1日目には,国際若手ワークショップとセオドア・ウィークス特任教授の記念講演がありました。若手ワークショップの3件の報告は,非承認国家問題と正教会の分離独立に関わるものであり,シンポジウム全体の内容と呼応していました。
2日目の基本コンセプトは「トランスナショナリズム※」でした。これは,地域大国の強さは国別に政治・軍事・経済資源を測るようなやり方ではわからず,むしろトランスナショナルなアクターをうまく利用しているか,それらと協業しているかが重要であるという第5班の基本思想から導き出されたものです。「帝国と政治地理」,「宗教政治とトランスナショナリズム」,「地域大国の周縁と『近隣外国』を跨ぐ紛争」の3セッションが行われ,9件の報告が行われました。
3日目の基本コンセプトは「権威主義体制」でした。中国はまだ古典的権威主義体制であり,CIS諸国(旧ソ連の一部で構成された独立国家共同体)の大半では競争的権威主義体制が成立しています。1990年代に盛んだった民主化論は,古典的権威主義体制から競争的権威主義体制への移行を逸脱としか見ませんでしたが,今日では競争的権威主義体制は,それ自体が実証研究の対象として認められています。「競争的権威主義体制の比較:理論的挑戦」,「体制転換か,それとも体制動態か?政治的揺れ戻しの比較研究」,「地域大国の権威主義的な指導者と言説」の3セッションが行われ,9件の報告が行われました。
若手シンポジウムも含めた報告者の国別内訳(国籍ではなく勤務地別)は次のとおりです。日本10名,アメリカ7名,ドイツ・イスラエル・ルーマニア・ウクライナ・オーストラリア各1名。内容上のバランスについては,パキスタンから来る予定だった研究者が1名キャンセルになったこともあり,南アジアに言及した報告が3件にとどまったことが残念でした。
なお,シンポジウムの後,外国人ゲストのうち希望者は,大阪大学と早稲田大学に分かれてセミナーを行いました。
※国際関係論の理論で,国家よりも多国籍企業・国際NGOなどの国境を越えて活動するアクターに注目すること。