保健科学院FD(ファカルティ・ディベロップメント)では「質的研究は“科学”か?」というテーマで,文学研究科准教授の小田博志先生が講演を行いました。大学院設置に伴い,大学院生による質的研究*手法を用いた発表を聞く機会が増え,質的研究に関するFDの要望が多く出されたためです。講演に先立ち,本学院での質的研究に関するアンケート調査の報告があり,4人に1人が質的研究を指導している一方で,4人に1人が質的研究発表を聞いたことがないということが明らかになりました。次に,事前に質的研究に関する質問事項を用意し,小田先生がそれらに答える形で講演が行われました。講演では,質的研究と量的研究の違いは,リサーチ・クエスチョンに対する研究手法の違いのみで,求めるものは同じであり,その結論は説得性を持たねばならぬこと,併せて,質的研究・量的研究にこだわらず,オリジナリティのある高いレベルの研究でなければならないことが強調されました。
保健学科FDでは,「専門職教育の質の担保と効率的な講義・学内実習の方法」というテーマでグループ討論を行いました。その背景には,保健学科では全く異なる5つの国家資格の医療職教育を極めて少ない教員で行っている実情があります。例えば,1つの国家資格教育を行う学生定員40名のある学部の教員は50名を超えますが,同じ学生定員の検査技術科学専攻と放射線技術科学専攻は,それぞれ,わずか13名に過ぎません。大学院修士・博士課程教育も含めると教員1人当たりの講義数の差は歴然です。このような現状で,いかに効率良く講義や実習を行い,かつ,教育の質を担保するかが,差し迫った問題になっています。そこで今回は,あえて,教授・准教授・講師・助教などの職種別にグループを分け,その方策を議論しました。カリキュラム再編にあたり,示唆に富む議論ができたと思います。
今年度のFDは,昨年同様に人文・社会科学総合教育研究棟を借りて行いました。外は30度を超える残暑の中,冷房の効いた講堂や演習室は,我々の施設とは別世界でした。教育の質を担保し,研究の質を上げるには,教員の努力だけでなく,快適な環境も大切であると実感しました。本年11月からは新棟の建設が始まり,2年後には快適な教育・研究環境が一部ですが整います。保健科学研究院の一層の飛躍を期待していただきたいと思います。
*質的研究
人々の経験や行動の意味を理解することをリサーチクエスチョンとし,言葉・図式・絵をデータとして,新しい解釈や理解を発見することを目的とする研究。