DNA分子鎖を視る,観る,操る 〜「生命の糸」の科学〜
理学部生物科学科(高分子機能学)では平成19年度から毎年,体験入学「ひらめき☆ときめきサイエンス」を実施しています。今年度は,7月27日(土)に理学部5号館学生実験室において,「生命の糸の科学〜DNA分子鎖を視る,観る,操る〜」と題し,高校生を対象に実施しました。
本プログラムは,科学研究費補助金「コイル・ストレッチ転移臨界歪速度近傍での高分子鎖の直視観測」(研究代表者:佐々木直樹)による成果です。事前の告知期間が短かったにもかかわらず,当日は高校生13名が参加してくれました。また,今回は日本学術振興会から「ひらめき☆ときめきサイエンス」推進委員として甲南大学の杉本直己先生の臨席がありました。
開講の挨拶,オリエンテーションのあと,杉本先生から科研費についてのお話がありました。日本の優れた研究や技術は科研費によって支えられていることを説明していただきました。次に,簡単な高分子鎖の物理についての授業を行いました。今回のテーマであるT4ファージDNA分子は水溶液中では数ミクロンの大きさの糸まりですが,T4ファージの中では直径50nmの「頭部」に収納されており,高分子鎖の密度としては水溶液中の約106倍にもなっています。このような大きな高分子鎖密度(サイズ)の変化を,高校生に実験で体験してもらうのが今回の企画です。
授業では,どうやって大幅な密度変化を起こすかについての説明を行いました。クリッカーを用いた授業は好評でした。この後,班に分かれて実験準備に入り,大学院生と一緒に蛍光顕微鏡観察に適切なDNA濃度や,急激な密度変化が起こる沈殿剤濃度の計算を行いました。
お昼は,本学中央食堂で,午後からの実験の話,大学生活の話などに盛り上がりながらのランチとなりました。また,スタッフからは,生活の中で観察される現象をサイエンスで解き明かす試みなども披露されました。
昼食後,簡単な施設見学ツアーを経て,実験室に戻り観察溶液の調整に入りました。午前中に計算した溶液を調整しようと,懸命にピペットマンを操る高校生の姿が印象的でした。蛍光色素を入れいよいよ顕微鏡観察です。星雲のように広がっていたDNA像(コイル状態)がある沈殿剤濃度から輝点(グロビュール状態)になるのを各班が観察しました。スタッフによる定量的解析で,各班のデータを総合した結果,コイル−グロビュール転移が観測できました。この後はクッキータイム(参加者との交流会)に入り,実験の感想や来るべき大学生活についての抱負などを話し合いました。
最後に,参加者に「未来博士号」を授与し,解散となりました。準備は非常に大変でしたが,参加者が夢中になって実験している様子や,熱心に質問する姿を見て,こんなに科学に興味を持ってくれたのなら頑張った甲斐があったと感じています。
実施にあたりご支援をいただいた実施分担者の先生方,事務担当者の方々,また事前準備や当日の実験補助を担当してくれた大学生,大学院生の方々に,深くお礼申し上げます。
“こんぶの森”の未来を考えよう〜ゆたかな海をいつまでも〜
 標本作成 |
 コンブ観察 |
北方生物圏フィールド科学センターでは,7月27日(土)に日本学術振興会の支援を受けて“ひらめき☆ときめきサイエンス〜ようこそ大学の研究室へ〜”を開催しました。
これは,科学研究費補助金による研究「タンパク質プロファイリングによるコンブの環境ストレスマーカーの検索」(研究代表者:四ツ倉典滋)の成果をもとに,大学で取り組んでいる研究の一端に触れてもらうという児童・生徒へ向けた体験型プログラムです。今回は小学5・6年生を対象に,「“こんぶの森”の未来を考えよう〜ゆたかな海をいつまでも〜」をテーマとして忍路臨海実験所で実施しました。
当日の参加者は12名で,地元の小樽市や札幌市を中心に,旭川市や様似町からも集まりました。午前中は“海中の森(コンブの森)の役割と,大学で進められているその保全研究”について講義を行った後,参加者は小グループに分かれて実験所の磯船に乗り込み,箱メガネや水中カメラを使ってコンブの森とそこに暮らす動植物の観察を行いました。
