保健科学研究院では,12月9日(日),高校生を対象とした日本学術振興会主催の実体験プログラム「ようこそ不思議な細菌の世界へ!−身の周りの細菌を見てふやして感じてみよう−」(実施代表者:教授 山口博之)を開催しました。
科学に興味を持ちその研究領域に足を踏み入れる学生数が極めて少なくなってきています。これは科学の将来にとって由々しき事態であり,抜本的な解決策を速急に見いださねばなりません。そこで,細菌学を通して科学への興味を次の世代を担う若者にぜひ持ってもらいたいという強い願いから,本研究院ではこのプログラムを継続的に実施しており,今回で5回目の開催となりました。
当日のプログラムには高校生18名,保護者・引率者など8名の計26名の参加があり,大変賑やかな実習となりました。プログラムは参加者の掌や口の中に常在する細菌を培養しグラム染色を通して見てみるという極めて単純なものです。その一方で,参加者の口の中や掌の細菌を見るためには少なくとも1日以上の培養時間が必要であり,プログラムにおさめるための工夫が必要です。そこで,細菌培養用の平板培地と掌型培地を参加者に送りサンプリングしてもらったものを送り返してもらい,実施日には参加者自身が培地上に自分の体から培養された細菌を実際に観察できるようにしました。また,参加者の疑問点や質問に対して誠意を持って対応できるように参加者3〜4名ごとに大学院生や学部生のTAを1名配置したことで,TAを通して実験内容を細部にわたりフォローするとともに,研究室での具体的な研究活動等の話題を通して双方向型のやり取りが可能なリラックスした環境を作り,参加者と実施者との円滑なコミュニケーションを実現しました。そして,今年のプログラムは午前中から開始し,昼食も参加者と実施者が一緒にとり,参加者と実施者の間での会話がより弾むよう工夫しました。さらに,参加者自ら撮影した顕微鏡イメージをUSBに保存し,プレゼントしました。
菌を直接顕微鏡で眺めて驚く参加者の姿を見て嬉しく思うとともに,さらに感動を与えられるプログラムに進化させるための強い意欲が湧いてきたのも事実です。またOHPを用いて体験した内容について参加者に発表してもらい,当日の感動体験を心に刻んでもらいました。最後に,高校生の参加者に伊達広行保健科学研究院長より「未来博士号」が授与され,プログラムを無事終了しました。
東京など大都市とは異なり,地方都市でこの様なプログラムへの大勢の高校生の動員は困難を極めます。そこで本学周辺の高校の先生と連携を図るようにし,本年度は一層それを強化しました。その甲斐あって参加者数は定員20名をコンスタントに維持しています。今後は,高校への出前講演などもプログラムに加え,高校生の積極的な参加をさらに促進したいと思っています。様々な科学ジャンルが交差する保健科学だからこそ可能なオリジナリティーの高い,若い世代の知的好奇心を存分に惹起しうる魅力的な科学融合プログラムを継続して実施していきます。