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チングルマ (Sieversia pentapetala )

2009. 8. 8 大雪山白雲岳
5弁の白い花をつけるバラ科の小低木で,フワッと広がった羽毛状の果実が稚児車に似ていることによる名前というのは,登山者なら誰でも知っている。日本の高山ではどこにでもあるありふれた高山植物であるが,多雪地には特に多く,大雪山系では湿田周りや湿り気のある斜面に大群落を形成している。真っ白に広がるお花畑を見ても,個別の花を近くから見ても味わい深い。また,初雪前の果実の醸し出す柔らかい色合いも捨てがたいものがある。同じような所に生えるツツジ科やサクラソウ科の植物とは好む環境が少しずつ違っており,あまり混じらないで隣り合った群集を作るのもおもしろい。私にとっては,最初に見た高山植物がチングルマであり,特別な想いのある花でもある。
前理事・副学長 岡田 尚武