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低温科学研究所技術部職員が国立天文台ASTE望遠鏡用
多色連続波カメラの現地作業をチリ共和国で実施

 このたび,平成20年度に採択された科学研究費補助金特別推進研究『超広帯域ミリ波サブミリ波観測に基づく大規模構造の進化の研究』(代表:東京大学 河野孝太郎教授)により,本研究所技術部,電子科学研究所及び理学研究院の工作系技術職員が開発に関わった国立天文台ASTE(Atacama Submillimeter Telescope Experiment)望遠鏡用のミリ波サブミリ波帯多色連続波カメラによる試験観測が行われました。今回,観測後のカメラ撤収作業並びに,今後の開発に向けた打ち合わせを兼ねて,本研究所の中坪俊一技術専門職員と森 章一技術職員の2名が,4月5日(土)から4月21日(月)の間,南米チリ共和国での現地作業に参加しました。
 ASTE望遠鏡は,世界最高のサブミリ波観測サイトの一つであるチリ共和国北部アタカマ砂漠の標高約4,800m地点に設置されており,この近隣にはALMA望遠鏡をはじめとする世界各国の望遠鏡が設置されています。宿泊施設のあるサンペドロ・デ・アタカマ(標高約2,400m)からASTE望遠鏡までは,片道約70kmの山道(通称ALMA道)を通って望遠鏡サイトへ移動しました。移動に際しては,標高約3,000mにあるALMAの施設で高山病の健康診断を受け,許可された者だけが,そこから先へ進めるシステムとなっています。これは,ASTE望遠鏡やALMA望遠鏡などがある標高5,000m地点の酸素量が標高0m地点の半分程度しかないためです。作業に際しては,寒さと乾燥の中,高山病への注意を払いながら行いました。
 今回の試験観測では,ASTE望遠鏡の次期主力観測装置として共同利用観測に供するために,惑星,銀河系内の星形成領域,ブランクフィールドなどの試験観測を通して,光学系,冷却系,システムのノイズレベルや感度,観測手法,データ解析の評価・試験を行いました。今回は天候に恵まれ,本格運用に向けた評価を行う上で必要なデータが十分に取得することができました。今後は取得したデータの解析を進め,来年度以降の本格運用を目指します。
アタカマ砂漠に設置されているASTE望遠鏡。開口直径は10mで,サブミリ波帯の観測が可能な鏡面精度を持つ。

アタカマ砂漠に設置されているASTE望遠鏡。開口直径は10mで,サブミリ波帯の観測が可能な鏡面精度を持つ。

多色連続波カメラの撤収作業。写真上部のASTE受信機室から重さ約300kgのカメラを取り外し,サイトにあるコンテナへ移送した。

多色連続波カメラの撤収作業。写真上部のASTE受信機室から重さ約300kgのカメラを取り外し,サイトにあるコンテナへ移送した。

望遠鏡から下ろした後,カメラ本体から検出器・読み出し回路の取り外しを行った。写真中央は低温研技術部を中心に設計・製作した4K冷却光学系モジュール。

望遠鏡から下ろした後,カメラ本体から検出器・読み出し回路の取り外しを行った。写真中央は低温研技術部を中心に設計・製作した4K冷却光学系モジュール。

(低温科学研究所)

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