北海道大学総長 山口 佳三

年頭の挨拶

北海道大学総長 山口 佳三 (やまぐち けいぞう)

 新年あけましておめでとうございます。
 平成26年の年頭にあたり,北海道大学の教職員,学生・大学院生の皆さんに,新年のご挨拶を申し上げます。

 今年4月からは,国立大学法人にとっては,第2期中期目標・中期計画期間の5年目に位置します。期末を迎え,第2期の法人評価の準備に入る年度であり,第3期の中期目標・中期計画の立案に取り掛かる年でもあります。しかしながら,一昨年末の政権交代以来,ここ一年,国立大学法人を取り巻く社会の状況は急速に変化してきています。政府に置かれた経済財政諮問会議,産業競争力会議,また教育再生実行会議等を通じて,大学に対する社会からの,特に経済界からの要請が矢継ぎ早に出されています。この中で,大学のガバナンスの問題,高大接続の問題としての「達成度テスト」についての提言がなされ,それを受けて,これらの問題は現在,中央教育審議会において審議されています。すでに,大学のガバナンスの問題は,中教審の大学分科会組織運営部会において「大学のガバナンス改革の推進について」と題する答申として取りまとめの準備がされています。これについては,平成26年度中にも各国立大学法人が対応を迫られる課題となるものと思われます。
 さらに,この一連の流れの中で,文部科学省は,昨年11月に,「国立大学改革プラン」を策定し,第3期中期目標期間に向けての「国立大学の改革」の方向性を示し,ミッションの再定義を踏まえ,国立大学法人の自主的・自律的な改善・発展を促す仕組みの構築を図るとしています。その中で,第2期中期目標期間の残り2年間あまりは,改革加速期間と位置付けられました。この期間に,国立大学の機能強化として,社会の変化に対応できる教育研究組織づくりを図る取組を運営費交付金等により重点的に支援するとされています。この期間の機能強化の方向性として,グローバル化を支える国際水準の教育研究の展開と積極的な留学生支援,イノベーション創出のための大学発ベンチャー支援と理工系人材の戦略的育成,人事・給与システムの弾力化,ガバナンス機能強化等が具体的な目標を持って示されています。
 私は,昨年4月の総長就任の挨拶の中で,「社会と連携して研究し,社会と協力して教育する」大学を目指すべきこと,そのために,第3期中期目標期間に向けての体制整備の必要性を説きましたが,前倒しで今年から始めなければならない情勢となってまいりました。消費税導入に伴い大幅増となった,平成26年度の政府予算案を見ましても,文部科学省関係予算では,国立大学運営費交付金が昨年度よりわずかながら増額となったとはいえ,その配分に上述の「国立大学改革プラン」の方向性が色濃く出てきているようです。実際,本学への運営費交付金配分予算を見ましても,これまで各部局から提案いただいたものを選別して順位を付けて要求していました特別経費のプロジェクト分が大変厳しくなっており,上述の改革加速期間における方向性をも考慮して,今後の概算要求の仕組みを見直していく必要性を感じています。皆さんの良い知恵を,頂戴したいと思います。
 さて,ここで,北海道大学のこの1年の歩みを振り返りたいと思います。まず,研究推進の面では,4月に文部科学省「国際科学イノベーション拠点整備事業」に採択され,平成26年度中には北キャンパスエリアに「フード&メディカルイノベーション国際拠点」が建設される運びとなりました。そして12月に研究成果展開事業センターオブイノベーション(COI)プログラムに,COIトライアルとして採択されました。平成26年度には,これを革新的イノベーション創出プログラム(COI STREAM)に展開することが喫緊の課題です。これによって,本学における産学連携の新局面を切り開きたいと考えています。平成26年度政府予算でも,科学技術予算は,科学研究費助成事業(科研費)をほぼ現状維持しつつ,政府の「日本再興戦略」及び「科学技術イノベーション総合戦略」を踏まえて,戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の創設,医療分野の研究開発推進のための「日本版NIH(日本医療研究開発機構)」の創設,並びにCOI事業を含む科学技術イノベーション・システムの構築等に予算配分されており,科学技術立国を支える内容となっています。北海道大学としても,科学技術立国を支える一翼の担い手でありたいと考えます。この環境の中で,皆さんの今年の研究面での大いなる活躍を期待したいと思います。
 こうした研究推進面での新展開を図る一方で,昨年は,平成23年7月に札幌国税局より指摘のありました本学教員の関わる不正経理の調査とその処分の問題に,残念ながら,多くの時間が割かれ,新聞誌上をも賑わせました。この問題については,現在,「不正使用調査委員会」において,平成16〜18年度にのみ,不適切と思われる取引記録のある在職教員を中心に調査を実施しており,この不正経理問題の全貌についての最終的な結果を平成25年度内に提出すべく努力しています。本学としては,この問題処理に多くの時間と労力を割く結果となりましたが,この検証過程を無駄にすることなく,不正経理問題の再発防止に向けての糧とし,「北海道大学では,二度と不正経理問題を起こさない」環境づくりを推進してまいりたいと考えます。
 次に,北海道大学が取り組むべき国際化の推進について述べたいと思います。昨年5月には「新渡戸カレッジ」を開校しました。本学OB・OGである新渡戸フェロー10名のカレッジ生に対する熱い思いに感動を覚えます。今年は,カレッジ生の進級に応じて,各学部での留学支援体制の構築をお願いしなければなりません。また,平成27年4月から,「現代日本学プログラム」が始まります。この2つのプログラムによって,バイリンガルキャンパス化を推進します。さらに,今年はこれらの事業を発展させる形で,本学としての「スーパーグローバル大学」構想を築かなければなりません。そのためには,飛躍的な留学生数の拡大計画を立案する必要がありますし,それを支える仕組みとして,これまでに開拓した大学間交流協定締結大学の中から選別して,研究交流・学生交流の太いパイプを築ける重点交流大学を作り上げていく必要があると考えます。そうした交流を支える海外オフィスの更なる展開も必要でしょう。ここでも,皆さんの持てる力の結集を期待したいと思います。
 冒頭にも述べましたが,平成26年度は,第2期中期目標期間の法人評価の準備に入る年度であり,第3期の中期目標・中期計画の立案に取り掛かる年でもあります。皆さんの良き知恵を結集してこれに当たりたいと考えます。本学の次に目指すべきものを明確にすべく協議したいと思いますので,ご協力のほどよろしくお願いいたします。

 最後になりましたが,平成26年が北海道大学の将来に向けての新しい踏み出しの年となることを祈念しますとともに,教職員並びに学生・大学院生の皆さんにとって実り多い年であることを心より願い,新年の挨拶とさせていただきます。




新年交礼会の様子

 1月6日(月),山口総長の年頭の挨拶とともに,新年交礼会が始まりました。会場となった百年記念会館大会議室には,役員,部局長等が大勢集まりました。

乾杯の発声をする新田孝彦理事・副学長

乾杯の発声をする新田孝彦理事・副学長

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