国立大学附置研究所・センター長会議第3部会は,10月4日(金)に,部会の会議及び公開シンポジウムを札幌で開催しました。附置研・センター長会議は,全国の国立大学に附置された研究所・センターが相互に連携・協力を行うことにより学術研究の振興に寄与することを目的とする組織で,3つの部会のうち第3部会は,人文・社会科学系の14の研究所・センターで構成されています。今回は,本学スラブ研究センターが部会長校及びシンポジウム当番機関として企画・運営を行いました。
当日は本学学術交流会館において,シンポジウム「比較研究の愉しみ」を開催しました。第3部会の研究所・センターの活動において大きな比重を占めるのは地域研究(外国研究)ですが,ある地域の個性をより深く理解するためにも,世界全体の構造を把握するためにも,地域間の比較研究が重要であるという認識が近年広まってきています。総合司会の宇山智彦スラブ研究センター長による趣旨説明と,川端和重研究担当理事・副学長による挨拶の後,以下の3つの報告が行われました。
いずれも世界的な視野と地域に密着した知見を兼ね備えた,知的刺激に富む報告でした。討論者は,地域比較研究を多く手がけている京都大学地域研究統合情報センターの林 行夫センター長で,昔の比較研究のように各地域の先進性・後進性を強調するのではなく関係性や相同性を発見することの重要性,文理融合だけでなく「文文融合」を進める必要性,比較研究の成果の理論的一般化や社会的公開のあり方などについて,有益なコメントをいただきました。討論者と報告者・司会者の間の議論も盛り上がり,計63名の参加者は熱心に聞き入っていました。
シンポジウム終了後,札幌アスペンホテルに会場を移して第3部会の会議が開かれました。附置研・センター長会議及び部会の運営に関する議題のほか,文部科学省研究振興局学術機関課の木村直樹課長から,国立大学改革の推進や共同利用・共同研究拠点の中間評価結果について説明があり,所長・センター長との間で熱心な議論が交わされました。大学改革の動きが激しくなる中,全国的・世界的な共同研究を先導する研究所・センター間の協力を深めるため,附置研・センター長会議全体としても活動を活発化させているところです。特に文系の研究所・センターは,人類社会に関する多面的な研究を基礎としながら,国内外での各種政策提言や歴史認識の深化など,日本という国の国際社会における調和と競争力の向上に直結する活動を行っており,その意義に対する政府や一般社会の認識を高めるため,第3部会の活動はますます重要になっていくと思われます。