役員便り

教育・入試等担当副学長 山口 佳三

グローバルな大学を目指して

北海道大学総長 佐伯  浩 (さえき ひろし)

 現在,我が国の大学は,さらなる国際化が求められています。多くの留学生を迎え入れるだけではなく,本学の学生も積極的に海外の大学へ学びに行くことによって初めて国際化と言えます。国際化を進めるためには,留学生にも本学が魅力的であることをアピールし,また本学の学生にも海外で勉学を志したいと思える環境を整備しなければなりません。そして,世界各国から留学してきた学生と我が国の学生が,勉学や交流を通じて互いの文化や習慣の違いを肌で感じ,異文化を理解し合うような状況を創り出すことが肝要です。特に,我が国の失われた20年ともいわれている経済情況と先の読めない不透明さから脱するためにも,国際的に通用する人材の養成が,大学の役割として社会から大きく期待されていることは皆様もご承知のことと思います。

 第1期中期目標を検討の際,他の有力総合大学に較べて,本学の留学生数が少ないことが課題としてあげられました。当時は留学生数が,大学の国際化のバロメーターの一つとみられていました。本学の留学生数は700名程度で,他の有力大学の半分から3分の1程度でありました。第1期中期目標期間に入り,本学外国人留学生の出身国で多数を占める中国,韓国を中心に大学間交流協定を積極的に締結するとともに,本学の知名度を国際的に高める新たな取り組みを開始しました。その取り組みの一つが,海外拠点としての本学海外オフィスの設置であります。その目的は,本学への留学の広報等を行い,海外の諸大学との留学生及び研究者の交流促進であります。またそのための情報収集を行っています。2006年,最初のオフィスを北京に設置しました。その後2011年ソウルオフィス,2012年ヘルシンキオフィスとアフリカ,ザンビア共和国にルサカオフィスを設置し,現在4つの海外オフィスが本学の海外広報活動等を実施しており,留学生数も1,400名に達しようとしています。皆様方の出張等の折には是非海外オフィスにもお立ち寄り願えればと思います。

 2002年のヨハネスブルグ・サミットで日本国政府とNGOの提案に基づき,2005年からの10年間を「持続可能な開発のための教育の10年」とする決議が,その年の国連総会で採決されました。それに基づき,文部科学省から大学の「国際戦略本部強化事業」が公募され,本学提案の「持続可能な開発」国際戦略本部が,2005年度から2009年度までの5年間の事業として認められました。その活動の内容は,海外の大学や研究機関との教育研究のネットワーク形成,人材育成を通じた国際協力,教育や研究の成果を共有し,その成果を議論する場の設定,それに持続可能な開発の教育を促進させる政策提言となっていました。それらの具体的活動として,2007年から始められ,国際的認知も高まっている「サステナビリティ・ウィーク」があります。
 また,アジア太平洋地域の持続可能な発展のための教育コンソーシアムProSPER. Netでは,2008年の発足時から中心メンバーとなり,現在,議長大学を務めています。これらの活動は現在,国際本部が担当しています。また,2008年7月に北海道洞爺湖で開かれたG8サミット開催時に,札幌で,世界35の主要大学機関が集まる大学サミットを開催し,『札幌サステイナビリティ宣言』をまとめ,当時の福田康夫首相に手交しました。

 大学としてのこのような国際活動に加えて,部局における「南極大学」など国際教育コンソーシアムでの活動や,2008年に設立されたサステイナビリティ学教育研究センターの活動,サステイナブルキャンパス推進本部の設置,それに国際的な枠組みの中での協同研究への参加は,本学の国際的な認知度を高めることになっています。また同時に,個々の教員の方々にとりましては,教育研究の成果を国際的な場で積極的に発表していくことも重要です。

 これまでに述べた国際的な視点をもった活動が,教職員や学生諸君の意識を変え,本学の国際化を加速することに繋がると考えております。皆様方のご協力を期待します。

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