来賓祝辞

学士学位記授与式

北海道大学連合同窓会副会長 横山  清

 北海道大学連合同窓会 副会長の横山 清と申します。54年前に水産学部を卒業し,今年で数え80歳。皆さんのお祖父さん世代です。私は函館で卒業式を迎えたので,札幌での卒業式は感無量です。ご卒業,学位の取得,誠におめでとうございます。
 本来,數土文夫会長のご挨拶となる処,數土会長はJFEホールディングスという会社の社長を経て今,東京電力の会長になられました。功成り名遂げて悠々自適の筈が,国家の存亡を担うような大変な仕事を今なさっており,急遽欠席となりました。そのため,ピンチヒッターとして私がここにいる次第です。
 私は,高校卒業後2年間炭鉱夫として働いた後,水産学部に入学し,恵迪寮に入寮しました。入寮手続の際には,ジャンパーに登山帽といった格好だったため,新聞配達と間違えられ,非常に困惑したことを覚えております。入学時,北大は80周年。今年は138年目ですから,大変な歳月を経たなぁと思います。
 數土会長が「型通りの話をするな」ということですので,ざっくばらんに申します。これから皆さんが世に出ても,すんなりと素敵な人生が送れるという保証は全くありません。大学で学業を積み,社会で大きく働くことも大事ですが,何より,総長のお話の通り,終生学びの態度を続けることの大切さは,私もつくづく今思っております。
 10日程前,水産学部附属練習船おしょろ丸5世の進水式出席のため,山口佳三総長をはじめ大学の皆さんと岡山県玉野市の三井造船所まで行って参りました。船の進水式は,皆さんでいえばこの卒業式。まさしくこれから社会に出る訳です。あらゆる知識を再構築するという気持ちで頑張っていただきたい。そして皆さんにも,卒業したら必ず同窓会に入っていただきたいと思います。多少会費はかかりますが,10万人を超す卒業生があらゆる分野で全国,世界中で活躍しています。
 夢とは,人間の限界を超えるような努力をしてこそ果たせる目標のことです。3年前の東日本大震災のとき,東京で地震に遭い大変な思いをしました。私は流通業,スーパーマーケットの経営をしておりますが,震災の翌日に東北のスーパーマーケットのトップと会い,熟慮の末,震災の結果もわからないその企業の買収を決断しました。今,東東北から北海道にかけて,約300店,2万5千人程の人達と共に仕事をしています。今も様々な形で,大学時代の仲間達とも,仕事を継続しているわけです。
 皆さんもこれから,自分の専門性から外れることがあるかもしれません。これを乗り越え,ぜひ頑張って自分の思いを遂げていただきたいと思います。実業界に出て60年近く経ち,今一番思うのは,IQも大事ですがEQ(心の知能指数)が大事だということです。これはどうやら北大の人的,物的環境,そしてこの大地自体が持つ,人間を大きく羽ばたかせるようなものにより育まれている面があるのではないかと思います。これから歌う「都ぞ弥生」は恵迪寮の寮歌ですが,地位,名誉,栄達を望むということではありません。自然を見つめ,自然に従って自分達の大きな野心を培っていくんだと歌っています。北大生は「都ぞ弥生」で入学し,「都ぞ弥生」で卒業していくのです。
 卒業した時点で,皆さんはまだ点です。これから社会に出て点が一つずつ結びついて線になり,線が面になっていくのです。こういう気持ちで,一言だけお贈りしますと,どんなことがあってもめげないこと,「Never give up!(諦めるなよ!)」です。今日はこれからの人生の進水式です。これから海図のない航海が始まりますが,あなた方の進んだ後には立派な海図ができるだろうと期待しております。
 皆さんの門出をお祝いし,祝辞といたします。本当に本日は,おめでとうございます。
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