獣医学部では,平成24年度入学者から国際的水準の獣医学教育を実施するため,帯広畜産大学と共同獣医学課程を編成し,北海道というフィールドを生かした実践的かつ先進的な獣医学教育を行います。この度,北海道大学・帯広畜産大学共同獣医学課程の一環として,1年生(北大獣医学部進学予定者37名・畜大獣医学課程40名,計77名)を対象に,最初の提供科目である「農畜産演習」及び「帯広基礎獣医学演習」を8月20日(月)〜25日(土)に帯広畜産大学で実施しました。
獣医学導入科目群に属するこれらの科目は,1)獣医学の学体系について理解し,教室・教員の教育研究分野を包括的に知ることにより,6年間の獣医学課程で学ぶ獣医学の全体像を把握する,2)農畜産技術の一端を実際に体験し,農畜産への幅広い興味や問題意識を育て,「農業,畜産の基本は,生き物を大切に育て,それが犠牲になり,私たち人間の食料となっていること」を学ぶために開講・実施されました。
本開講は,本学の第2期中期目標にある「大学の教育研究等の質の向上に関する目標」を達成するべく,「獣医学における学士課程教育を充実させるため,帯広畜産大学との共同教育課程を実施する。」という中期計画を具現化したものであり,我が国で初めて学部レベルの共同教育課程をスタートさせた記念すべき授業となりました。
従来から,本学獣医学部は人獣共通感染症やライフサイエンス研究,生態系保全や小動物臨床を重点に,また帯広畜産大学は産業動物診療,生産獣医療や獣医公衆衛生学を重点に教育研究を行ってきました。今や,獣医学は様々な社会的要請,例えば食の安全・安心の確保,動物由来感染症の拡大防止,飼育動物の疾病の多様化や診断・予防・治療技術の高度化,動物愛護や野生動物保護管理など,多様な事柄に対応しなければなりません。このため,両大学がそれぞれ有する優位な教育資源を結集して,これまで一大学だけでは成しえなかった教育課程を編成し,いくつかの講義科目は北大教員が帯畜大で教授し,帯畜大教員が北大で教授します。また,今回のように学生が移動する演習や実習,およびITを用いた双方向遠隔授業も始まります。
今回の演習では,学生は獣医学の学体系の構築や実学としての重要性を十分に学んだものと確信していますが,両大学の教職員サイドからは初めての試みでもあり,時空間的及び経済的な面での不安を抱えての出発となりました。学生アンケートでは,「獣医学に含まれる幅広い学問の概要について学ぶことができて良かった」,「実際にブタやウシに触れながら行う実習は初めてだったのでどれもが新鮮だった。命を犠牲にすることについて改めて考え直す貴重な機会を与えてくれました」などの声が聞かれ,獣医学導入教育として成功であったことがうかがえます。一方で,「宿泊施設から大学までの移動手段として自転車がほしい」,「宿泊施設の場所や設備を改善してほしい」といった,本来共同教育にあるべきインフラ整備が不十分であった点について,多くの学生からの指摘がありました。また,演習内容について「詰め込み過ぎている」,「高度過ぎる」,「時間的な余裕が欲しい」など次年度に向けて改善すべき点が多数あげられました。
以上,ここに共同獣医学課程の夏期集中授業が有意義であったこと,並びに次年度に向けて具体的に改善すべきことを報告しますとともに,総合教育部所属の学生たちに学部専門教育を行うことを容認いただきました関係各位に深謝申し上げます。