電子科学研究所分子生命数理研究分野の李 振風准教授が,生命科学に関する国際共同研究を支援する国際ヒューマン・フロンティア・サイエンス・プログラム(HFSP)推進機構が優れた研究テーマに与える2013年のプログラムグラント賞を受賞しました。受賞内容は,植物の形態発生の背後に存在する調整機構に関するもので,細胞レベルでは分裂過程に含まれる欠損や過剰発現など様々な確率的要素が存在する一方,なぜ組織レベルでは一定の決まったサイズや形がほぼ常に獲得されるかを解明する研究です。応募数715件から23件が選ばれ,日本の研究機関に所属する受賞者は6人で,数学・数理科学は李准教授のみでした(ほか5人は生命科学の研究者)。
今回の受賞は電子科学研究所から,2007年度中垣俊之准教授,2010年度津田一郎教授(数学連携研究センター・センター長),小松崎民樹教授(数学連携研究センター兼務)に次いで4人目で,これは全国的にみても群を抜いて高い獲得数です。理化学研究所(14件),東京大学(9件)に次いで全国で3番目であり,本研究所の場合,大学附置研究所の一研究所で4件全てを獲得しているため,理化学研究所(6研究所で14名受賞)や東京大学(8学科,1研究所で9名受賞)の規模と比較するとその獲得率は特筆に値します。また,過去10年間で2件以上プログラムグラント賞を獲得している大学・研究機関の採択課題38件のうち,数学・数理科学系の分野での採択件数は本研究所の4件を除くとわずかに1件のみです。このことは,数学と諸分野の協働に重点を置く本学の特色とその世界的な認知度を端的に示しており,分子から細胞,そして脳などの高次生命現象の現代生物学に対する数学・数理科学からの寄与として電子科学研究所,数学連携研究センターが日本で中核的な存在であることを物語っています。