本国際シンポジウムは,文部科学省の共同利用・共同研究拠点の認定を受けている触媒化学研究センターが,拠点活動の一環として「日本が誇る先駆的研究成果を"日本の研究機関の主導で"海外において情報発信する」というコンセプトの下で企画し,平成17年度のアーヘン工科大学(ドイツ),平成18年度のパデュー大学(アメリカ合衆国),平成19年度のリヨン大学(フランス),平成20年度のスウェーデン王立科学アカデミー(スウェーデン),平成21年度のモスクワ大学(ロシア),平成22年度の北京大学(中国),平成23年度のヨーク大学(カナダ),平成24年度のケルン大学(ドイツ)及びストラスブール大学(フランス)で行ってきたシンポジウムに続くものです。このたび,第10回を昨年10月25日(金)にプラハ・カレル大学(チェコ・プラハ)で,第11回を1月9日(木)・10日(金)エモリー大学(アメリカ・アトランタ)において,開催しました。
CRC International Symposiumは,平成23年度まで「クロスカップリング反応」を主なテーマとしてきましたが,2010年ノーベル化学賞を「溝呂木・ヘック反応」のリチャード.ヘック氏(米国デラウェア大学名誉教授),「鈴木カップリング」の鈴木 章氏(北海道大学名誉教授,触媒化学研究センター特別招へい教授)及び「根岸カップリング」の根岸英一氏(米国パデュー大学特別待遇教授,触媒化学研究センター特別招へい教授)の3氏が受賞したことからその重要性は世界的に明らかになり,区切りがついたため,平成24年度からは「有機合成触媒」と「触媒理論化学」の2つをテーマに年2回開催しているものです。なお,「触媒理論化学」の第1回目であったストラスブールでのシンポジウムに特別講演者として参加されたMartin Karplus氏は,その年12月にノーベル化学賞を受賞され,同じく招待講演者である諸熊奎治氏も同研究領域において重要な貢献をした研究者として,ノーベル委員会の報告書に名前が掲載されました。
10月25日 CRC International Symposium in Prague "Asymmetric C-C Bond Formation & Organometallics"(於:プラハ・カレル大学)
プラハのシンポジウムには,2010年ノーベル化学賞受賞者の根岸英一氏,この分野で先駆的な役割を果たしている日本人研究者3名に加え,地元チェコから2名,ドイツから1名,スイスから1名の研究者を講師として招待しました。
集合写真 |
 オープニング |
 講演の様子 |
講師一覧
日本人研究者
シンガポール科学技術研究庁・材料研究・工学研究所(IMRE)教授 林 民生氏,
微生物化学研究会微生物化学研究所化学系所長 柴ア正勝氏,シカゴ大学教授・中部大学研究推進機構長 山本 尚氏
チェコ チェコ共和国科学アカデミー有機化学・生化学研究所 Prof. Ivo Stary,プラハ・カレル大学 Prof. Jana Roithova
ドイツ アーヘン工科大学 Prof. Dieter Enders
スイス バーゼル大学 Prof. Andreas Pfaltz
1月9・10日 CRC-EC Joint International Symposium on Chemical Theory for Complex Systems(於:エモリー大学)
アトランタのシンポジウムは,本学触媒化学研究センターとエモリー大学エマーソンセンターの共催により実施されました。
始めに,エモリー大学エマーソンセンター長 Jamal Musaev氏,本学触媒化学研究センター長 福岡 淳教授によるそれぞれの開催挨拶の後,エマーソンセンターアウォード受賞セレモニーが行われ,先のノーベル化学賞を受賞したMartin Karplus氏等と並ぶ重要な功績を挙げられた京都大学福井謙一記念研究センター 諸熊奎治シニアリサーチフェローが受賞されました。
引き続き,講演会が行われ,この分野で先駆的な役割を果たしている日本人研究者6名に加え,地元アメリカから9名,スウェーデンから1名の研究者が講師として招待され,講演しました。
また,直前に記録的な大寒波がアメリカを襲い,カナダからの招待講演者Prof. Tom Ziegler(カルガリー大学)が出席することができなくなるなど,一時開催が危ぶまれましたが,その他の招待講演者及び本センターからのスタッフ等は事前に現地入りすることができ,無事に開催することができました。
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集合写真 |
 オープニング |
 講演の様子 |
講師一覧
日本人研究者
京都大学福井謙一記念研究センターシニアリサーチフェロー 諸熊奎治氏,量子化学研究協会研究所所長 中辻 博氏,
東京大学教授 高塚和夫氏,同 山下晃一氏,京都大学教授 林 重彦氏,本学准教授 中山 哲氏
アメリカ
カリフォルニア工科大学 Prof. William A. Goddard, III,カリフォルニア大学バークレー校 Prof. William H. Miller,
ノースウェスタン大学 Prof. George C. Schatz,エモリー大学 Prof. Joel M. Bowman,同 Prof. Francesco Evangelista,
同 Prof. James T. Kindt,ウィスコンシン大学 Prof. Qiang Cui,ジョージア工科大学 Prof. Rigoberto Hernandez,
同 Prof. C. David Sherrill
スウェーデン ストックホルム大学 Prof. Per E. M. Siegbahn
どちらのシンポジウムにもたくさんの参加者が集まり(プラハ180名,アトランタ117名),熱心に講師の話に聞き入っていました。また,講演後の質疑応答時には多くの質問が寄せられ,盛況のうちに終了となりました。
第10回のシンポジウムには,本学から,触媒化学研究センター 高橋 保教授,宋 志毅助教,技術職員3名及び北キャンパス合同事務部事務職員1名が,第11回のシンポジウムには,触媒化学研究センター 朝倉清高教授,長谷川淳也教授,中山 哲准教授,有賀寛子助教,技術職員3名及び北キャンパス合同事務部事務職員1名が参加し,会場となった大学のスタッフと共に運営にあたりました。
今回の2つの CRC International Symposiumの開催にあたり,プラハ・カレル大学及びエモリー大学の関係者の方々には,会場の手配・設営,シンポジウム開催の周知等,多大なるご尽力をいただきました。誌上を借りて感謝申し上げます。
触媒化学研究拠点として認定を受けている触媒化学研究センターは,拠点への研究者コミュニティからの要請に応えるべく,今後も情報発信型シンポジウム等の活動を継続する予定です。