名誉教授 川瀬 清 (かわせ きよし) 氏 (享年92歳)
名誉教授 川瀬 清氏は,平成25年3月1日にご逝去されました。先生は大正11年7月11日に長野県に生まれ,昭和21年に北海道帝国大学農学部林学科を卒業し,2年間の北海道帝国大学大学院特別研究生を経て,昭和23年10月から北海道大学農学部助手として勤務されました。昭和30年4月から農学部附属演習林研究部の助教授,昭和47年から教授として林産学とパルプ製造学の教育・研究に取り組み,昭和61年に定年退職されました。この間,昭和36年に農学博士が授与され,昭和59年からは北海道特用林産振興協議会会長を務めました。 サンプル収集が困難な研究として敬遠されていた「腐朽材の化学的研究」に大学院時代から取り組み,キノコの研究と合わせて木材学会の重要な研究分野の先駆けになりました。当時,ペニシリンの精製に不可欠な活性炭の分野ではカラマツのリグニン残存型腐朽材から作った活性炭がペニシリンの収量性能に優れていることを明らかにしました。また,「ササの研究」を約30年間にわたって「ササの資源化」の視点から継続し,昭和43年にはササのパーティクルボードやパルプの原料利用とその収穫跡地をレーキドーザで掻き起こして木本による更新実験計画を提案し,北大雨龍演習林の母子里地区で実行しました。この試験地は道北でも最も早い重機による掻き起こし更新試験地として注目され,今でも学生実習や専門技術研修の場に利用されています。昭和51年には学生向けの「林産学概論」と昭和57年に「新版林産学概論」を北大図書刊行会から出版しました。 北大退職後は,「森と湖の町」幌加内町の専門員として町立高等学校で講師をしながら,特用林産物を活用した町の活性化に従事し,その活動は幌加内町の体験学習メニューの「笹紙作り」や幌加内振興公社の「笹紙」として定着しました。平成元年にササや腐朽材ばかりでなく,キノコや山菜・薬草・木の実などの利用を一般読者に向けにわかりやすく解説した「森からのおくりもの―林産物の脇役たち」(北大図書刊行会)を,平成5年にはササの抗菌性と多糖類の効能と利用を平易に説明した「笹のエキスが効く」(ハート出版)を出版しました。70歳後半からはご自宅で草花の手入れに汗かく日々を送ってきましたが,本年3月1日享年92歳の人生を閉じられました。ここに謹んでご冥福を祈ります。 |