は,「都ぞ弥生」に関する数多くの資料を展示し,オープニングとクロージングセミナーも開催し,来場者は延べ約3,000名になりました。
 残された最大の事業は,ドキュメンタリードラマ「清き國ぞとあこがれぬ」の制作です。来春の北海道内TV放映とDVD完成を目指し撮影が始まりました。このドラマが,21世紀における北海道大学の4つの理念の実現と,札幌農学校寄宿舎以来の自治の伝統と歴史を誇りとし,全国で唯一現在も毎年1曲の寮歌を作り続ける恵迪寮の発展の一助となることを期待しています。

2.百年記念祭,延べ1,000名の参加で大成功!

 恵迪寮歌「都ぞ弥生」百年記念祭が6月9日(土),初夏の爽やかな気候の中,北大クーク会館講堂,中央ローン,京王プラザホテル札幌で開かれ,延べ1,000名の参加者が名寮歌の百歳を祝いました。
 クラーク会館講堂の記念式典で横山 清恵迪寮同窓会長は,「北大の貴重な宝である『都ぞ弥生』をこれからも歌い継いでいこう」と力強く式辞を述べ,また,百年記念委員会名誉会長の佐伯 浩総長は「北大も国際化して留学生が各国から沢山来ているが,北大の日本人学生達には海外に出て,いろいろな国の人達と交流して欲しい,北大はそのための仕掛けを作っている」,また「多くの同窓生が北大に集う企画としてホームカミングデーを10月6日に開催する」と挨拶,続いて齋藤和雄北海道大学連合同窓会副会長から「近年,世界はグローバリゼーションの中で社会情勢,経済情勢は不安定で人権問題を含め,極めて混沌とした時代を迎えており,百年にも亘り続いてきた揺るぎ無い恵迪精神,このような精神が今求められているといっても過言ではない」と祝辞を述べられました。外遊中のノーベル賞受賞者である鈴木 章名誉教授からも「北大という共同体の中で私の研究は支えられてきた」と述べられたビデオメッセージが披露されました。
 続いての記念コンサートは,ベルリンからお招きしたヴァイオリニスト植村理葉さんとピアニスト一宮明代さんによる,「クロイツェル」(ベートーヴェン),「ツゴイネルワイゼン」(サラサーテ)が演奏され会場を厳粛なムードに包み,また,この日のために植村さんが作曲した「都ぞ弥生幻想曲」が披露されると満員の館内は拍手喝采の渦に巻き込まれました。
 恵迪寮出身の新進作家 佐川光晴君(47歳)は記念講演で,恵迪寮執行委員長当時の学寮の自治の根幹を成す自主入寮選考権についての大学との交渉を振り返りつつ,自治の伝統を守ることの重要性を強調,また,学寮の「教育施設」としての機能を具体例をあげて熱弁を振るい,大きな拍手が沸きました。
 会場を中央ローンに移しての「都ぞ弥生」大合唱は約600名の参加があり,マスコミ各社の取材を受ける中で大盛況でした。「都ぞ弥生」のインターナショナル化を企図する新しい試みとして,同窓会の有志や留学生によるドイツ語・中国語・韓国語・スワヒリ語・英語で「都ぞ弥生」を歌い上げ,参加者の関心を集め,当日のNHK夕方ニュースでの放映や翌日の新聞各社朝刊で取り上げられました。
 記念祭の締め括りは京王プラザホテル札幌での大寮歌祭です。海外(パリ,オスロ)をはじめ南の沖縄など全国各地から350名を超える仲間で会場は熱気にあふれ,足の踏み場もないほどでした。来賓に続き最高齢の宍戸昌夫さん(96歳)や,作詞者である横山芳介君の子女が紹介された後,何十年ぶりの再会を喜ぶ光景があちこちで見られる中,入寮年次や学部別,友情参加の小樽商大OB,現寮生らが次々に登壇し約30曲の寮歌を高唱しました。思い思いのスタイルで高歌放吟しステージは最高潮に達しました。「都ぞ弥生」の1番から5番まで歌った後,足下が危なっかしい「ストームの歌」と続き,締めの「別離の歌」で大団円となりました。
 正午過ぎの記念式典から,歌いまくり,語り続けて約9時間。参加者全員,世代を超えて集い合える不朽の寮歌「都ぞ弥生」に感謝しつつ会場を後にしました。

3.これからの百年に歌い継がれる「都ぞ弥生」

 横山芳介君が1番に「人の世の 清き国ぞとあこがれぬ」と起句し,5番で「貴き野心の訓え培い 栄え行く 我等が寮を誇らずや」と渾身の一行を結句とした1912年から一世紀。私たちは何を経験し,21世紀を生き抜く世代に何を託すのか。
 先ず,彼は人・モノ・金で動く世の中において,憧れの北斗には人の世があると見極め,2番から5番で北の大地の秋冬春夏と自然が織り成す芸術と畏敬を余すところ無く歌い上げました。正しく自然と調和する中でこそ人間らしく生きられるのだと。この百年の科学と人間の前進と後退を真摯に受け止め,深い教訓と戒めとし,次の百年の明るく希望に満ちた人の世の清き国の創造に生かさなければならない。
 次に,貴き野心の訓え(Be gentleman with lofty ambition)を培うことを人生の不易流行の迪(みち)として生きよということ。時代は流れ移ろうものであるが,私達にはその流行を取り込みながら,その底流にある「不易」を見失わず,誠実にその迪を究め続けることが求められます。
 さらに,集団共同生活のなかでの青春の交歓は,瑞々しい知性と感性を醸成するとともに,人の世の絆=縁=利他の大切さを身体に刻み込みます。人間教育の場としての学生寮を絶やしてはなりません。
 「都ぞ弥生」誕生百年の節目の年に,この3つのメッセージを北の大地と日本の未来の進むべき道標として再認識できることの歓喜は海よりも広く山よりも高い。百年歌い継がれてきた私達の「都ぞ弥生」は,未だ色褪せることなく,北斗の光として燦然と輝き,時空を超えて益々冴えわたっているのです。
記念式典の様子

記念式典の様子

鈴木先生からのビデオメッセージ

鈴木先生からのビデオメッセージ

記念コンサートの様子

記念コンサートの様子

中央ローンでの「都ぞ弥生」大合唱

中央ローンでの「都ぞ弥生」大合唱

大寮歌祭の様子

大寮歌祭の様子

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