1月18日(金),第10回脳科学研究教育センターシンポジウム「脳機能イメージング−fMRIで何がわかるか」(世話人代表:保健科学研究院 教授 山本 徹)を医学部学友会館「フラテ」ホールで開催しました。脳科学研究教育センターには医学,薬学,理学,工学,保健科学,文学,教育学など学内14部局の約30名が基幹教員として参加しており,脳科学研究の推進と,大学院講義,実習,合宿研修などを柱とした全学教育活動を行っています。(http://www.hokudai.ac.jp/recbs/)
当センターでは毎年,学内外の脳科学研究者を集めてシンポジウムを開催しており,第10回の節目となる今年は,脳のはたらきを画像化する脳機能イメージング法のなかで最も広く用いられているファンクショナルMRI(fMRI)を取り上げ,fMRIの基本原理を発見された東北福祉大学 小川誠二先生をお招きして行いました。
今回のシンポジウムは,fMRIでどのようなことがわかるか理解を深めていただくことを目的としました。そのため,まずMRIの仕組みや特徴を概説し,fMRIを用いた研究領域の広がりを説明する教育講演を行いました。次の特別講演では,小川先生にMRIの基盤現象であるNMR研究の黎明からfMRIの今後の展望までご講演いただきました。特に,赤血球の基礎的研究からfMRIの基本原理であるBOLD(Blood Oxygenation Level Dependent)効果発見の経緯について詳細なお話があり,一流の研究者の深い洞察力を垣間見ることができました。
続いて,fMRIを用いて心理学,教育学,言語学など高次な脳機能について研究されている4名の第一線の研究者による招待講演を行いました。京都大学 高橋英彦先生は,羞恥心,罪悪感,嫉妬などの情動や意思決定について,本学教育学研究院 室橋春光先生と医学研究科 豊巻敦人先生は発達障害について,情報通信研究機構 藤巻則夫先生は,言語機能について講演されました。高橋先生の講演は,「fMRIが示す,他人の不幸は蜜の味」などわかりやすい言葉で聴衆を引きつけ,室橋先生・豊巻先生の講演は,学習障害,ADHD,自閉症などの発達障害についてfMRIによりどのようにアプローチしていくかが示され,藤巻先生の講演では,MEG(脳磁図計)を用いた詳細解析も含め速読などについての興味深い研究成果が紹介されました。このように,fMRIにより切り開かれるヒト脳機能研究の広がりが十分に実感できました。
シンポジウムには,学内の多数の部局や道内外の他大学などから会場(280名収容)の大半を埋める多くの研究者,学生の参加があり,fMRIにより示される脳機能について関心の高さがうかがえました。今回のシンポジウムが参加者の興味を満たすことに留まらず,総合大学である本学において様々な文理融合的研究がfMRIを用いて推進発展することを祈っております。