訃報

名誉教授 小林 好宏 (こばやし よしひろ) 氏 (享年78歳)

名誉教授 小林 好宏 氏  名誉教授 小林好宏氏は,平成25年12月22日にご逝去されました。ここに,同氏の生前のご功績を偲び,謹んで哀悼の意を表します。
 同氏は,昭和10年2月9日北海道に生まれ,同32年北海道大学経済学部を卒業,同37年北海道大学大学院経済学研究科博士課程を単位修得退学し,同年7月に山口大学経済学部講師に採用されました。昭和40年4月に北海道大学経済学部助教授に昇任後,同46年3月には北海道大学から経済学博士の学位を授与され,同52年4月北海道大学経済学部教授に昇任,平成6年1月から同7年12月まで経済学部長及び大学院経済学研究科長に就任し,同10年3月に停年により退職し,同10年4月に北海道大学名誉教授の称号が付与されました。
 その後,平成10年4月から同17年3月まで札幌大学で経済学部教授として教鞭を執り,同17年4月から同21年3月までは北海道武蔵女子短期大学の学長に就任し,大学の運営と発展のために尽力されました。
 また,平成20年4月から財団法人北海道地域総合振興機構(現 公益財団法人はまなす財団)会長を経て,同23年4月から公益財団法人はまなす財団理事長に就任し,財団の発展に努められました。
 同氏は北海道大学に着任後,産業構造論や企業行動論,経済政策論などの講義を担当し,様々な分野で活躍する多くの優秀な研究者を育てたのみならず,初年次教育も担当して学生の経済学に対する啓蒙に腐心するなど,教育面において多大な貢献をされました。
 研究業績は,産業組織論,公共選択論,産業政策・サービス産業論,法や制度の経済分析の4つに大別されます。
 まず,産業組織論について,寡占経済体制を成熟資本主義の典型的な姿として把握し,それを経済停滞と結びつけるのが一般的な傾向であったのに対し,同氏は寡占化の傾向を市場の拡大との相対関係として捉え,寡占経済にも競争的側面と協調的側面の二面があること,市場の規模や成長,産業の技術的特質等,様々な要因によってこの2つの側面のいずれかがより強く表れることを理論と実証の両面から明らかにしたことで高い評価を受けられました。また,造船業の研究,企業行動,系列あるいは企業集団の研究に取り組み,それらの成果をまとめた著書を意欲的に刊行されました。
 次に,同氏は公共選択論を米国での在外研究で学び,日本の官僚制の経済分析に代表される,産業組織論の分析手法と官僚組織や官僚行動を結び付ける研究を行い,海外でも高い評価を受けられました。
 続いて,同氏は長年携わってきた北海道の開発や札幌の都市計画,道内各地域の振興計画等の経験と産業論研究を結び付け,産業政策・サービス産業論の研究を進め,地域経済や都市問題,土地問題,住宅問題等に関する論文・論述を多数発表されました。
 最後に,事故の安全の経済分析など,法や制度の経済分析を行い,特に事故や事件によって発生する社会的損失を最小化するための制度設計に強い関心をもって取り組み,実質的な社会制度構築に寄与されました。
 北海道大学においては,教養部の制度改革に関わる委員を務めるほか,学生部委員会委員として学生の厚生補導に力を注ぎ,平成元年8月から2年間は評議員として全学の管理運営に参画されました。
 北海道大学外においては,理論・計量経済学会(現日本経済学会)理事,日本計画行政学会理事,日本計画行政学会常務理事・北海道支部長,日本都市学会理事,北海道都市学会(現北海道都市地域学会)会長などを歴任され当該学会等に多大な貢献を行い,特に日本計画行政学会からは平成22年9月10日に功績賞を授与されました。また,一般社団法人北海道開発協会副会長及び会長,一般社団法人石狩川振興財団理事,財団法人北海道労働協会理事長などを務め,北海道の発展に寄与されました。
 また,北海道開発庁の北海道開発審議会特別委員や北海道開発審議会委員を務め,国が行う北海道開発計画の策定をはじめ,北海道開発に係る国の施策に携わるとともに,北海道内で行われる国の事業の適否を審議する北海道開発局事業審議会委員長を務められました。また,北海道においては北海道商工業振興審議会会長,北海道地方競馬運営委員会委員長,北海道地方労働委員会公益側委員,北海道公害対策審議会委員等を務め,北海道の産業振興,労使関係の安定,環境管理等に尽力されました。
 さらに,札幌国税局土地評価審議会委員を務めるとともに,札幌市においては,長期総合計画審議会委員や総合交通対策調査審議会委員,都市計画審議会会長,市営企業調査審議会会長,中小企業振興審議会会長,北海道地域情報化推進委員会委員,北海道総合エネルギー対策推進会議委員,北海道地域技術振興委員会委員など,札幌市の都市計画やエネルギー問題等に関して重要な役割を担い,その功績を評価され平成24年11月19日には札幌市市政功労者表彰を受けられました。
 そして,これまでの功績により,平成25年11月には瑞宝中綬章を受章されました。
 以上のように,同氏は研究者として優れた業績を挙げるのみならず,35年以上にわたり,本学の研究教育・運営に尽くすと同時に,我が国及び北海道の地域社会の発展に貢献されました。
 ここに,謹んで先生のご冥福を心よりお祈り申し上げます。

(経済学研究科・経済学部)

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