子供たちは事前の講義のなかで前浜の磯焼け(砂漠化)についての説明は受けてはいましたが,実際にその様子を目の当たりにして大いに驚いた様子でした。その後は,磯歩きをしながらコンブの森の環境測定を行いました。測定計器の画面に表示される想像以上の高い海水温や,目の前で多くのコンブがウニに食べられている様子を見て,皆が「未来に向けてなんとかしなければ!」という思いを強くしたようです。
昼食後は,午前中の磯歩きで採集した海藻の同定と押葉標本づくりを行いました。短時間の採集だったにもかかわらず,およそ20種の海藻が同定され,コンブの森のなかの植生が理解できました。
次いで,“コンブの森の環境と,そこに見られる海藻類”について解説した後,実験所で培養保存されているコンブの培養株を参加者各自が高分子ジェルに混ぜ込み,その種苗を海中へ投げ入れる実習を行いました。この作業を通して,子供たちにはコンブの森づくりを身近に感じてもらうとともに,将来に向けて自分たちに何ができるのかを考えるきっかけが与えられたのではないかと思います。今回,終了式で“未来博士号”を受け取った小学生のなかから将来のコンブ博士が誕生するかもしれません。
プログラムの実施にあたり,円滑な進行と安全確保にご尽力いただいた教職員,及び大学院生諸氏に感謝いたします。
体験!ベリー研究の最前線“君も育種家になろう!”

農場にてベリーの味比べ
7月27日(土)に日本学術振興会の支援を受けて「ひらめき☆ときめきサイエンス〜ようこそ大学の研究室へ〜」体験!ベリー研究の最前線“君も育種家になろう!”を開催しました。
これは,科学研究費補助金「基盤研究(C):胚乳の植物体再生系を利用した新規倍数性育種法の開発」,「基盤研究(B):ユーラシア・北米のハスカップ野生遺伝資源の多様性解析と評価に関する研究」(研究代表者:星野洋一郎)による成果をもとに,体験的なプログラムで大学の最先端の科学に触れてもらおうという企画です。今年度で5回目の開催となりました。北方生物圏フィールド科学センター生物生産研究農場で実施しました。
中学生を対象に募集し,本州からの応募も含め,定員の20名を超える参加希望がありました。プログラムの都合上,20名に調整させていただき,当日は欠席者なしの全員参加となりました。
開会式のあと,すぐに農場のフィールドに出て,まずは,ハスカップ,ブルーベリー,カシス,レッドカラント,グズベリー,ラズベリーの果実に触れ,実際に食べながらそれぞれの特徴について学びました。特にハスカップは木によって大きく味が異なることが発見だったようです。ベリーの特徴,分類などについてもワークシート形式で勉強を進めていきました。
次に,開発中のハスカップ収穫機の実演を行いました。果実受け用の傘にどんどん果実が収穫されていく様子はなかなかの迫力で,この自作の収穫機の威力を楽しんでもらえたと思います。
その後,ブラックベリーとラズベリーを実際に交配させる品種改良に挑戦しました。この実験は開花期を合わせるのが難しく,苦労しながら花を見つけていきました。この交配実験の結果は,2ヶ月ほど経った後に果実を参加者に送り,実際にオリジナル品種を栽培してもらう計画です。
午後からはグループごとに3つ実験を行いました。テーマは「生きた花粉が伸びる様子をとらえよう」,「果実の糖度,pHを調べてみよう」,「パラピン紙で交配袋を作ってみよう」で,ローテーションで全員が全ての実験をこなしました。
実験終了後は,クッキータイムで,スタッフ手作りのラズベリーソース,ハスカップソースでアイスクリームを楽しみました。ベリーついて知識を増やした一日を振り返り,味わっても楽しい一日となったと思います。最後に「未来博士号」の授与式を行い,閉会となりました。小さいながらも確かな科学のタネが心に残ったのではないでしょうか。
本事業の開催には入念な準備を行いました。アレルギーの確認など細やかに各参加者と連絡を取るなど準備段階から支えてくれた事務職員の皆さん,圃場の管理などにご協力いただいた技術職員の皆さん,研究室の大学院生・学生諸氏の貢献が非常に大きかったことを記しておきたいと思います。惜しみないご協力に深く感謝いたします。