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スラブ研究センターが冬期国際シンポジウム
「災難と再生:変動するスラブ・ユーラシアへの新しい研究視角」を開催

 スラブ研究センターでは,恒例の冬期国際シンポジウムを12月12日(木)・13日(金)の両日にわたって開催しました。今年のテーマは「Catastrophe and Resurrection: New Approaches to a Changing Slavic Eurasia(災難と再生:変動するスラブ・ユーラシアへの新しい研究視角)」でした。
 このテーマは東日本大震災の起こった3.11後の世界を念頭に置いたものですが,自然災害だけでなく,大きな社会的災害ないし社会的な変動に伴う混乱をも視野に入れています。つまり,戦争や革命も「カタストロフィー(災難)」だと捉え,人々がカタストロフィーをどう記憶し,どう克服していくかに焦点を合わせようというのが今回のシンポジウムのテーマでした。
 戦争や革命を自然災害と同じカタストロフィーとして捉えることの意味は,「敵・味方」あるいは「勝者と敗者」という対立的世界観を超えた見方をすることです。敵・味方を超えて,また勝者と敗者という立場を超えて,生き残った者,共に痛手を負った者として,あるいはカタストロフィーを共に経験した者として,新たな人間関係や社会関係を築く方向に如何に人々が向かうことできるか,という点を議論の焦点としました。
 今回のシンポジウムでは以上のような共通の問題関心を基礎として,6つのセッションが設けられました。具体的なテーマは「ロシア帝国におけるムスリム社会の危機と再生」,「ポスト・ソ連期20年の中央アジアにおける体制変動」,「チェルノブイリ・福島と地域の再生」,「国境観光の比較」,「ロシアと極東における第二次世界大戦の記憶」,「ロシア・ソ連文化における"よそ者"のイメージ」でした。また海外からはロシア,ウクライナ,ウズベキスタン,カザフスタン,エストニア,メキシコ,アメリカ,イギリスの方が参加しました。
 今回の国際シンポジウムの開催は,くしくも南アフリカ共和国の前大統領ネルソン・マンデラ氏が他界した直後でした。彼の示した道,すなわち人種差別の撤廃は敵・味方を争うことではなく,敵・味方を超えることから始まるという和解の思想は,南アフリカ国内に留まらず,世界の規範となるべきものです。
国際シンポジウムの様子

国際シンポジウムの様子

第6セッションでの報告

第6セッションでの報告

(スラブ研究センター)

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