総合博物館では7月29日(月)にイベント「まっクラ〜ク博物館 小学生編・大学生編」を開催しました。イベントを企画・運営したのは,理学院専門科目・大学院共通授業科目「博物館コミュニケーション特論I 学生発案型プロジェクトの企画・実施・評価」(担当:湯浅万紀子・藤田良治)を受講した6名の大学院生です。
受講生達は,小学生に夏休みの自由研究のヒントを提供するため,また,来館経験の少ない本学の学部1・2年生に博物館の魅力を知ってもらい再訪を促すため,日常とは異なる暗闇の博物館体験を提供したいと考えました。博物館閉館後の時間を使い,受講生自身が担当教員と共に寝袋を持って総合博物館の展示室に泊まり込み,夜の館内を巡ったり,暗闇のなかで標本に光を当てて観察し,そこで体験した発見や驚きを伝えるプログラムを検討しました。昆虫と鉱物,古生物の研究者や大学院生にヒアリングを重ね,昆虫の構造色や紫外線を当てると美しい光を放つ鉱物の輝きなどについて学び,恐竜の骨格標本のシルエットの揺らめきを楽しむ企画を立案しました。
小学生編は,学習レベルを考慮して5・6年生を対象とした2時間のプログラムを,午前と午後の2回開催しました。展示室内での開催としたため,参加人数は各回16名に限定しました。事前に新聞で紹介され,多くの方が閲覧する当館のホームページで参加者を募集したこともあり,札幌市内だけでなく,千葉県や青森県,スイスからの参加者もいました。鉱物と昆虫のグループに分かれた小学生達は,各展示室で大学院生から説明を受けながら暗いなかで標本にペンライトを当てて観察し,明るいなかで見た場合と比較し,各グループで学んだことを別のグループに説明しました。その後,企画展「巨大ワニと恐竜の世界」を暗闇のなかで標本に光を当てて観察し,古生物を学ぶ理学院の大学院生達から説明を受け,壁や天井に映る骨格の影の美しさや揺らめきを楽しみました。ペンライトを当てて,目を輝かせ標本を興味深く観察する小学生の様子が印象的でした。企画終了後,大学院生達は当日の写真と標本の図鑑を掲載した思い出の冊子を作成し,参加者の皆さんに郵送しました。
大学生編は,日没後の午後8時から同10時の間に,1〜3名のグループで,展示エリアとは別の建物北側の収蔵庫が並ぶ暗い廊下を巡り,中谷宇吉郎研究室の復元展示について説明を受け,照明を落とした展示室では鉱物と昆虫の標本にペンライトで光を当てて観察し,解説を聞く企画でした。参加者のなかには,「総合博物館に来たのはこのイベントが初めてで博物館がこれほど面白いとは思っていなかった。」という学生もおり,イベントを通して来館経験の少ない学生の博物館への興味を促す効果もありました。
この企画はメディアの注目も集め,当日はテレビ局3社の取材を受けたほか,新聞にも事前・事後に3回報じられました。これらメディア対応も大学院生が担当しました。大学院生達は,参加者の反応を観察し,アンケート調査を実施し,帰宅後の小学生の感想を伝える保護者からのメールを読みながら,このイベントを評価しています。分析中の結果は,後日,博物館の会議で発表する予定です。
大学院生達の取り組みの経緯は,毎回の授業報告などを掲載した以下のURLからご覧ください。
http://www.museum.hokudai.ac.jp/highereducation/storytopic/45/