11月29日(金)に,第11回脳科学研究教育センターシンポジウム「快・不快の神経基盤の解明と応用」(世話人代表:薬学研究院 南 雅文教授)を医学部学友会館「フラテ」ホールで開催しました。
脳科学研究教育センターには医学,薬学,理学,工学,保健科学,文学,教育学など学内15部局の約30名が基幹教員として参加しており,脳科学研究の推進と,大学院講義,実習,合宿研修などを柱とした全学教育活動を行っています(参考URL:脳科学研究教育センターホームページhttp://www.hokudai.ac.jp/recbs/)。また,毎年,学内外の脳科学研究者が参加するシンポジウムを開催しています。
今回のシンポジウムは,「快・不快」という人間あるいは動物の行動を規定する根源的な脳機能をテーマにして,その神経基盤の基礎研究から,医療や社会・経済における応用研究に至るまでの幅広い分野での研究について講演が行われました。
吉岡充弘センター長(医学研究科)による挨拶とセンター紹介に続き,新田孝彦理事・副学長が挨拶した後,セッションを開始しました。セッション1「快・不快の神経基盤」では,南教授からは痛みが不快な気持ちを引き起こす脳内神経機構について,松本正幸先生(筑波大学医学医療系)からは快・不快の神経機構における中脳ドパミン神経と外側手綱核神経の役割について,それぞれ最新の研究成果が紹介されました。セッション2「快・不快のイメージング」では,横澤宏一教授(保健科学研究院)がMEG(脳磁図)による快・不快の脳活動の研究について,井上 猛准教授(医学研究科)がうつ病における行動賦活系と行動抑制系に関してfMRI(機能的核磁気共鳴イメージング)実験も交えたヒトでの研究について,釣木澤朋和先生(味の素株式会社イノベ−ション研究所)が齧歯(げっし)類でのfMRI等の研究手法を用いた味覚・内臓感覚刺激による快不快の神経機構の研究について講演しました。セッション3「快・不快の行動神経科学の社会応用」では,山川義徳先生(NTTデータ経営研究所マネジメントイノベーションセンター)から,快・不快情動の脳科学研究を応用したニューロマーケティングの様々な取り組みが紹介され,高橋泰城准教授(文学研究科)からは行動神経経済学に関する最新の研究成果と知見が紹介されました。最後に,渡邉雅彦副センター長(医学研究科)の挨拶があり活況のうちに閉会となりました。
多部局からなる脳科学研究教育センターの特色が活かされ,快・不快という脳機能を軸に幅広い分野の研究や応用への広がりを実感できるシンポジウムで,学内の各部局や道内外の他大学などの研究者・学生,約100名の参加があり,活発な質疑応答がなされました。今回のシンポジウムが参加者の皆様の興味を満たすとともに,学内外の研究の新しい展開につながっていくことを願っています。