名誉教授 渡辺 勝也 (わたなべ かつや) 氏 (享年88歳)
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本学名誉教授,渡辺勝也先生が平成26年1月29日に逝去された。先生は昭和23年3月北海道大学工学部生産冶金工学科をご卒業,一旦会社に就職されたが,その後母校に戻られ,助手,講師,助教授を経て,昭和41年4月に工学部金属工学第四講座の教授に昇任,本学教官として37年にわたり教育と研究指導に尽力された。平成元年3月に停年により退官されたが,平成2年4月に北海道工業大学教授に任ぜられ,5年間にわたって教鞭をとられた。この間,先生は材料工学の多方面の分野で数多の業績を挙げられたが,耐熱金属間化合物の材料物性に関する研究において数々の先駆的な成果を発表,今日のこの分野の隆盛と,本邦が国際的に不動の地位を築く基礎を固められたことが特筆されよう。 告別式での先生の遺影を見ながら,今から40年近く前,先生の研究室で過ごした頃の思い出の数々が脳裏をよぎった。今のように装置が整っていたわけではない。学生が国内の学会に行くことすら稀な時代であった。経済的には決して豊かではなかったのに,当時の思い出には北国の遅い春の訪れと共に一斉に咲きだす花々のような温かさがある。夏のゼミ旅行,年末の餅つきと忘年会,冬の離散会のスキー行…四季折々の美しい風象に研究室の思い出が重なる。渡辺先生は決して一つの指針や方針といったものを強く主張されることなく,私達の自主性を尊重されていたと思う。自主性のない勉強嫌いな学生も,自主性に溢れすぎた生意気な学生も,それぞれを先生は温かく見守って下さっていた。そして,若さゆえの多くの葛藤や失策を,先生はおおらかに受け入れてくださった。三大寮歌の一つ,我「都ぞ弥生」には人間臭がない。あるのはひたすら北国の自然の美しさである。それが人を育てる。渡辺先生は無言の内にそのような教育を実行されていたのかも知れない。先生の御冥福を祈るばかりである。(卒業生) |