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北方生物圏フィールド科学センターで「野外シンポジウム2013
〜森をしらべる〜 南紀−古座川編」を開催

 北方生物圏フィールド科学センターでは,9月23日(月)から27日(金)までの4泊5日の日程で「野外シンポジウム 2013 〜森をしらべる〜 南紀−古座川編」を開催しました。野外シンポジウムは,本センターが管理する広大な森林や渓流で行われている森林研究を現場で見て,調査を実際に体験しながら,何がどこまで解明されたのか,そしてこれから何を明らかにする必要があるかについて考える場です。参加者は全国の大学学部生を対象としており,様々な大学・専攻・学年に所属する学生が集います。
 16年目となる今年の野外シンポジウムは,8月の中川・天塩編に加え,本学では唯一の道外施設でもある和歌山研究林で初めて開催しました。温泉保養地として有名な南紀白浜から車で1時間半,人口約200人の源氏の落人伝説が残るひときわ山深い小さな集落にある和歌山研究林に,本学の学生を含む全国各地の国公私立大学から森林研究に興味を持つ11名の学生が集まりました。プログラムの基本スタイルは,日中に野外で実際の調査を経験するフィールドセッション,詳しい解説や質疑応答を中心とした夕食後の室内でのポスターセッション,そして,参加学生がグループに分かれ,それまでのセッションで学んだ情報をもとに「仮想」の研究を考え,それを発表するアンビシャスセッションの3段構成になっています。
 フィールドセッションでは,夜の森を歩きながら特殊な機械を使って人の耳では直接聞くことのできないコウモリの声(超音波)による調査やシカの生息密度を推定するための糞探し,渓流の川底にいる生き物探し,高さ20mのジャングルジムに登って高い木の枝の調査など,様々な分野に関するセッションが行われました。
 宿舎に戻って一息入れた後,夕食後のポスターセッションの時間は,現場でのセッションの内容をより深く理解するために,ポスターを使ったプレゼンテーションが行われました。参加者は寝る時間を惜しむように活発な質疑応答を繰り広げました。文系学部学生も含む多くの参加学生にとっては,初めての学会形式のポスターセッションでした。研究の楽しさや難しさだけでなく,研究者たちの苦労話や試行錯誤の裏話などを聞く良い機会となり,毎日夜遅くまで楽しい交流の時間が続きました。このほかにも,早朝に散歩しながら集落の歴史について話を聞いたり,あらかじめ設置しておいたトラップを使って森でネズミを採るなど(残念ながら1匹も捕れませんでした),盛りだくさんのメニューが用意され,雄大な自然を対象とした野外研究の楽しさを満喫しました。
 全てのセッション終了後にあるアンビシャスセッションでは,興味のあるテーマに分かれたチーム別にプレゼンテーションが行われました。発表されたテーマは,「ウンチとタネは仲良し?」「どんぐりの形と気温の関係は?」「イロトリドリのドクキノコ」の3つです。準備する時間は半日と大変短かったにも関わらず,とても魅力的で興味深い仮想研究が発表されました。
 参加した学生たちは「研究者の方が研究の話の時はとても熱心で真面目で,お話しするときは気さくで,それがとても印象的だった」,「調査する場で説明を受けながら,フィールドワークできたのがとても楽しかったです」,「フィールドセッションがあって昼間に学んだことを夜のポスターセッションでさらに詳しく聞けてとても効率が良かった」「話に夢中になってメモをとる時間が少なかったことが反省」といったシンポジウムの内容に関する感想の他,「料理も毎回おいしくて幸せでした」,「コウヤマキのお風呂が素晴らしかった」など,和歌山研究林スタッフによる「おもてなし」や国登録有形文化財に登録された研究林施設等に感激した学生も多かったようです。今後,卒業研究や大学院での研究に役立てたり,就職しても森林に興味を持ち続けてもらうことを願いながら,野外シンポジウムは閉会しました。
 事業の概要は,ホームページに掲載されていますので,ぜひご覧ください。
◆森林圏ステーションホームページ
 http://forest.fsc.hokudai.ac.jp/~yagai/bosyu/2013/index.html
◆和歌山研究林ホームページ
 http://www.za.ztv.ne.jp/hokudai/yagaisymposium/2013.html
林内見学で林業用モノレールを体験

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朝の平井集落散歩

朝の平井集落散歩

ヨコエビ探しの様子

ヨコエビ探しの様子

葉から放射される光を使って葉の特性の調査

葉から放射される光を使って葉の特性の調査

ジャングルジムに登って高い木の枝の調査

ジャングルジムに登って高い木の枝の調査

アンビシャスセッションの様子

アンビシャスセッションの様子

(北方生物圏フィールド科学センター)

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