大学の中のIT(Information Technology),あるいはICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)といえば,情報基盤センターに設置されている最先端のスーパーコンピュータやクラウドコンピュータから,日常の授業や大学の業務に利用されているあらゆるシステム,また,パソコン内のアプリケーションソフトの類いまでと,ハードからソフトウェアまで幅広く括られています。
ハードは所詮ソフトウェアが機能するための「入れ物」と考えれば,大学はソフトという神経細胞が縦横無尽に張り巡らされた世界,ハードとも考えられます。厄介なのは,この神経細胞は手にとっては目に見えにくく,かつ広く分散しているため,全体像を把握することに手間暇をかける必要があり,場合によっては別のソフトを利用しないと捉え切れないことです。
本学の現状
現在,全教職員の職員証にはICカードが導入され,学生証も順次ICカード化しています。本学では平成17年からICカード導入を検討し始め,ICカードの価格低下など導入コストの状況と効果を睨み,平成23年に運用を開始しました。授業の面では学生の全学教育科目の出欠はICカードで自動集計され,事務局(本部事務棟)の入退出にはICカードが利用されています。
この間,本学のスーパーコンピュータの能力は30倍,サーバ提供能力はクラウド化により15倍と大幅に向上しました。また,役員会等の会議でタブレット端末を利用してペーパーレス化を実現するほか,携帯電話を活用した安否確認システムを導入するなど情報化を進めており,まさに神経細胞が一段と大学の中に張り巡らされた訳です。今後も各部局の建物・教室管理はICカード対応が進み,授業にもICTが活用されていくものと思います。
情報化推進に必要な視点
一度導入されたシステムは,得失を検討したメンバーが交代すると,日常化し既視感の世界に入り,あって当たり前,なくては困るものと化し,便益と導入・運営コストとの比較は形骸化していく状況になりやすいものだと考えます。
さて,ここからが問題ですが,先に述べた“手にとっては目に見えにくく,かつ広く分散しているため,全体像を把握することに手間暇をかける必要”があります。「情報化」とは,便利であるが故に,腹を据えてその必要性,効果を考え,情報漏洩や権利侵害などリスク管理面での防御策を確実にしておくことが大切です。
これからの展開
情報化は目に見えないものの管理を必ず伴うものであり,常に利用状況,使用状況の「見える化」を念頭に付き合わなければなりません。昔から,ソフトを導入するとソフト更新のたびに費用がかさみ,企業はソフトを提供するベンダー(売り手)のために活動しているようなものだとの声が産業界に出たこともあります。ソフトの導入効果などが目に見えていればそのような声も出てこないかと思いますが,本学でも情報環境推進本部において,情報化の費用対効果を常に念頭に置き,環境整備やリスク管理を進めていきたいと思います。